4月分の経済指標は対象期間の1/3だから時期尚早ではあるが、このままでは4-6月期はマイナス成長になるよ。それぐらい悪い数字だった。GDPの公表は8月17日なので、安保法制の強行採決で評判を下げたタイミングで、経済失速のニュースに見舞われることになる。諮問会議で歳出削減策に熱くなるのも良いが、9月の総裁選を前に、官邸エコノミストは、何か手立てを考えなければならないのではないかね。
………
最初は家計調査だ。消費支出を二人以上世帯の季節調整済指数で見ると、基調を示す「除く住居等」は1-3月期平均より-2.1となっている。「除かない」数字となると-3.6にもなり、消費増税直後の昨年4月を下回るレベルという衝撃的なものだった。とは言え、勤労者世帯の消費性向からすると落ち過ぎであり、高かった3月の反動という要素もある。したがって、5月にはかなり戻るだろうが、それでも、4月の穴は4-6月期の平均を押し下げてしまう。
問題は、消費を裏打ちする勤労者世帯の実質実収入が前期より-0.3になったことだ。これでも、物価の低下に助けられており、名目では-0.5にもなる。実収入は、昨年夏以降、徐々に上昇して消費を支えてきたが、今年に入って鈍化し、4月は下げるに至った。実収入はブレが少ないので、低迷は大きな懸念材料である。
次に、商業動態統計だが、マイナスは鮮明だ。卸売業は前期より-1.0、小売業は-0.6といった具合である。いずれも、4月は、3月との比較ではプラスになったものの、3月の落ちぶりが大きかった割りに戻りが弱く、1-3月期の水準にまったく届いていない。4月の水準は、卸売業では昨年5月より下で、小売業では昨年7月より低い。今年に入ってからの低迷ぶりは、振り出しに戻るような体たらくである。
(図)
………
供給側の鉱工業生産指数に行こう。生産は前期より-0.6、出荷は-1.5である。そのうち、消費財の悪化が、生産で-1.4、出荷で-1.9と、顕著なのは当然としても、GDPの設備投資を占う資本財(除く輸送機械)の出荷まで-1.5となっている。1-3月期はプラス寄与だった設備投資も、なかなか苦しいようだ。おまけに、建設財は、出荷がプラスでも、生産で-0.4になっており、住宅や公共投資によるGDPの押し上げも望み薄である。
仮に、鉱工業生産指数が予測調査の結果どうり、5月に+0.5、6月に-0.5で推移したとすると、4-6月期の前期比は-0.4になる。予測調査の結果は控えめな数字だが、消費増税以降、この3月を除いて、下方修正が続いてきたことからすると、更に低くなることも、念頭に入れて置かなければならない。
他方、「明るい話題」は、日経が取り上げた、失業率3.3%という、18年ぶりの水準になる低下である。新規求人倍率も1.77と、このところの低下を取り戻す形となった。しかし、15~64歳人口が年間に100万人も減る時代になり、求職圧力が薄れていることからすれば、こういう数字に喜んでばかりもいられないだろう。GDPを考える上では、就業者数の動向を気にする必要がある。これを労働力調査の季節調整値の前月差で見ると、1月-2万人、2月+2万人、3月-10万人、そして、4月は-28万人である。
ここで、毎月勤労統計を見たいところだが、来週火曜日までお預けだ。毎勤の給与総額の前年比は、このところ低下傾向にあり、これから賃上げがあるとしても、せいぜい+0.5である。しかも、消費を考える上では、ここから、年金保険料率のアップ分の0.2弱は抜かないといけない。あとは、3月に峠を越えた形になった常用雇用がどこまで粘れるかに注目だ。
………
主要な経済指標がマイナスのオンパレードになる中、外需は、4月は輸出が鈍り、季節調整値では3月に黒字だったものが再び赤字に戻った。1-3月期と同様にGDPを押し上げることは難しくなってきている。物価についても、1-3月期には消費を押し上げたが、4月の全国は実質的に横バイ、5月の東京は除く生鮮が前月比0.1のプラスという結果だった。「6月にかけて物価は低下する」という見方が一般的だが、足元の円安は気がかりである。
