じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

映画「日々是好日」

2019-12-31 22:07:09 | Weblog
☆ 映画「日々是好日」(2018年)を観た。じわじわっと感動する映画だった。

☆ 優柔不断でおっちょこちょい。自分が何をしたいのかがわからない典子(黒木華)は、20歳の時、いとこ(多部未華子)と一緒に茶道を習うことにした。それから10年あまりの日々が描かれている。

☆ カタチから入る茶道。最初はなかなか馴染めなかった典子、先生の指導の下、だんだん魅かれていく。

☆ 四季折々の風景。掛け軸の季節感。お湯と水ではこんなに音が違うんだ。

☆ 地味な典子と派手ないとこの対比がいい。何と言っても先生役の樹木希林さんだ。樹木さんが話す茶道の心得は役者の心得にも通じそうだ。まずカタチから入って、数を経験することによって慣れること。そして、型が身に着いたら自分なりに工夫すること。自然と心が入っていくという。

☆ 学ぶの語源はまねぶ(真似る)だという。「守破離」という言葉もある。演技が演技でなくなれば、人が役に合わせるのではなく、人に役がハマるようになれば名人ということか。

☆ すぐにわからないものは、毎日少しずつわかっていけばよい。

☆ 同じことを繰り返せることの幸せ。大晦日に見てよかった映画だった。
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映画「新聞記者」

2019-12-31 16:32:15 | Weblog
☆ 映画「新聞記者」(2019年)を観た。

☆ 内閣府が主導で計画している医療系大学院大学の新設。その大学にはある秘密が隠されていた。

☆ 大学の新設に関わり、権力側に都合よく利用され、挙句に命を絶った官僚がいた。彼はなぜ命を絶ったのか、内閣調査室に勤める後輩が死の原因に迫る。

☆ その頃、東都新聞の女性記者も大学新設問題を追っていた。政府による情報操作、隠蔽体質に疑問をもった彼女は遂に真相にたどり着く。


☆ 首相の友人が特区で大学を新設するというのは、どこかで聞いたような話だ。映画の設定はフィクションだろうが、ツィッターの投稿やフェイクニュースなど、権力側の情報操作の様子はリアルだった。

☆ 権力者が「国のため」と言うときは相当にまゆつば物だ。アメとムチでスタッフを思い通りに動かす様子はまさに悪魔の所業だ。悪魔の前で一個人の良心は抵抗しようがないのか。「国のため、家族のため」と自らに言い聞かせ、権力に飲み込まれるか、それとも自ら命を絶つことしか道はないのか。

☆ 内閣調査室、内部告発するスタッフの上司役、田中哲司さんの冷徹な演技が最高だった。

☆ 女性記者役には韓国人俳優を起用。政治がらみの映画だけにキャスティングに苦労があったとか。最初、たどたどしい日本語が気になったが、ジャーナリストの父親が韓国人女性の間にできた子どもという設定で何とか納得した。

☆ 「権力」と言うもの、そしてその利権に与る人々の魑魅魍魎とした蠢きの一部を感じることができた。
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久坂部羊「人間の屑」

2019-12-28 18:09:55 | Weblog
☆ 久坂部羊さんの「黒医」(角川文庫)から「人間の屑」を読んだ。

☆ 折尾真治郎率いる「愛国一心の会」が政権をとり、「ネオ実力主義」の理念のもと、ナチスばりに独裁体制で「努力した人が報われる社会」(裏を返せば、働かない者、努力しない者は「死ね」という社会)をめざす。

☆ 村上龍さんの「愛と幻想のファシズム」のような展開かと思いきや・・・。

☆ 言いたくても言えない、きれいごとでやり過ぎしているアンタッチャブルの領域に迫っている。
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佐伯啓思「社会が失う国語力」

2019-12-28 13:12:45 | Weblog
☆ 今朝の朝日新聞「オピニオン&フォーラム」のページ、佐伯啓志さんが「社会が失う国語力」と題して寄稿されていた。共感できる論稿だった。

☆ 高校のカリキュラム「現代の国語」が「論理国語」と「文学国語」に分割される「改革」と言う名の「改悪」、実用を重視するPISA学力に疑問を投げかけ、「過度の情報化と競争社会」の中で失われていく国語力、読解力を危惧している。

☆ 「読解力とは、著者の意図を正確に読み、かつそれを自分なりに解釈すること」と定義し、「著者の意図を正確に読み取るには、著者の立場や気持ちがわからなければならない。そのためには経験と想像力がいる」そして「経験と想像力と養うには、様々な障害とぶつかり、自明とされていることに疑問をもち、それらを自分の頭で考えてみなければならない。正しい結論などどこにもない」と明快に述べる。実に心地よい。

☆ 学力向上が至上命令になっている今日、「学力低下が起きると『改革』が行われ、ただただ学校教育現場の負担が増える」と悪循環を指摘。「余計なものをできるだけ減らして、もっとも根本的なところへと立ち返るべきなのである」と結んでいる。


