2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年4月17日(木)7:00pm サントリー
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シェーンベルク 弦楽のためのワルツ 14′
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リスト ピアノ協奏曲第1番 15′
ピアノ、ニコライ・デミジェンコ
(encore) メトネル おとぎ話 4′
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マーラー 交響曲第4番 16′10′19′9′
ソプラノ、ローラ・エイキン
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シルヴァン・カンブルラン 指揮
読売日本交響楽団
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カンブルランは今回は同一プログラム2回だけという短い滞在だが、シーズンの振る回数が少ない名ばかり音楽監督が多い中、彼は結構まめに顔を出しているほうだと思う。そして毎度のことながらプログラムが良い。コンサートではレアなシェーンベルクの小品、そしてソリストが別曲に二人という演目。これだけ見ても素晴らしいですね、聴く前から。
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冒頭のシェーンベルクの弦楽のためのワルツ。初期の作品で、ショートピース11曲の束、うち未完の一曲を除く10曲の演奏。
わかりやすく魅惑的な曲と演奏。カンブルランが自ら楽しんでもいいような気もするが、彼は飽くまでも聴衆にこの音楽を聴かせようとするスタンス。自分が楽しむのではなく、聴衆が楽しみ理解してくれればと、その姿勢が好ましいし、現代音楽のオーソリティにとってそのようなアクティヴなモチベーションというのをどのような音楽においても常に心がけているのだろう。前向きで誠実な指揮者だと思う。
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2曲目のリストの協奏曲は、オーケストラが非常に引き締まっている。妙に埃っぽくなったりするリストの管弦楽だが、ここは協奏曲とはいえ主役のように動き回らせ、練習回数のきいた引締め度。ピアノが出てくる前から気持ちが良い。そのピアノは見た目の風体とは少し異なり、思いのほかソフトタッチ。オーケストラが引き締めてピアノが歌う。ドライでウェットなハイブリッド感の耳触りがいい。
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二人目のソリストはローラ・エイキン、なんとも豪華な一夜ではありますね。
カンブルランのマーラーは、日本人の指揮者でたまにいる無意味で作為的なフレーズ変態延ばし演奏解釈とは、当然のことながらまるで異なる。
テンポ感はオーソドックスなもの、個別のソロ旋律やアンサンブルのハーモニーをくっきりと際立たせたもので、クリアで明快。それぞれ分解されたように聴こえてくるフレーズは四方八方を向くことなく、マーラーの音楽という小宇宙の空間の内面を撫でていく。ドライ、ウェットという言葉の範疇とは別のもの、スペースステーションの骨組みを遠くから見るような感じ。作曲から一世紀以上経った曲が、現代的な表現で見事に蘇生された演奏と言えよう。
第2楽章の一見グロテスクな音楽が小舟のワルツに変わるところで、冒頭のシェーンベルクのワルツと繋がった。これまた見事な大団円の表現と言えよう。最後で完結する必要もない、いたるところで思い起こしや気づきをさせてくれるカンブルランのプログラム・ビルディングの妙でしょう。
終楽章はその発想が、シェーンベルクの弦楽四重奏曲第2番へのつながりを感じさせる、これは聴きながら感じるというものではなくそのような歴史的な作品ではあるのですが、やはり気づきをさせてくれる。今でも十分に斬新な発想です。
ローラはこの曲に馴染んでいく歌い口で自然。シェーンベルクを歌ったら、また別の面が出てくるような気がしました。
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プログラム、ソリスト、指揮者、オーケストラ、一体となった、しっとりしなやか芯のある、いい一夜でした。ありがとうございました。
おわり