じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

柴田哲孝「九絵尽し」

2023-03-29 19:24:27 | Weblog

★ 春期講座や新旧塾生の入れ替えで忙しく、しばらくぶりの更新となりました。

★ 読書は着々と進んでいます。今、一番面白いのが小川洋子さんの「博士の愛した数式」(新潮文庫)。読書の進み具合に応じて映画の方も観ている。

★ 続いて、吉田修一さんの「横道世之介」(文春文庫)。こちらも映画と同時並行。そして、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)。コンクールの一次予選まで読み進めた。読み進めるほどに面白い。こちらも映画を観ながら。

★ 次が川越宗一さんの「熱源」(文春文庫)。作品は面白いのだが、登場人物の名前が私の中で定着しない。荒俣宏さんの「レックス・ムンディ」(集英社文庫)は異様な世界に入ってきた。宮部みゆきさんの「魔術はささやく」(新潮文庫)。誰に焦点を当てて読むか思案中。薬丸岳さんの「神の子(下)」。これからどう展開するのやら。

★ 石田衣良さんの「4TEEN」(新潮文庫)。馳星周さんの「不夜城」(角川文庫)。これちらも映画を観ながら。

★ 東野圭吾さんの「放課後」(講談社文庫)。いよいよ東野作品を読み始める。ハマるかな。そして貫井徳郎さんの「乱反射」(朝日文庫)。最後まで読み切れるかな。

★ 授業の合間に短篇を一つ。柴田哲孝さんの「狸汁」(光文社文庫)から「久絵尽し」を読んだ。春は桜鯛のシーズンだというが、魚といえばクエ料理が絶品だという。

★ 銀次と女房の町子が営む「味六屋」では、政界の黒幕とその子分の代議士、著名な歌舞伎役者と写真家。彼らが集まり「久絵尽し」を味わうこととなった。

★ 読むだけで料理の味が伝わってきそうだ。

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乃南アサ「夕立」

2023-03-21 18:47:35 | Weblog

★ 暑さ寒さも彼岸までというけれど、今日の宇治は少々肌寒い。冷たい雨がぱらついている。祝日とはいえ、高校に合格し課題を出された生徒が朝から勉強。夕方からは平常通りの授業。

★ 合間を縫って、乃南アサさんの「不発弾」(講談社文庫)から「夕立」を読んだ。

★ これも美人局というのだろうか。女子高校生が、通学の電車でターゲットを物色。ターゲットが見つかれが、男にさりげなく近づいて痴漢をさせるというもの。

★ 男も最初は素知らぬ顔だが、挑発が数日続けば、魔がさすようだ。

★ 警察につき出し、その場はシブシブ許したことにして、あとからがっぽり慰藉料を頂く魂胆だ。その日も男をうまくハメた。男は中学校の教員で教頭だという。

★ 早速、慰藉料を頂く手はずだったのだが・・・。

☆ 結局は挑発にひっかかる大人が悪い。でも、何か怖い話だった。

☆ ポケベル、PHSというのは時代を感じる。今ではSNSやマッチングアプリを使った詐欺や宗教の勧誘があるから、それも気をつけねば。

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重松清「カカシの夏休み」

2023-03-20 21:24:24 | Weblog

★ 重松清さんの「カカシの夏休み」(文春文庫)から表題作を読んだ。

★ 主人公は37歳の小学校教員。今は5年生を担当している。中学生時代の同級生の事故死を知り、その葬儀にかつての仲間が集まった。中学を卒業して以来だ。

★ 彼らの故郷はもうない。ダムの底に沈んでしまったのだ。20余年を経て、家族、仕事などみんな背負うものが増えた。かつての日々を懐かしむ者、過去を封印し前に進もうとする者。

★ 37歳。ふと気づけばがんじがらめで、前にも後ろにも動けない。

★ 主人公も問題を抱えていた。ある児童がクラスに適応できず、時々パニックを起こして荒れまくる。クラスのメンバーはいら立ち、同僚のベテラン教員からは、指導力不足を指摘される。教頭は事なかれを貫く。

