じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

桐野夏生「顔に降りかかる雨」

2022-04-29 21:37:26 | Weblog
★ 初夏のような陽気の翌日は嵐のような雨だ。昨日までの半袖では肌寒い。

★ さて、今日はまず映画「将軍の娘」(1999年)を観た。陸軍の基地内で起こった殺人事件。被害者が、将軍(そして次期副大統領候補)の娘というから体面を気遣って箝口令が敷かれた。FBIが捜査の乗り出すまで36時間。それまでに犯人を捕まえるべく陸軍警察の捜査官が調べ始める。事件の裏には、予想外の真相が隠されていた。

★ 捜査官役はジョン・トラボルタ。トラボルタといえば一世を風靡した「サタデーナイト・フィーバー」が有名だが、私には「パルプフィクション」の印象が強い。あのツイストが忘れられない。

★ 読書は、桐野夏生さんの「顔に降りかかる雨」(講談社文庫)を読み終えた。第39回江戸川乱歩賞受賞作。

★ 主人公(女性)の友人が1億円を持ったまま失踪した。それは彼女の愛人が預けたもので、裏社会に通じるカネだった。彼女を匿っていると疑われた主人公が事件に巻き込まれていく。友人はどこに消えてしまったのか。

★ 前半はイマイチだったが、事件が落着してからのどんでん返しが面白い。単行本は1993年刊行。この25年あまりで、世の中はすっかり変わってしまった。今ならスマホやネットを使うところが電話だし、カメラもアナログだ。

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伴野朗「人喰い鮫」

2022-04-29 00:00:35 | Weblog
★ 先日の「夜叉」に引き続き、今日も韓国映画「鋼鉄の雨」(2018年)を観た。「北」でクーデターが起こり、ある工作員が瀕死の「将軍様」とともに脱北するという話。ありえそうもない話だが面白かった。

★ 核戦争は案外身近に迫っていることなのかも知れない。今日のロシア・プーチン大統領の発言を聞いていても、極めて危険だ。ある日、ロシア軍が北海道を侵略なんてことはないだろうね。

★ さて、日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 死導者がいっぱい」(講談社文庫)から伴野朗さんの「人喰い鮫」を読んだ。東北の潜り漁師の話。夫婦と親戚筋の若い男で漁を営んでいる。ある日、妻が鮫を観たと言い出した。瀬戸内で鮫が人を襲ったニュースがあったとはいえ、日本海で鮫の目撃は珍しい。

★ その女性を取材した新聞記者がそのことを記事にする。それから数日。彼女の夫が鮫に襲われ行方不明に。あまりにも申し合わせたような出来事に、記者はその妻を疑う。

★ あっさりした文章で描かれている。「新聞は『悲劇』の人物には、寛容であり、美化しがちである。その反面、攻撃対象には容赦しない」等、新聞記者出身の作家らしい視点が盛り込まれている。
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五木寛之「私刑の夏」

2022-04-27 20:57:10 | Weblog
★ 歴史上、人間を脅かしてきたものといえば、自然災害、疫病、それに戦争が代表格だろうか。自然災害や疫病は被害を小さくするのがせいぜいの手立てだが、戦争は防ごうと思えば防げるものだ。にもかかわらず、それが絶えないのは、なぜなのだろうか。

★ 久しぶりにネットフリックスで映画「夜叉」(2022年)を観た。北朝鮮に近い中国の都市、瀋陽。そこでは各国の情報機関が活発に活動しているという。韓国の工作チームの動きがおかしいということで、本国から堅物の検事が監査役としてに送られる。しかし、彼が目の当たりにしたのは、殺すか殺されるかの工作戦だった。日本のスパイ役、池内博之さんが良い感じだ。

★ さて、韓国映画を観たせいか、今日は五木寛之さんの「海を見ていたジョニー」(講談社文庫)から「私刑の夏」を読んだ。

★ 終戦からすでに1年が過ぎていた。しかし大陸にはまだ多くの日本人が残され、日本(内地)への帰国を望みながら、飢えや病や戦闘(あるいは拉致)で日々生存者が減っていく過酷な状況だった。結城は肺を病みながら、拉致された男たちに代わり、老人、女性、子ども中心の貧乏集団のリーダーとして帰国のチャンスをうかがっていた。

