じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

佐多稲子「キャラメル工場から」

2022-08-31 17:49:07 | Weblog

★ 遠くの台風が影響しているのか、今日は残暑が厳しい。最近少し涼しかっただけに暑さがこたえる。

★ 京セラの稲森さんが亡くなられた。稲盛さんのインタビュー記事を読む。今でこそ「経営の神様」と評されるが、若い頃は挫折の連続だったそうだ。希望する大学に入れず、就職難の中やっと決まった会社は赤字続き。仲間たちは一人二人と辞めていき、自分一人だけが残ってしまったという。そこで、一大転機が訪れる。開き直ってある研究に没頭してから、仕事が面白くなり、それにつれて好転するようになったという。

★ 考え方×熱意×能力=人生・仕事の結果 

★ さて、今日は「日本近代短篇小説選」(岩波文庫)から佐多稲子の「キャラメル工場から」を読んだ。この作品は1928年(昭和3年)に「プロレタリア芸術」に発表されたという。

★ 小学生のひろ子は父の勧めでキャラメル工場で働くことになった。父親は失業中だという。作品は、キャラメル工場での労働の様子が描かれている。出来上がったキャラメルを紙に包むのが彼女たちの仕事だ。極めて薄給で、通勤にかかる電車賃を引けばいくらも残らない。彼女は電車賃を節約するために徒歩で通うことも。

★ 長時間立ちっぱなしの仕事で、足はつるし、腹は冷えるし。今から思えばひどい労働環境だ。

★ 「女工哀史」「あゝ野麦峠」にもあるように、日本の資本主義はこうした人々に支えられてきたんだね。

コメント

中島敦「文字禍」

2022-08-30 16:21:48 | Weblog

★ 昨夜は、ドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」第1シーズン最終話(第21話)まで観たため、今日は寝不足。まずはハピーエンドで良かった。「サブ」って日本語では師匠という意味らしい。「師父」の韓国語読みか。

★ 「師傅(しふ)」という語は中島敦の「文字禍」にも出てくる。今日は「日本近代短篇小説選」(岩波文庫)から、井伏鱒二「鯉」と中島敦「文字禍」を読んだ。

★ 井伏の「鯉」は、主人公が友人からもらった鯉を飼う話。最初下宿の瓢箪池で飼っていたが、転居するのにともない、鯉も友人の愛人の池に引っ越す。そうこうしているうちに友人が亡くなり、事情を話して鯉を引き取り、大学のプールに放ち、その姿を眺めながら季節を過ごすという話。

★ 「鯉」は今となっては亡き友の残影なのか。

★ 「文字禍」はメソポタミア、アッシリアが舞台。学究に富むアッシリアの王が図書館を設け、各地の知見を集めていた。その図書館で夜な夜な不審な囁きが聞こえるという。文字の精霊によるものとのうわさも流れ、王は博識にして「師傅(学問の師匠)」であるナブ・アヘ・エリバ博士に文字の精霊に関する研究を命じる。

★ 博士は研究に没頭し、まずは文字を覚える前と後で人々にどのような変化が起こったのかを聞き取り調査する。それによると文字は目をはじめ体の至る所を犯し、とりわけ頭脳を犯し、精神をマヒさせると結論づける。

★ 彼は同時に文字そのものを分析し、それが線と線の組み合わせに過ぎないこと、そうした組み合わせが音と意味を持つ不思議さにたどり着く。

★ 彼は「武の国アッシリアは、今や、見えざる文字の精霊のために、全く蝕まれてしまった。文字への盲目的崇拝を改めずんば、後に臍をかむとも及ばぬであろう」と王に報告し、王の怒りを買う。謹慎を命じられた博士は自宅で大地震に見舞われ、書籍の下敷きとなり圧死する。(当時の書籍は紙ではなく、粘土板に彫られた瓦のようなものであった。)

★ 博士は文字の悪霊の復讐にあったのだろうか、というもの。

 

☆ 文字は便利で、私たちは無意識に使っているが、音を平均律でしか表現できない不自由さと同じじれったさを感じることがある。哲学者が次々と難解なワードを生み出すのにはこうした背景があるのかも知れない。私たちは言葉を文字で表現し、その文字に縛り付けられる。

☆ 作品の中に出てくる「歴史」問答。文字で残されたものが歴史だという視点。人の記憶も思考も文字を通して行われる。文字は客観性をもつ一面で、必ずしも主観とは一致しない。

