11月の本選挙を前に、お互いに強烈なパンチを繰り出す最終ラウンドで、とんでもないことが飛び出るのを「オクトーバー・サプライズ」と言われます。
2回目のTV討論を2日後にひかえるこのタイミングで、それがトランプに出ました。実に効果的なタイミングなので、きっと時限爆弾の仕掛けがピタリと炸裂したのでしょう。全米はハリケーンのニュースとこの報道でもちきりです。
2005年、ビリー・ブッシュ・ショーというラジオ番組の収録のためトランプが移動中の中継バスの中で、ビリー・ブッシュと話した内容が問題になっています。彼が襟にマイクをつけたままひわいなことをビリー・ブッシュに言い続けたテープが出てしまいました。先日、トランプを大統領にしてはいけないと社説で主張したワシントン・ポストのスクープです。テープと一部の録画が同調しているもので、証拠としては完全無欠です。
話の内容はこのブログで取り上げるのもはばかるような低俗ひわいもので、トランプが3度目の結婚半年後に、結婚している女性を口説いた様子を司会者に面白おかしく自慢しているものです。放送禁止用語がいくつもでるため、CNNでも「ピー」音が連続し、アナウンサーの女性がどう説明するか、言葉を詰まらせるほどでした。
さすがのトランプも遂にこれを突き付けられ、「SORRY」という言葉を使って謝罪しました。言い訳は「あれはロッカールーム・トークだ」というのです。
しかも「ゴルフ場でビル・クリントが話したことよりましだよ」と言ったので、きっとただではすまされないでしょう。ロッカールーム・トークとは、若者たちがロッカールーム内なら何でも言いあえるというほどの意味で、その場限りのたわいないものだと言い逃れようとしています。しかし内容はとんでもない話です。
もう一つのオクトーバー・サプライズは、トランプが10数年所得税を払っていないという例の問題です。「オレ様はそれほど頭がいいんだ」と逆に自慢していますが、反対側から見ればトランプは国民に向かって「お前らはバカだから払っているんだ」ということになり、大ヒンシュクなのです。しかも税務申告書を隠し続けた理由が租税回避行為の隠蔽だったので、よけい火に油を注いでいます。
このサプライズで、せっかくの副大統領候補ペンス校長先生の出来栄えも、すべて吹っ飛んでしまいました。
トランプの支持率が落ち始めています。リアル・クリアー・ポリティックスの数字を見てみましょう。URLはこちらです。
http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html
現在の支持率の平均値はクリントン47.6 対 トランプ42.9で、クリントンの4.7ポイントリードです。トランプ支持率の低下が差を拡げている原因です。
各世論調査結果は平均値のすぐ下に出ていますが、もっともっと下の方に、過去の調査結果一覧が出ていて、赤字表示のLAタイムズが異常値を何度も出して平均を捻じ曲げている様子が読み取れますので、興味ある方は是非ご覧ください。
しかし何度か申し上げているように、大事なのは支持率などではなく、各州別の選挙人獲得数です。先ほどのページを下に見ていくと、アメリカ地図と選挙人の推定獲得数が出てきます。それが急変しているのです。
270の過半数に対し、クリントン247と迫り、トランプ165、未決125です。9月末には188対165だったと私は書きました。それから2つのTV討論を行った結果、トランプは1人も増えずに、クリントンはプラス59人。推定値であっても過半数にあと23人です。しかもこの結果は、トランプの本質的人間性が出てしまう前の数値です。
「オクトーバー・サプライズで、勝負あった」
それが私の結論です。