★ それに、子どもの問題はどうやら親に原因があるようだ。しかし、教員にできる範囲には限界がある。 

★ 手をこまねいていると、児童から「ひいきだ」「カカシ先生だ」と言われて、途方に暮れる。

★ 37歳。人生の半ばを迎えた彼らは、それぞれの課題を抱えつつ、新たな出発を試みる。

★ 「幸せって何?」 この問いかけが心に残る。あのCMも。

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葉真中顕「コクーン」

2023-03-19 15:40:28 | Weblog

★ 葉真中顕さんの「コクーン」(光文社文庫)を読み終えた。この作品も面白かった。

★ いくつもの物語がつながり合ってこの世界が形成されている。コクーンとは繭を意味する。この繭(コクーン)にもいくつもの意味がある。

★ 1995年に銃乱射事件を起こした「シンラ智慧の会」。彼らがある山麓に築いた施設がコクーンだ。モデルはオウム事件で、コクーンは「サティアン」と呼ばれた施設を思い起こさせる。

★ 時代や場所をつなぐのが黄金の翅をもつ蝶だ。バタフライ・エフェクト、パラレルワールドが展開される。

★ すべてのものはつながり、すべては「なるようになるし、なるようにしかならない」。この諦観が心に残る。

★ 戦中から戦後の復興。高度経済成長にバブル経済。1995年のオウム事件に2011年の北日本大震災。それに性的マイノリティも作品に盛り込まれている。良いことも悪いこともいろいろとあった。人生80年とも100年とも言われる時代。振り返ってみれば一炊の夢なのかも知れない。

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横山秀夫「クライマーズ・ハイ」

2023-03-18 21:17:26 | Weblog

★ 横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)を読み終えた。面白い作品だった。

★ 地方新聞社が舞台。今までの特ネタといえば連合赤軍事件と大久保清事件。ベテラン記者たちは当時の高揚感を懐かし気に語る。古き良き思い出。新聞社はもはや斜陽に入っているのかも知れない。記事よりも派閥争いや縄張り争いで忙しそうだ。

★ そんな時、日航ジャンボ機123便の事故が起こった。全権を任された悠木という記者が主人公。事故から1週間余りの出来事が熱く語られていく。

★ 怒号飛び交くオフィス。今にも殴り合いが始まるのではという気迫。炸裂する記者魂。スクープを前にした記者たちの高揚感が伝わってくる。抜くか抜かれるか、他者とのスクープ争いも熾烈を極める。

★ 終盤はいささか盛りだくさんになった感がある。しかし、事故原因を巡るクライマックスは手に汗を握る。

★ エンディングの静けさも、型にはまっている感もするが、もそれはそれで心地よい。

☆ 私は若い頃ジャーナリストに憧れ、わずかな期間、ある雑誌社で見習い勤務したが、あのスリリングな日々は忘れられない。同時に、この世界に身を置けば長生きはできないなぁと感じた。それほど魅力的な世界だった。

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新田次郎「聖職の碑」読了

2023-03-17 21:36:50 | Weblog

★ 今日は公立高校の合格発表。全体としては1倍を切る広き門だが、人気校では5倍を超えるところもある。最近は高校間の格差が顕著だ。塾生たちはそれぞれの志望校に向かってよく頑張った。ホッと胸をなでおろす。

★ さて、新田次郎さんの「聖職の碑」(講談社文庫)を読み終えた。私は奈良教育大学の院生時代、日本教育史の上沼八郎先生の授業を受けさせていただいた。先生は伊那出身で、授業の中でこの作品について言及された思い出がある。それから40年あまりを経て、やっと読むことができた。

★ 時代は明治から大正にかけて、画一的な教育から子どもの個性を尊重した教育を目指そうとしていた時代の変革期。伝統的、実践的な教育を重んじる校長が推進する修学登山。理想主義を掲げる教員の中には反対論もあったが、校長は決断し実行する。

★ 運悪く、暴風雨に見舞われ、低体温症で児童が相次いで凍死し、子どもたちを守ろうとした校長も犠牲となる。

★ 後から振り返れば、山小屋の不備を見抜けなかったこと、天候の急変に気づかなかったことが後悔される。遭難場面は「八甲田山」同様、映像が目に浮かぶようだった。

★ 映画化されているが、残念ながら観る機会を逸した。先に映像化された「八甲田山」に比べて興行的には振るわなかったというが、機会があれば観てみたいものだ。

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相場英雄「ガラパゴス(下)」

2023-03-16 15:27:57 | Weblog

★ 昨日は近隣中学校の卒業式。明日は公立高校中期試験の発表。季節は確実に動いている。

★ さて、相場英雄さんの「ガラパゴス」下巻(小学館文庫)を読み終えた。身元不明の自殺者として処理された遺体。コールドケースを扱う田川刑事は鑑識に転属した木幡刑事とともに、その自殺が偽装殺人であることを見抜く。

