じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

浅田次郎「金の鎖」

2023-11-27 20:46:26 | Weblog

★ この時期、東京の青山界隈はイチョウで黄色く色づいているのだろう。

★ そんな景色を想像しながら、浅田次郎さんの「見知らぬ妻へ」(光文社文庫)から「金の鎖」を読んだ。

★ 今ではトップデザイナーと評価されている女性が主人公。いくつかの恋愛は経験したが、結婚には至らず40を超えたキャリアウーマンだ。

★ 今年も歳末商戦を前に深夜まで仕事に追われいる。休憩で立ち寄ったドーナツショップで、思わぬ人物に出会う。それは20年前、ほんの短い間だけ付き合った男性。そして今も忘れられない男性だった。不思議なのは、彼が年をとらず20代の姿のままだということ。

★ 奇跡のような光景に、彼女は男性に声をかけた。

★ 物語はこのシーンから始まる。20年の歳月。会社は100倍の規模になり、青山にビルを構えるまでになった。彼女もブランドを立ち上げるまでに。しかし同時に、若くして鬼籍に入った人々も。

★ 他人の恋愛などどうでもよいことだが、浅田さんの文章、特に会話文を追っていくと、物語にはまってしまう。行間の物語を想像させてくれる。

★ もうすぐ師走だ。時間がどんどん加速していく気がする。

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角田光代「八日目の蝉」

2023-11-26 17:59:10 | Weblog

★ 雲ひとつない良い天気だった。

★ 角田光代さんの「八日目の蝉」(中公文庫)を読み終えた。以前に映画を観ていたので、そのシーンを思い出しながら読んだ。

★ フェリー乗り場で逮捕されるシーンが一番印象に残っている。

★ 主人公の女性、単身赴任中の職場の上司と不倫関係に。妻とは別れるとの男の甘い言葉にズルズルと関係を続けている内に妊娠。それを聞いて、男は掌を返したように出産を思いとどまらせようとする。

★ 結局女性は中絶。一方、地方から上京し夫と暮らし始めた妻には子どもが生まれる。

★ やり場のない気持ちの女性は、留守中の男の家に押し入り、眠っていた赤ん坊を連れ去る。それから3年半。女性は子を育てながら逃亡を続ける。あるときは立ち退きを迫られたアパートに匿われ、あるときは宗教団体の施設で暮らす。やがてそこも抜け出し、名前を変え小豆島で暮らす。逮捕されるその日まで。

★ 作品は0章、1章、2章で構成される。0章はプロローグ、1章は女と乳児の逃走の日を描く。2章は女から引き離され、実父母の下で成長した子の物語。いつしか女と同じ道を辿っている自分に気づく。

★ 「母性」を基調としながら、「業」をも感じる作品だった。角田さんすごいねぇ。

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伊集院静「のほん」

2023-11-25 14:15:21 | Weblog

★ 中学校の期末テストが終わった。今回のテスト対策期間は長かった。苦労もしたがその分手ごたえも感じた。週明けから結果が返ってくる。

★ 中学校の期末テストが終われば、次は高校の期末テスト。そして冬期講座と続いていく。チラシを作り、「年末年始の予定」を渡し、受験生には12月31日から1月2日までの自習室の案内を渡す。足早に1年が過ぎる。

★ 伊集院静さんの訃報を聞き、伊集院さんのエッセイ「ねむりねこ」(講談社文庫)を手に取る。題名通り表紙の熊谷守一作「ねむりねこ」が印象的だ。

★ 「のほん」は「ねむりねこ」のあとがき。不安になったり、悩んだりするとき、「ねむりねこ」の絵をゆっくり見ていると、「何をそんな小事に悩む。生きている、それで充分、あと何がいるというのだ」と画家の声が聞こえると気がするという。