こうしてみると、これでマイナス成長以外の予想をどうしたらできるんだという状況にある。厳しい見方は、他のエコノミストにも共通していて、ただ、4月のうちにマイナスという刺激的な言葉を使うのは避けているだけのことだ。もちろん、5,6月に、グッと物価が下がったり、ドンと賞与が上がったりして、好転することもないとは言えない。しかし、今回、見てきたのは、単なる4月の下ブレではなく、ここ数か月の傾向である。
………
なぜ、こんなことになってしまったのか。一つは、消費増税の悪影響は長引くということだ。1997年の際も、在庫が目に見えて減り始めたのは翌年の5月以降であり、鉱工業生産の底入れは夏になってから、上向き出すには冬を待たねばならなかった。すなわち、今の段階における不調も、前回の経験からは予想のつく範囲ではある。
そして、もう一つは、そんな「病み上がり」の時期なのに、前にも指摘したことだが、今年は、前年度補正で0.8兆円、国の一般会計で4.4兆円、地方財政で1.2兆円、年金で1.6兆円、合計8.0兆円の緊縮財政を敷いていることである。実際、補正の影響は、1-3月期の公的需要のマイナスとして現れている。
だから、アベノミクスが再失速しても何の不思議もない。2月の政府経済見通しでは、公的需要で成長率を-0.6も落とすと宣言していたわけだから、原油安の効果が期待を下回れば、こうなるのは、ある意味、当たり前である。日本経済は、やったとおりの結果を出している。僥倖を頼みとし、穏当な財政を怠ることの「甘さ」を露呈していると言えよう。
(昨日の日経)
起業支援は最大2000万円に。5月株式相場は記録ずくめ。失業率3.3%18年ぶり低水準。原油安が食品値上がりを相殺。米GDP1-3月0.7%減。
(今日の日経)
設備投資計画10.5%、非製造業国内2.0%。円急落はファンド主導。上海株売買がNY抜き世界最大。5月軽自動車2か月連続2割減。素粒子に迫る超ミニ実験。履歴書・一俗六仙。
※いや、平家さん、そこは前「期」との比較なので、数字は統計局と同一ですよ。ちなみに、経常収入の前「期」比は、名目-0.3、実質0.0となります。(5/31)
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最初は家計調査だ。消費支出を二人以上世帯の季節調整済指数で見ると、基調を示す「除く住居等」は1-3月期平均より-2.1となっている。「除かない」数字となると-3.6にもなり、消費増税直後の昨年4月を下回るレベルという衝撃的なものだった。とは言え、勤労者世帯の消費性向からすると落ち過ぎであり、高かった3月の反動という要素もある。したがって、5月にはかなり戻るだろうが、それでも、4月の穴は4-6月期の平均を押し下げてしまう。
問題は、消費を裏打ちする勤労者世帯の実質実収入が前期より-0.3になったことだ。これでも、物価の低下に助けられており、名目では-0.5にもなる。実収入は、昨年夏以降、徐々に上昇して消費を支えてきたが、今年に入って鈍化し、4月は下げるに至った。実収入はブレが少ないので、低迷は大きな懸念材料である。
次に、商業動態統計だが、マイナスは鮮明だ。卸売業は前期より-1.0、小売業は-0.6といった具合である。いずれも、4月は、3月との比較ではプラスになったものの、3月の落ちぶりが大きかった割りに戻りが弱く、1-3月期の水準にまったく届いていない。4月の水準は、卸売業では昨年5月より下で、小売業では昨年7月より低い。今年に入ってからの低迷ぶりは、振り出しに戻るような体たらくである。
(図)
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供給側の鉱工業生産指数に行こう。生産は前期より-0.6、出荷は-1.5である。そのうち、消費財の悪化が、生産で-1.4、出荷で-1.9と、顕著なのは当然としても、GDPの設備投資を占う資本財(除く輸送機械)の出荷まで-1.5となっている。1-3月期はプラス寄与だった設備投資も、なかなか苦しいようだ。おまけに、建設財は、出荷がプラスでも、生産で-0.4になっており、住宅や公共投資によるGDPの押し上げも望み薄である。
仮に、鉱工業生産指数が予測調査の結果どうり、5月に+0.5、6月に-0.5で推移したとすると、4-6月期の前期比は-0.4になる。予測調査の結果は控えめな数字だが、消費増税以降、この3月を除いて、下方修正が続いてきたことからすると、更に低くなることも、念頭に入れて置かなければならない。