★ そしてそのチャンスが訪れる。ソ連の将校に顔がきく星賀という男と出会って、大規模な帰国計画を知る。そして遂に、実行に移されるのだが・・・。

★ 戦時下で道理が通じるはずもなく、ある者はカネに、ある者は銃にモノを言わせて生き残ろうとする。極限状態で、なお自らの使命を自覚し、気高く生きることは難しい。何はともあれ、理屈を抜きにして作品に入り込めるのは、五木さんのうまさだね。

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堂場瞬一「雪虫」

2022-04-26 17:17:36 | Weblog
★ 今夜から天気が荒れそうだ。春は瞬く間に走り去り、梅雨がもうそこまで迫っている気がする。

★ さて、今日は堂場瞬一さんの「雪虫」(中公文庫)を読み終えた。本編539ページ。なかなかの大作だった。「刑事・鳴沢了シリーズ」の第1弾だという。

★ 舞台は日本海に面する新潟県。「仏」と言われた祖父、「鬼」と呼ばれた父、鳴沢了は警察官一家の三代目として刑事の道を歩んでいる。閑静な田園地帯で起こった連続殺人事件。被害者は、戦後まもなく興隆した新興宗教の元教祖と教団幹部。捜査を進めるうちに50年前の教団内での殺人事件が浮かんでくる。

★ 鳴沢たちは苦労の末、容疑者にたどり着くのだが、50年前の事件には隠された真実があった。

★ 犯人探しと家族問題が絡んでいるのも面白かった。何よりも刑事たちが生き生きと描かれていた。スペシャルドラマを観るように楽しませてもらえた。
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永井龍男「狐」

2022-04-25 21:27:47 | Weblog
★ 永井龍男さんの「青梅雨」(新潮文庫)から「狐」を読んだ。

★ 永井龍男さんといえば、長年芥川賞の選考委員を務められ、「限りなく透明に近いブルー」や「エーゲ海に捧ぐ」の選考を機に、委員を辞められた方だと思う。選考委員の高齢化もあるが、芥川賞の転機だったのかも知れない。

★ 「狐」は地味な作品だ。主人公は、父親が一代で築いた会社を義理の兄たちに任せ、自らは名ばかり重役で経営には関与せず、母親と同居するのを良いことに、高額な報酬を得て暮らしていた。そこそこ財のある家から妻を得て、5人の子にも恵まれている。

★ ところが、時代は太平洋戦争を挟んで大きく変わる。折しも頼みの母親もなくなり、会社からは報酬の大幅な減額を告げられた。家財を売って何とか生計を維持し、妻の実家からの援助は頑なに拒んでいる。プライドが許さないようだ。

★ 報酬があることを良いことに、男は酒を飲んで昼夜を楽しんだ結果、もはやアルコール中毒の症状さえ出ている。気にいらないことがあると妻に暴力を振るい、子を懐柔しようとするが、彼らは母の味方となる。破滅的な未来を予想させながらも、母と子は何らかの動きを始めようとしているようだ。

★ 昔はわけもなく威張り散らす男が多かったんだね。それを許す世間の風潮が根強かったんだね。まだ女性の社会進出も少なかったし、女性は耐えるしか仕方がなかったんだね。姑のイジメやだらしない夫と生活しながら子育てをする、母親の強さも印象的だった。
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映画「日本列島」

2022-04-24 22:21:42 | Weblog
★ 今年は町内会の役員が回ってきて、今日は町内会費の集金に回った。私の担当は26世帯だが、ご近所を回ってみて、高齢化の波を実感した。昭和10年代のご夫婦世帯、それに昭和一桁世代も何と多いことか。担当世帯の半数が70代、80代だ。それに若くても「うつ」に悩んでいる人が多いことも知った。面倒だと思った町内会の仕事だが、学ぶことも多い。