★ 素人とプロの違いの言及も参考になった。「プロは何が違うのか。それは人間そのものの違いにつきるのでは」という。

★ 金額などと言った「秤」に載らないものに本源的な価値があると言っているように感じた。

★ エッセイの中では「過ぎてしまえば・・・」が印象に残った。

☆ 有限の命もまた方便。締め切りのない論文は結局完成しない。日々、生きることそのことを楽しんでいきたいと思った。

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保阪正康「危急の時代と指導者の姿勢」

2023-11-22 15:41:01 | Weblog

★ 中学校の期末テストが24日まで。「起きて、授業の準備をして、授業をして、寝る」というハードなルーティーンワークが続く。とりあえずあと2日間。

★ 11日14日付「朝日新聞」、「現論」のコーナーに、保阪正康さんが「危急の時代と指導者の姿勢」と題する文章を寄せられていた。

★ 岸田文雄内閣の支持率下落を受け、「支持されない」理由を考えている。面白いのは昭和10年代の9人の首相を分類しているところ。

★ 「状況に流されて眼前の強硬論しか考えない東条英機型」「哲学、思想はあるが優柔不断な近衛文麿型」「迂回しながらも政治目標の完遂を目指す鈴木貫太郎型」

★ 「信念欠如、思想欠如の無気力型」。9人の首相のうち6人がこのタイプに入るという。それぞれの時代背景があるので、この分類には異論もありそうだが、類型化しているのは面白い。

★ ところで、岸田首相。保阪氏によると東条型だという。その理由は、「自分と周囲の利害得失でしか物事を判断しない。人事で有能の士を遠ざける。大局よりも小事にこだわる」と手厳しい。

★ かつて「聞く力」で総裁選に勝った岸田氏だが、裸の王様になってしまったのか。辞任ドミノが求心力を弱めているのか、求心力の翳りが辞任ドミノを引き起こしているのか。

☆ 雑文にて。

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安倍公房「事業」

2023-11-17 14:29:45 | Weblog

★ 近隣の中学校の期末テスト、今年は勤労感謝の日を挟む22日と24日なので、テスト対策期間が長い。まだ1週間、忙しい日が続きそうだ。

★ 短い作品ということで、安倍公房の「壁」(新潮文庫)から「事業」を読んだ。余談ながら、壁と言う言葉は最近よく使われる。「年収の壁」「80歳の壁」など。少しまでは「バカの壁」なんて本もあった。

★ 「事業」はある事業家の話。彼は事業で成功を収める。彼が手掛けたビジネスは、鼠を品種改良して肥大化したうえで、養殖し、鼠ソーセージを製造するというもの。鼠肉ということを公表していないからか、蛋白源としての価値が評価され、事業は好調を極めた。

★ そんな彼が次に手掛けたのは・・・。

★ 昆虫を蛋白源としていたのは、映画「スノーピアサー」だったか。「事業」は、チャールトン・ヘストン主演の「ソイレントグリーン」のような感じだ。

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山中伸弥 平尾誠二・惠子「友情」

2023-11-13 15:54:15 | Weblog


★ 先日観たドラマが良かったので、山中伸弥 平尾誠二・惠子「友情」(講談社文庫)を読んだ。
★ 第一部は、山中伸弥さんが平尾氏との友情を語る。
★ 第二部は、平尾氏の夫人、惠子さんから見た山中、平井両氏の友情を語る。
★ 第三部は、山中、平尾両氏が知り合うきっかけとなった対談を載せている。
★ 闘病する平尾氏、彼を思いやる山中氏の気持ちに感動する。
★ 平尾氏のリーダーシップ論は参考になった。歴戦の将の言葉は重い。

★ ドラマでは滝藤さんの山中教授も良かったが、平尾氏を演じる本木さんの役作りに感動した。
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石田祥「猫を処方いたします。」から

2023-11-11 15:43:56 | Weblog

★ とにかく忙しい。やるべきことが次から次へと押し寄せてくる。動けば動くほどに仕事が増えるから不思議だ。

★ 今日は近隣の中学校が授業参観だったので、これ幸いと、石田祥さんの「猫を処方したします。」(PHP文芸文庫)から第1話を読んだ。京都本大賞受賞作だという。(こんな賞があったんだね)

★ 香川秀太は20歳代後半。大手証券会社に勤める営業マンだ。例にもれず、その会社はブラック企業。こころにも異常をきたし、人づてを頼りにある「こころのびょういん」を訪れる。

★ 他の精神科と同じように、ただ話を聞くだけの医師。他の精神科と同じように薬を処方されて終わりかなと秀太があきらめかけた時、なんと処方されたのが猫だった。

★ 動物など飼ったことがない彼は戸惑う。飼っている内に猫が問題を起こすことも。ところが、どういう風の吹き回しか、事態が好転していく。

★ 「文句をいうだけじゃなくして自分から行動する。本気で頑張れば色は変わるよ」というセリフが印象的だった。

★ ところで京都本大賞、歴代の受賞作を見てみると、

  第1回(2013年)が岡崎琢磨さんの「珈琲館タレーランの事件簿」(宝島社文庫)

  第2回が、森見登美彦さんの「聖なる怠け者の冒険」(朝日新聞出版)