☆ 私はもはや文字の悪霊に圧死させらつつあるような気がしてきた。

コメント

「浪漫ドクター キム・サブ」

2022-08-29 09:27:11 | Weblog

★ 昨日は午前中だけの授業で、何も予定がない贅沢な時間を過ごした。

★ 「浪漫ドクター キム・サブ」を5本観た。天才外科医といわれながらある出来事のため医学界を追われた男。名前を「キム・サブ」と変え、田舎の病院で医療に携わっている。

★ いろいろな理由があって、そこに送られてくる若い医師たち。それぞれが壁にぶつかり悩み、もがきながら医師として成長していく物語だ。

★ 背後に金儲けに走る病院経営者の思惑があり、コネがなければ出世できない医学界の現実がある。家族との軋轢があり、恋愛もある。

★ ドラマとして誇張されているのか、彼らはよくキレる。血圧が相当上がりそうだ。同じく医師の成長を描いた「ER」とも雰囲気が違う。「ER」がわりとドライに描いているのに対して、こちらは結構湿っぽい。東アジア人独特のテイストだろうか。

★ 何といっても「キム・サブ」がカッコいい。完璧なヒーローではなく、ぼろぼろになりながらも自らの理想を秘めつつ、後輩たちを育てていく姿が良い。結構あくどい金儲けをしている大病院の理事長が自らの大手術を「キム・サブ」に委ねる。「なぜ、私なのか」という「キム・サブ」の問いに、「私には本物を見分ける目がある」と答える。

★ 「キム・サブ」もまた、若い医師を育てるとき、その実力を見分ける感覚をもっているという。

★ ユ・ヨンソク演じるカン・ドンジュ医師、ソ・ヒョンジン演じるユン・ソジョン医師のラブロマンスも素敵だ。

★ 夜の8時からは大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。遂に源頼家が暗殺され、仕置き人(暗殺者)を演じた架空の人物、善児も死ぬ。家(北条一族)を守るためにどんどん悪くなっていく義時。権力は人を変えるようだ。

★ さて、今日から2学期が始まる。新たな気持ちで頑張ろう。

コメント (2)

柳美里「潮合い」

2022-08-27 19:34:01 | Weblog

★ 京都新聞のコラム、「白紙にもどせ遣唐使」を引用し、政界で「検討使(検討ばかりで実行しない)」と揶揄される岸田総理を皮肉っていた。総裁選からおよそ1年。覚悟を決めた当時の気迫が最近感じられない。お疲れ気味か。

★ さて、今日は柳美里さんの「家族シネマ」(講談社文庫)から「潮合い」を読んだ。実に不快な小説だった。

★ 小学校6年生2学期、ある学級に1人の女子が転校してきた。この学級を仕切っていた女子児童は、転校生との距離がうまく取れず、不安定な気持ちがいじめへと発展する。

★ スクールカーストは言われて久しい。グループに入るか入らないか、空気を上手に読まなければ、自分がいじめられる。子どもの人間関係も緊張感に満ちている。

★ いじめの末、転校生がけがをする。「先生に告げ口するな」と口止めする児童たち。校長にいじめの有無を問いただされ、「いじめはなかった」と断言する担任。そこには自己保身しかない。彼は子どもたちに口止めを強要する。学校の隠蔽体質。

★ 社会の歪みが子ども社会を歪めている。いじめる側の子どもたちもそれぞれが家庭に問題を抱えているようだ。

★ 新学期、児童生徒たちは不安定になりがちだ。少しでもリスクを回避できるように、学校にあっては教員の資質・力量の向上に努めてほしいものだ。そのためにも教員の「孤立」と「多忙」を何とかしなければいけないと思う。

コメント

吉行淳之介「薔薇販売人」

2022-08-26 19:52:34 | Weblog

★ 夏期講座修了。ドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」を観始める。面白い。想定通りの展開だが、展開が早く、退屈させない。随所に出てくる医学の専門用語も新鮮だ。

★ 話は変わって、今流行りの「きつねダンス」。チアリーダーのかわいい振付がいい。原曲を聴いていると、昔、あのねのねが歌っていた「ネコ・ニャンニャンニャン」を思い出した。

★ さて、今日は吉行淳之介さんの「原色の街・驟雨」(新潮文庫)から「薔薇販売人」を読んだ。

★ 23歳の主人公。会社勤めに退屈気味だ。ちょっと聞きかじった薔薇販売人の詐欺話。興味を持って、自分も試してみる。見ず知らずの家を訪ねて薔薇を売るのだが、ターゲットの家には不思議な夫婦が住んでいた。

