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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

翻訳夜話

2009-10-14 20:06:06 | 村上春樹
村上春樹 柴田元幸 平成12年 文春新書
こないだの続き。
というのも、「1973年のピンボール」のなかで、「僕」は友人と翻訳を専門とする事務所を開いていたって設定になってんだけど、まあ村上春樹も実際いろんな翻訳本を出してたりします。そんなわけで、この本を思い出した。
共著ということになってるけど、なかみは3回にわたって行われた翻訳フォーラム、翻訳について質疑応答を受けたりするミーティングが中心。
1回目が東大教養学部、2回目がバベル翻訳・外語学院、3回目は前2つの授業の一環ってのとは違って、若い翻訳者6名との座談という感じ。
でも、翻訳よりも、むしろ村上春樹の考える文章作法のようなものが披露されてるほうが、私にとっては興味深い。
たとえば、リズムがない文章っていうのは読めないって言うんだけど、実際に、
>書くときはやはり音楽的に書きますね。だから、コンピュータになってすごく楽になった。キーボードでリズムがとれるから 
まで言われるとビックリする。なんか、パソコンだと文体変わっちゃうから、手でコツコツ書いてます、ってほうが作家らしいぢゃない?(私の思い込み)
でも、文章のリズムについて、さらに解説してくれていて、「ビート」とそれよりもっと大きい「うねり」がある、ビートとうねりがないと読めない、特にうねりは身につけるのが難しいというのは、すごい説得力がある。
さらに、
>文章っていうのは人を次に進めなくちゃいけないから、前のめりにならなくちゃいけないんですよ。どうしたら前のめりになるかというと、やっぱりリズムがなくちゃいけない。(略)いわゆるグルーヴ感というやつですね。 
とまで言われると、なるほどって膝を打っちゃう。
で、ビートって文章のリズムなのか、声に出したときのリズムと違うのかという問いにも明確に答えてて、
>それは目で見るリズムなんです。目で追ってるリズム。言葉でしゃべっているときのリズムとスピードと、目で見るときのスピードとは違うんです。(略)僕は自分の小説が映画になるのが好きじゃなくてだいたい全部断ってるんですが、それは自分の書いた科白がそのまま音声になるのが耐えられないからです。
っていうのには、感心させられちゃう。小説読んでて面白いなって思っても、こんなこと言う人は実際にいないよなって感じたりするんだけど、それはそうなんだってことがよくわかった。
でも、やっぱそのへん、いい文章をたくさん読まなきゃ、わからないんだよねー。 
コメント
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