★ さて、今日は「日本列島」(1965年)という映画を観た。モノクロ作品で、昭和30年代の空気がよく描かれていた。

★ 昭和34年。水死した米兵をめぐって異例の取り扱いがなされた。もはや日本は独立を回復し、主権が回復しているのに、この事件をめぐっては被害者の遺体が超法規的に米軍の手に渡った。背後には何か大きな組織が動いているようだ。

★ 駐留軍の新任の将校から個人的な依頼をうけた通訳担当官、それに警視庁刑事、新聞記者が真相を追うが、真相はやぶの中。その上、関係者が次々と消されていく。

★ アメリカのスパイ組織、日本の裏機関(右翼と関係か)の関与が見え隠れしながら、結局、もやもやした感じで終わる。まだ当時はアメリカ統治下の沖縄での事件や偽札事件も出てくる。

★ もともとは女学校の先生で今は通訳担当官の宇野重吉さんが良い感じだ。刑事の鈴木瑞穂さん、新聞記者の二谷英明さんもいい。昭和30年だと言えば当然ながらクーラーなどない。暑さと戦いながら仕事をしている空気が伝わってくる。

★ 独立を回復し、もはや戦後ではないと言われながら、まだまだ米軍の影響力を感じる映画だった。それにしても昭和30年代にはノスタルジーを感じる。私はまだ幼くてはっきりした記憶な残っていないけれど、貧しくて、犯罪も今より多く。町はほこりっぽかったけれど、何か良い時代だったなぁと思う。
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藤沢周平「幼い声」

2022-04-23 14:25:04 | Weblog
★ 漢文が苦手という塾生から、どんな参考書が良いのかと聞かれた。といって、私も漢文など数十年触れていない。ネットを頼りに三羽邦美さんの「漢文 ヤマのヤマ」(学研)を買って読み始めた。読み始めるとなかなか面白い。かつての日本人が中国語をどのように読み下したのか、苦労の集積を感じる。

★ 参考書も時代ととも移り変わる。例えば英単語。私の高校時代は、「赤尾の豆単」から「試験に出る英単語(シケタン)」への移行期だった。「シケタン」は接頭語や接尾語、語源にさかのぼって解説しているのが面白かった。

★ 最近では「ターゲット1900」や「LEAP」「システム英単語(シスタン)」が人気か。英文法、私の時代は「総解英文法」を熟読したものだが、今は「be」(いいずな書店)など、読み物として面白い。語法は桐原書店の「Next Stage(ネクステ)」が良いみたい。解釈は同じく桐原書店の「英文解釈の技術」シリーズがよく使われている。

★ 数学は相変わらず数研出版のチャート式がベストセラーだ。白→黄→青→赤とレベル別の品ぞろえもありがたい。私ももう一度「青チャート」をやり直そうと意気込んではいるが、なかなか勉強が進まない。

★ さて、藤沢周平さんの「時雨みち」(新潮文庫)から「幼い声」を読んだ。短い作品だが、江戸の町人の雰囲気が十分に味わえる。

★ 櫛職人の新助、修行の甲斐あって、奉公が明けたら店を持っても良いと親方から許しが出た。この男、腕は良いのだがカッとなるのが玉にキズ。その夜も、店から返品されたものを遅くまで手直しし、屋台で夜泣きそば食いながらうっぷんを晴らしていた。そこへ幼なじみの下駄職人、富次郎がやってくる。二人は昔、近くに住んでいいた「おきみ」という幼い子の話題に。

★ 時はいやでも過ぎていく。幼なじみもそれぞれの人生を歩んでいく。幼い「おきみ」の「新ちゃん、またね」が余韻を引く。無垢な時間は何と貴重なことか。
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佐藤泰志「市街戦のジャズメン」

2022-04-22 01:44:12 | Weblog
★ 佐藤泰志「もうひとつの朝 佐藤泰志初期作品集」から「市街戦のジャズメン」を読んだ。

★ 「ゼンガクレン」が高校でも集会を開いていた時代。ある高校生が革命のヒーローを目指す話。作品としてうまいかと言われればイマイチだが、「市街戦のジャズメン」というタイトルに魅かれる。