☆ 学校のスリム化が叫ばれたのは1980年代だろうか。「新しい学力観」に基づく「ゆとり教育」は一つの解答であったが、「改革」が成熟する以前に反動化の巻き返しが起こった。ぐるっと20年巡って今度は「アクティブ・ラーニング」と姿を変えて実態は不明瞭なまま言葉だけが独り歩きしている。

☆ 公教育、とりわけ教育内容の根本とするところは昔なら「読み、書き、算」。私は基礎基本と人権教育だと考える。基礎基本に関してはミニマム・エッセンシャルを定め、ほぼ学年も取り払い、到達度に応じて完全習得を目指すようにすれば良いと思うのだが、問題は非効率性と学力の二極化が一層進むということだ。(能力に応じてと言うなら憲法の理念に合致するが、家庭の経済力が影響するからやっかいだ)

☆ 底辺層を重視すれば、一定割合存在する高位層はさほど影響を受けないが、中位層が没落し、低位に移行する。結局、正規分布が二極分布になる。「ゆとり教育」でこの傾向が見られた。

☆ そもそも数値化できるものだけが教育ではない。数値化できないものこそ人間の成長にとっては重要かもしれない。昨今「教養」の価値が低下している。実用を重視すればするほど一見無駄に見える「教養」が軽んじられるようだ。

☆ 私が大学生の頃、「学校はムダなことを学ぶためにある」と言ってのけた教官がいた。一つの見識だと思う。点数に追いまくられ、合理化を追求するあまり、私たちは「ムダの効用」を見逃しているのかも知れない。

☆ 本を読むのも、旅に出るのも、クラブ活動をするのも、短期的なテスト結果を尺度とすればムダな営みかもしれない。しかし、短期のテストの結果に一喜一憂することにどれほどの意味があるのだろうか。

☆ ゆとりをもってムダな時間を過ごすこと。人としての器を大きくすることが大切だと思う。英会話にしても定型句を覚えるだけでは深いコミュニケーションは期待できない。それでは人間関係が深まるはずもない。「何を」話すのか。相手に話す価値を認めてもらうような土台が必要だ。論理国語を鍛えるのは良いが、文学作品の鑑賞が軽視されることのないようにして欲しいものだ。文学作品は作中人物の生きざまを通じて、生きる上での課題や問題提起に直面することができる。

☆ 現在はややもすると、生まれてから死ぬまで、すべてが数字で表現され、カネ勘定で評価される生き方だ。生きるということにはもっと深い意味があるのではなかろうか。
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危険な閉塞感

2019-12-27 22:10:29 | Weblog
☆ 冬期講座4日目。そろそろ疲労が蓄積してきた。

☆ 朝8時から11時45分までが午前の部。13時から16時までが午後の部。17時30分からはレギュラーのクラス。授業の合間を縫ってドリルの丸つけ。翌日の教材の準備。1日何時間ぐらい仕事をしているのかもわからない。

☆ オーナーシェフではなくてオーナーティーチャー。「働き方改革」は労働者がメイン。経営者はすべて自己責任。「隣の芝生は青く見える」というけれど、サラリーマンがうらやましい。

☆ 新聞を読む時間もないくらいだが、世の中は慌ただしく動いている。

☆ 「桜」問題で内閣不支持率が増えたとか、統合リゾート(早い話が「カジノ」「ギャンブル」「賭博」「ばくち」)をめぐり自民党の国会議員が汚職で特捜に逮捕されたとか、かんぽ生命をめぐり郵政の社長が引責辞任したり、そういえば総務省の事務次官が情報を漏らしたということで更迭されたね。モラルよりも「天下り」って感じかな。

☆ さらに自衛隊を中東に派遣するとか。理屈はさまざまあれど、要するにアメリカへの義理立てだね。自衛官の皆様が無事に帰還されることを祈るばかりだ。

☆ 通常国会は荒れそうだ。公明党の代表はオリンピック前の総選挙はないようなことを言っていたけれど、逆を言えばオリンピック後に総選挙だ。後継不在のポスト安倍。自民党内では「菅ー二階ライン」への風当たりが強まり、有力と言われる岸田氏や石破氏もパッとしない。野党はと言えば煮え切らない男女のような体たらく。理念よりも数、要するに自分が選挙に勝つかどうか。既成政党離れも無理はない。

☆ NHKオンデマンドで「映像の世紀」(1995年)を観ている。第4回(全11回)でヒトラーを取り上げていた。経済的な疲弊、権力争いに明け暮れる政治。いら立つ大衆は閉塞感の出口をナチスに求めた。

☆ 今から見ればなぜあのチョビ髭男があれほどまでにカリスマ性をもったのか不思議だが(そう言えばオウム事件のグルもなぜあれほどまで若者を引きつけたのか実に不思議だ)、演説は確かに迫力がある。ナルシズムの極致。徹しきることが大切なのだろう。あのアジテーションに対抗できるのは、「独裁者」のチャップリンか、キング牧師ぐらいだろうか。