  第3回が、七月隆文さんの「ぼくは明日、昨日の君とデートする」(宝島社文庫)

  第4回が、望月麻衣さんの「京都寺町三条のホームズ」(双葉文庫)

  第5回が、原田まりるさんの「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のことを教えてくれた。」(ダイヤモンド社)

  第6回が、原田マハさんの「異邦人(いりびと)」(PHP文芸文庫)

  第7回が、天花寺さやかさんの「京都府警あやかし課の事件簿」(PHP文芸文庫)

  第8回が、大石直紀さんの「二十年目の桜疎水」(光文社文庫)

  第9回が、藤岡陽子さんの「メイド・イン京都」(朝日新聞出版)

  第10回が、増山実さんの「ジュリーの世界」(ポプラ社)

そして、第11回目が本作だ。出版社に偏りがあるようにも感じるけれど、いずれも京都が舞台の作品だ。

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三浦哲郎「オーリョ・デ・ボーイ」

2023-11-07 15:17:21 | Weblog

★ 期末テストが近づいて、だんだん忙しくなってきた。この時期が多分1年で一番忙しい。まして今年は(うれしいことに)塾生が多い。

★ ゆっくり本を読む時間もない日々。世の中では、阪神タイガースが38年ぶりに日本シリーズを制した。前回は1985年。私は大阪のある大きな英会話学校に勤めていたので、当時の喧騒を肌で感じた。当時はまだ昭和だったんだね。若かった日々を思い出す。

★ 岸田政権が満を持して打ち出した減税策が、想像以上の不人気で、支持率も最低とか。さらにはフェイクニュースまで登場し、どうやら岸田丸の先行きは険しそうだ。解散を打てないままに、総裁選にも出馬できず総辞職なんてこともあるのかな。

★ 選挙目当てのバラマキは見え見えで、減税後の増税も透けて見える。かつて「米百俵」を謳った首相もいたが、税金が余っているなら教育や子育て支援など未来への投資に向ければよいものを、と私なんかは思ってしまう。

★ さて今日は、三浦哲郎さんの「短篇集モザイクⅠ」(新潮文庫)から「オーリョ・デ・ボーイ」を読んだ。

★ 初めて甲子園への出場を決めた高校。監督が腰痛のため、体育教師でもある部長が代理でシートノックを務めている。県大会までは上々の出来。しかしこの部長、甲子園ともなると、シートノックで果たしてキャッチャーフライをうまく上げることができるのかと気に病んでいる。

★ 「オーリョ・デ・ボーイ」とは、歴史書の読書を趣味とする部長が最近読んだ船乗りのセリフ。ポルトガル語で「雄牛の目玉」という意味らしく、嵐の前の黒雲を比喩したものらしい。

★ 部長の不安がこのセリフに集約されている。果たして、本番はどうなったのか。

☆ 政権もまさに「オーリョ・デ・ボーイ」の様相だ。

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「NOW AND THEN」

2023-11-04 18:36:11 | Weblog

★ ビートルズの最後の新曲と言う「NOW AND THEN」のオフィシャルビデオを観た。何かジーンときた。

★ 今や老境の域に達したメンバーたち。それに、今は亡きジョン・レノンが加わり、若い日の映像も交えて描かれていた。

★ AI技術の凄さを感じるとともに、何か人生について考えさせられた。

★ 1日1日をしっかり生きなきゃいかんなぁと改めて感じた。

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「現代学校研究論集」

2023-11-03 19:46:14 | Weblog

★ 大学時代の恩師、堀内孜先生がお亡くなりになっておよそ2年半。コロナ禍で見送られてきた「偲ぶ会」が、ホテルグランヴィア京都で開かれた。

★ 専門の公教育経営学をはじめ、さまざまな分野でご活躍された先生ゆえ、教え子をはじめ90名余りが集った。

★ かつて20代の青年も、もはや60代。多くが教育の現場で活躍した面々。白髪や禿頭を輝かせながら、集えば一瞬で若かりし頃に帰ることができた。

★ 先生の研究をどう引き継ぐのか、先生との思い出は何かなど、それぞれの思いが「現代学校研究論集 特別号」(京都教育大学公教育経営研究会)としてまとまられた。

★ 先生の教えを礎に、各人の人生行路が書かれていて感動した。もはや一期一会になるかもしれないが、再会を期して帰路についた。

☆ それにしても3連休の初日。京都駅の混みようは凄かった。久々に人混みに翻弄され疲れた。

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