★ 映画「そこのみにて光り輝く」(2014年)を観た。原作は佐藤泰志さん。砕石場で発破を担当していた佐藤は、事故で部下を死なせる。その心の傷を抱えきれず山を下り、函館の街で自暴自棄な日々を送っている。そこで、彼はある家族と出会う。

★ 仮釈放中の拓児、その姉の千夏。彼女は身体を売って生活費を稼いでいる。それに彼らの父母。父親は元漁師。脳梗塞を患い寝たきりの状態。彼らは海沿いのバラックで暮らしている。

★ 佐藤は千夏に恋し、人生を再生しようとするのだが・・・。それぞれが重荷を背負って生きている。

★ 佐藤役の綾野剛さん、拓児役の菅田将暉さん。それぞれに持ち味が出ていていい。何よりも千夏役の池脇千鶴さんが魅力的だった。想像以上に良い映画だった。

★ 今日は佐藤泰志作品に触れたが、それぞれ面白かった。
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乃南アサ「不発弾」

2022-04-21 13:45:56 | Weblog
★ 乃南アサさんの「不発弾」(講談社文庫)から表題作を読んだ。

★ 大手デパート勤めの男。四十の厄年を前に、勤務先では中堅、家庭では妻と一女一男、二人の子どもに恵まれていた。とりわけ裕福ではないが、そこそこの生活を過ごしている。まずは理想的な生活を送っているはずだった。

★ ところが、どこで歯車が狂ってしまったのか。妻も子どもたちもそれぞれ、自分たちの生活を歩み始め、ふと気づけば家庭内で自分はただ給料を運んでくるだけの存在になっていると知る。カネを払って養わせてもらっているのか、男は徐々に憤懣を内に募らせていく。まさに、不発弾状態だ。

★ この男、人が良すぎるのか、それとも自己表現が下手なのか。どうも言葉や態度で気持ちを伝えるのが苦手なようだ。どんな善人も言葉や態度で示さなければ人には伝わらないものだ。

★ 男に同情は禁じ得ないが、怒りがおさまらず家を飛び出すあたり、中学生の息子と似ているようで、息子同様、しばらく頭を冷やしたら、また戻ってくるんだろうなぁと思えてしまう。

★ 世間体を気にせず、自分なりの価値観で生きられれば良いのだが。

★ 新聞広告で、中澤雄大著「狂伝 佐藤泰志の無垢と修羅」(中央公論新社)の広告を観た。佐藤泰志さんの作品は読んだことがない。彼の作品を読んでみようかなと思った。
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今野敏「公安の仕事」

2022-04-19 17:00:17 | Weblog
★ ユーチューブで「鉄腕アトム」(1963年)の第1回を観る。何となく覚えているが、60年も前の記憶。天馬博士が、事故で死んだ息子に似せてロボットをつくったというくだりは、薄っすらと記憶に残っている(もしかしたら後づけの記憶かも)。

★ 今のアニメと比較すると、セリフが少ない気がする。映像は意外ときれいだった。サーカスが出てくるところなど、映画「A.I.」(2001年)に似てる気がする。

★ さて、今日は今野敏さんの「公安の仕事」(「ビギナーズラック」徳間文庫所収)を読んだ。内閣情報室、公安調査庁、警視庁公安部といった世界は日頃お付き合いがない。

★ この作品は、警視庁公安部それも外事部(ロシア・東欧担当)の「情報マン」が主人公だ。ある筋から仕込んだネタを元に、外務省の中国担当の官僚と接触を図る。淡々と公安の仕事が記されているが、スパイ天国と言われる日本には、諸外国のエージェントが蠢いているようだ。

★ それにしても、東京には見知らぬ世界がいくつもあるようだ。そうした薄暗い部屋で、日々、情報や金銭が飛び交っているんだなぁと感じた。
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