割り込みモードで1983-1984シーズンの聴いた演奏会、観たオペラのことを点々と書いてますがまだなかなか終わりません。半端な回数ではありませんでしたので。。
この前は、音楽監督のズービン・メータがひじのアクシデントでこのシーズンの最後6週間をキャンセルしたことを書きました。全部1983-1984シーズンのリンクに書いてありますので興味ある方はご覧くださいませ。
それで、キャンセルに伴う代替指揮者一人目はマイケル・ティルソン・トーマスです。プログラムを製本しなおしている時間もない急なキャンセルであったため、もとのプログラムの中にMTTのプログラムがはさまれてます。曲目の変更がありました。
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↓もとのプログラム
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↓変更後のプログラム
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それでどんな演奏会だったのでしょうか。
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1984年3月29日(木)8:00pm
エイヴリー・フィッシャー・ホール
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バーンスタイン/
オーケストラのためのディヴェルティメント
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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番
ピアノ、アレクシス・ワイセンベルク
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チャイコフスキー/交響曲第5番
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マイケル・ティルソン・トーマス指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
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後半のドヴォルザークの7番がチャイコフスキーの5番に変更になっている。
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最近売り出し中のマイケル・ティルソン・トーマスの登場である。フィルハーモニック登場は1977年以来。
メータがひじの故障のため、今晩以降の今シーズンの演奏をキャンセルした為、彼の登場となった。
しかし、個人的にはこの頃あまり元気のないメータよりは彼を聴けたということは、思わぬ儲けもの以上である。今聴きたくてしょうがない指揮者のうちの一人だ。偶然以上の幸せでもある。
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マイケルは背が高く、足が長く、やせていて、‘指揮をしていない限り’、かっこいいの一語に尽きる。
それが、ひとたび指揮を始めるとなんとなくぎくしゃくしていてお世辞にもあまりかっこいいとは言えなくなるから不思議である。
原因はあまりにも手足が長すぎるため、もちあましているからなのではないかと思う。ただ、変な過剰意識がなく全く子供みたいな気持ちで音楽に向かっていくその姿が好ましい。
音楽もうわさ通り全く現代風、さらりとしたさわやかさ。悲しみが存在する必要性を感じさせないでくれる。
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最初の曲、これはバーンスタインが1980年にボストン交響楽団のために作った曲です。本当にアメリカ的な曲で、派手なウィットにとんだ曲。これは日本で聴いても共感はそんなに得られず、アメリカで聴いてこそその雰囲気にのめり込めるというものだろう。ここにはバーンスタインのクラシカルな姿勢からジャジーなものまで全てのものがある。
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バーンスタイン本人が聴きにきていて、この曲が終わった後、ステージにあがってきた。
なにやら表彰され挨拶していた。彼はあいも変わらず絶大な人気である。
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そして、次にアレクシス・ワイセンベルクの登場である。彼の精悍な顔つきはかわらずであるが、なにかこころもち元気がないような気がしないでもない。
そしてなにより彼の音楽はこのように柔らかで弱々しかったかなぁと思わざるをえない。全くソフトでもやもやしていたように思う。
静かで柔らかなものが深い思考やベートーヴェン的強靭なものを全く感じさせてくれない。
彼は自分がどちらに行くべきか、迷っているのではないだろうか。
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最後のチャイコフスキー。マイケルのいわゆるMTT流さわやかさにもってこいの曲とは言いかねるが、それでも彼の純真無垢とでもいうべき指揮姿、それに音楽。
彼の作り出す音楽はチャイコフスキーの力強い音楽を乗り越えて、さわやかさが吹き抜けた。一度も停滞することなく、かろやかに流れ出てくる音楽はなぜかこれからのニューヨーク・フィルハーモニックにふさわしいような気がした。
彼はきっとニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者になるに違いない。
おわり
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といった当時の感想だったが、MTTは今のところフィルハーモニックの音楽監督になる雰囲気はない。次期はアラン・ギルバートに決まっているし。
MTTのぎくしゃくした棒はおもしろく左に右にちょんちょんとまとまって動く感じが目に残る。今はもっと滑らか。
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