☆ 最近の日本人は演説が下手だ。小泉純一郎首相はなかなかいいところまで行ったけれど、他の首相はみんな自分の言葉で語らないから、自分に酔わないから観衆を酔わすこともできない。紙一重の世界だけれど。

☆ そう言えば今日の朝日新聞、萩生田文相の「端境期(はざかいき)」発言にもっと噛みつけと池上彰さんが噛みついていたなぁ。萩生田さんって政治家にしては正直者だね。

☆ 疲れていると焼酎がよく回る。酔いに任せてこんな愚痴で申し訳ないです。
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冬期講座

2019-12-25 10:23:25 | Weblog
☆ 24日から1月6日までは冬期講座です。教育産業界(塾業界)にいるとクリスマスやお正月と言った感覚が鈍ってしまいます。この時期になると、「いよいよ受験が迫ってきた、嫌でも結果が出るなぁ」と今一度発奮します。

☆ ということで、今年度も元旦だけ休みで、あとは塾を開いています。三が日はさすがに生徒は来ないだろうと思っていたのですが、どうしてどうして、2日の早朝から集まって来るようです。生徒たちの気合に更に発奮。

☆ 「塾の正月は受験が終わってから」と毎年思っているのですが、試験の結果が出る3月は新規生の募集やら春期講座の準備やらで、休む間もなく新しい年度が始まります。

☆ 私塾を創業して40年。こんな生活に愚痴を言いながらも、生徒たちが途絶えることなく通ってきてくれることをありがたく思っています。

☆ 閑話にて。
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「未解決事件」

2019-12-22 10:14:03 | Weblog
☆ NHKスペシャル「未解決事件」から「グリコ・森永事件」(2011年)を観た。迫力のある番組だった。

☆ 企業の社長を拉致したり、食品に毒物を入れたり、脅迫文で社会不安を煽ったり、前代未聞の劇場型犯罪と言われる事件だった。

☆ 「レディ・ジョーカー」や「罪の声」など小説のモチーフにもなっている。

☆ 未解決なのではっきりしたことはわからないが、株価操作が目的なのではないかと考えられている。

☆ NHKの「未解決事件」はノンフィクション。取材記録と当時の捜査担当者の証言で構成している。ドラマでは、大手新聞社の特ダネ合戦、メディアと警察の攻防が描かれている。

☆ 大手新聞社は毎日と読売がメインで、朝日の影が薄いのが気になった。大人の事情があるのだろうか。それにしても十分に単発ドラマとしても観られる迫力のあるものだった。
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長井彬「原子炉の蟹」

2019-12-21 17:53:15 | Weblog
☆ 長井彬さんの「原子炉の蟹」(講談社文庫)を読んだ。

☆ 原子力発電所、そこは放射線が外部からの侵入者を防ぐ密室。この密室内で起こった殺人。被害者は手にメモを持っていた。事件はサルカニ合戦になぞらえた連続殺人に発展。事件の背後には何があるのか。新聞記者が追う。

☆ 1981年に発表された作品だが、30年後の福島原発の事故を先見しているようだ。原子力発電所の危険性、原発利権の闇。

☆ 作者は全国紙の整理部記者だったので、新聞社の雰囲気がリアルに描かれている。整理部記者ならではの蘊蓄も豊富だ。
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「ツァラトゥストラ」

2019-12-20 23:33:09 | Weblog
☆ NHK「100分de名著」、シリーズ化された第1弾はニーチェの「ツァラトゥストラ」(2011年)。

☆ 比喩表現満載で読み解くのが難解な作品を、西研さんがとてもわかりやすく解説されていた。

☆ ルサンチマン、ニヒリズムに縛られた「末人」としての生き方から脱却して、永遠回帰を受け入れることによって「超人」として生きよ。良いことも悪いこともすべて受け入れて肯定的に生きよ、ということらしいと受け取った。

☆ 浄土信仰から日蓮仏法へと転換するような感じだ。そういえば太陽に語り掛けるところは日蓮の立宗宣言にも似ている。

☆ 永遠回帰(私が読んだ訳本では「永劫回帰」と訳されていた)も仏教的だね。

☆ ツァラトゥストラはフィクションの存在だけれど(語源はゾロアスターと聞いたこともあるけれど)、なかなか魅力的な人物だ。
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米澤穂信「死人宿」

2019-12-20 21:10:05 | Weblog
☆ 米澤穂信さんの「満願」(新潮文庫)から「死人宿」を読んだ。

☆ 2年前に姿を消した女性の居所がわかった。男は彼女に会いに行く。そこは渓谷の温泉宿。火山ガスで自殺する人が絶えないので「死人宿」として有名だという。

☆ 露天風呂で見つかった遺書らしきもの。男は「にわか探偵」として、書いた主を探す。救える命は救いたい。

☆ 彼の推理に読者も参加してしまう。振り返ってみれば、作中にいろいろとヒントが隠されている。

☆ 推理を楽しみながら、男女の心の機微にも触れられる。共感を求める女性、論理性を求める男性。異性を理解するのは難しい。
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