他方、「明るい話題」は、日経が取り上げた、失業率3.3%という、18年ぶりの水準になる低下である。新規求人倍率も1.77と、このところの低下を取り戻す形となった。しかし、15~64歳人口が年間に100万人も減る時代になり、求職圧力が薄れていることからすれば、こういう数字に喜んでばかりもいられないだろう。GDPを考える上では、就業者数の動向を気にする必要がある。これを労働力調査の季節調整値の前月差で見ると、1月-2万人、2月+2万人、3月-10万人、そして、4月は-28万人である。
ここで、毎月勤労統計を見たいところだが、来週火曜日までお預けだ。毎勤の給与総額の前年比は、このところ低下傾向にあり、これから賃上げがあるとしても、せいぜい+0.5である。しかも、消費を考える上では、ここから、年金保険料率のアップ分の0.2弱は抜かないといけない。あとは、3月に峠を越えた形になった常用雇用がどこまで粘れるかに注目だ。
………
主要な経済指標がマイナスのオンパレードになる中、外需は、4月は輸出が鈍り、季節調整値では3月に黒字だったものが再び赤字に戻った。1-3月期と同様にGDPを押し上げることは難しくなってきている。物価についても、1-3月期には消費を押し上げたが、4月の全国は実質的に横バイ、5月の東京は除く生鮮が前月比0.1のプラスという結果だった。「6月にかけて物価は低下する」という見方が一般的だが、足元の円安は気がかりである。
こうしてみると、これでマイナス成長以外の予想をどうしたらできるんだという状況にある。厳しい見方は、他のエコノミストにも共通していて、ただ、4月のうちにマイナスという刺激的な言葉を使うのは避けているだけのことだ。もちろん、5,6月に、グッと物価が下がったり、ドンと賞与が上がったりして、好転することもないとは言えない。しかし、今回、見てきたのは、単なる4月の下ブレではなく、ここ数か月の傾向である。
………
なぜ、こんなことになってしまったのか。一つは、消費増税の悪影響は長引くということだ。1997年の際も、在庫が目に見えて減り始めたのは翌年の5月以降であり、鉱工業生産の底入れは夏になってから、上向き出すには冬を待たねばならなかった。すなわち、今の段階における不調も、前回の経験からは予想のつく範囲ではある。
そして、もう一つは、そんな「病み上がり」の時期なのに、前にも指摘したことだが、今年は、前年度補正で0.8兆円、国の一般会計で4.4兆円、地方財政で1.2兆円、年金で1.6兆円、合計8.0兆円の緊縮財政を敷いていることである。実際、補正の影響は、1-3月期の公的需要のマイナスとして現れている。
だから、アベノミクスが再失速しても何の不思議もない。2月の政府経済見通しでは、公的需要で成長率を-0.6も落とすと宣言していたわけだから、原油安の効果が期待を下回れば、こうなるのは、ある意味、当たり前である。日本経済は、やったとおりの結果を出している。僥倖を頼みとし、穏当な財政を怠ることの「甘さ」を露呈していると言えよう。
(昨日の日経)
起業支援は最大2000万円に。5月株式相場は記録ずくめ。失業率3.3%18年ぶり低水準。原油安が食品値上がりを相殺。米GDP1-3月0.7%減。
(今日の日経)
設備投資計画10.5%、非製造業国内2.0%。円急落はファンド主導。上海株売買がNY抜き世界最大。5月軽自動車2か月連続2割減。素粒子に迫る超ミニ実験。履歴書・一俗六仙。
※いや、平家さん、そこは前「期」との比較なので、数字は統計局と同一ですよ。ちなみに、経常収入の前「期」比は、名目-0.3、実質0.0となります。(5/31)
やや明るい材料としては、同じ指数でみて勤労者世帯の経常収入が、前月比名目0.6%、実質0.8%増えていることでしょう。
全世帯の財・サービス支出を実質で見ると、4月に半耐久財と非耐久財がプラスに転じましたが、耐久財とサービスが前前年同月比でマイナスです。税率引き上げの影響は耐久消費財を中心に長引くものですね。(http://takamasa.at.webry.info/201505/article_9.html)