★ 2人は被害者が沖縄の離島出身者であることを突き止め、彼が本土に渡ってからの足取りを追う。そして見えてきたのは、派遣労働者の過酷な生活だった。

★ 事件を解決した刑事は語る。「普通に働き、普通にメシが食えて、普通に家族と過ごす。こんな当たり前のことが難しくなった世の中って、どこか狂っていないか」。自供を終えた犯人は叫ぶ。「運が悪けりゃ、人間として扱ってもらえない世の中にしたのは誰だよ」と。

★ 「貧乏の鎖は、俺で最後にしろ。」被害者の言葉が沁みる。

☆ 読み終わって、甘い汁を吸った人々は結局しぶとく生き残っていくなぁと感じた。一方で、企業のトップも、警察の幹部も、政治家も、自分の既得権益を失うことに恐々としている姿が痛ましい。この世は椅子取りゲームなのか。エピローグで紹介された宮古島の子守歌が心に響く。

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薬丸岳「神の子(上)」

2023-03-14 20:23:43 | Weblog

★ 今までが忙しすぎたのか、中学3年生の受験が終わると拍子抜けしたほど、時間が余っている。今日は4月からの月謝袋をつくった。60余名のうち、何人継続してくれるやら。そして新規生は。

★ そんなことを考えながら、薬丸岳さんの「神の子(上)」(光文社文庫)を読み終えた。超越した知能をもちながら、家庭環境に恵まれず、生きるために犯罪者組織で働いた町田博史。ある出来事で人を殺してしまい少年院に送られる。そこでも異次元の才能を見せた彼は少年院を出てからある工場で働くことに。

★ 一方、彼が属していた組織は、再び彼の背後に現れる。そして物語は下巻へと進む。

★ 話は変わって、youtudeで「愛染かつら」(1938年)が上がっていたので垣間見ている。もう80年も前の映画だけれど、これはこれで面白い。高石看護婦役の田中絹代さんが案外かわいかったりする。

★ 明日は近隣の中学校の卒業式。彼ら彼女らも新たな門出だ。

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大江健三郎「人間の羊」

2023-03-13 23:45:16 | Weblog

★ 大江健三郎さんの訃報に接し、大江さんの「死者の奢り・飼育」(新潮文庫)から「人間の羊」を読んだ。

★ アルバイト学生は、酔っぱらった外国兵たちとたまたまバスに乗り合わせてしまった。ささいなことからトラブルとなり、学生は下着をはがされ、尻をむき出しにされ、羊のように扱われる。

★ 外国兵の興奮はエスカレートし、学生以外にも何人かの男性が同じように尻を丸出しにされてしまう。

★ 外国兵たちがバスから降りた後、バスに乗り合わせて自らは犠牲にならなかったものの一部始終を見ていた教員が被害者の学生に警察へ訴え出るように言う。

★ 教員は彼を強引に交番に連れて行くものの、学生は口を閉ざしてしまう。教員は正論を述べるのだが・・・。

★ 加害者、被害者、傍観者。現代の「いじめ」にも似た構図を感じた。

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宮本輝「蝶」

2023-03-11 16:11:26 | Weblog

★ 好天が続く。まだ3月だというのに夏日だという。半年ぶりにほとんど授業のない1日。1年間積もり積もった書類や授業用プリントを片付ける。ポリ袋4つ、A4のコピーの箱4つ分。

★ ドラマ「スタートレック:ピカード」第3シーズンは面白い。「ザ・スウォーム」は第2話、第3話を続けて観た。海洋生物の異変に新種のバクテリアが絡んでいるようだ。日本の俳優では木村拓哉さん、平岳大さんが登場してきた。

★ 大掃除の休憩時間に、宮本輝さんの「星々の悲しみ」(文春文庫)から「蝶」を読んだ。ガード下の「パピヨン」という名の理容室。深夜まで明かりが点いているかと思えば、長期の休業もたびたび。知人の話によると「お化け屋敷」のようだという。向かいのアパートに住む主人公は好奇心半分で行ってみた。

★ 想像とは裏腹に、普通の清潔そうな店で、店主も普通の人だった。ただ一つだけ違っていたのは・・・という話。どんなシチュエーションで名匠の手で描かれれば面白い。

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