★ 何度か足を運んでいるうちに、艶めかしい妻と怪しい関係に。谷崎潤一郎や江戸川乱歩的な趣向も感じる。

★ 最近、教員の不祥事が多いように感じる。京都では23歳の講師(担任もしている)が児童から集めた諸費を着服して懲戒免職。わずか3万円足らずで人生に汚点を残すなんてもったいない。そこまで想像力がはたらかなかったのか。それはそれとして、教員の資質が問われる。教員不足が深刻なようだ。

★ 近隣の中学校でも年輩のある国語教員の力量が問題になっている。授業が成立しないという。生徒から見てもお粗末な授業らしい。他の教員が授業を見に来ているというが、これからどうなるやら。

コメント

吉本ばなな「キムチの夢」

2022-08-25 15:52:18 | Weblog

★ 夏期講座残るは1日。終わったら、部屋の片づけをして、伸び放題の髪を切りに行きたい。警察庁の長官が辞職するというニュースを見て、59歳なのに老けてるなぁと思ったが、私も他人が見れば相当に老けているのかも知れない。気持ちだけは十代なのだが。

★ 今日は、吉本ばななさんの「とかげ」(新潮文庫)から「らせん」と「キムチの夢」を読んだ。どちらも男女の物語。

★ 「らせん」は男性の視点。二日酔いの主人公は彼女とデート。場所は閉店後の雑貨屋というから、ちょっと変わっている。真っ暗な店内で、彼女から相談を受ける。友人に頼まれて、ある講座を受けに行くという。その講座を受けると頭の中をゼロに戻すことができるという。どうもいかがわしいので、やめるように勧めるが、記憶がゼロになると思うと今までの思い出が色濃く蘇ってくる。

★ 「キムチの夢」は女性の視点。不倫の末、結婚を果たした女性。相手の女性から、平手打ちされながら。不倫する男はまた不倫する。心の片隅にはちょっとした不安。夫に電話があった。元妻からで、若い男性と再婚する報告だという。それを聞いて、安堵する主人公。

★ 夫が友人宅でもらったキムチ。冷蔵庫でアイスノンにニオイが移ったようだ。アイスノンを枕にして寝ると部屋中にキムチのニオイ。二人はそれぞれにおいしい夢を見る。「つぎに目ざめると朝日がまぶしくて、また新しい自分が始まる。新しい空気を吸って、見たこともない一日が生まれる」

★ 主人公の感動が伝わってくる。

コメント

横光利一「春は馬車に乗って」

2022-08-24 16:05:33 | Weblog

★ 近隣の小学校、中学校は29日から2学期となる。夏休みもあと数日。気がかりなのがここにきてコロナに感染したり、濃厚接触となる生徒が増えてきた。学校が再開されれば、多くのクラスターが発生するのではと心配だ。

★ 今日は横光利一さんの「機械・春は馬車に乗って」(新潮文庫)から「春は馬車に乗って」を読んだ。ファンタジー、ポエムのような題名だが、予想とは違った展開だった。

★ 作者自身の体験を元に書かれた私小説。新婚間もない夫婦(実際は妻が未成年のため入籍はしていない)。妻は結核を患い、海に近い家で養生をしている。夫は仕事に追われつつも、献身的に妻を看護している。

★ しかし、妻の病状は深刻で主治医からもそれを告げられる。

★ 繰り返される発作。身もだえする妻を気遣うが為すすべがない。発作がおさまると恐ろしいほど静かな時間が流れる。夫婦の会話がリアルだ。

★ 知人から贈られたスイトピー。「まァ、綺麗だわね」と妻。「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先に春を撒き撒きやって来たのさ」と夫。妻は花を抱きしめ、目を閉じる。

★ 美しい静かなエンディングだった。

コメント

吉田修一「春、バーニーズで」

2022-08-23 16:15:54 | Weblog

★ 夏期講座が残り3日。気温は35℃まで達しないが、残暑が体にキツイ。

★ 高校野球が終わり、「鎌倉の13人」では、仁田忠常が誠実であるがゆえに自害した。この仁田忠常を演じたのが高岸宏行さん。「やればできる」のフレーズは劇中でも披露された。高岸さん、甲子園に旋風を巻き起こした済美高校の野球部出身だ。校歌「やればできるは魔法の合い言葉」は今でも印象に残っている。(当時の小泉総理も引用していたなぁ)

★ 「鎌倉の13人」、高岸さんのほかに、阿野全成を演じた新納慎也さん、和田義盛を演じる横田栄司さん、政子の妹で全成の妻・実衣を演じる宮澤エマさんが印象的だ。

★ 「黄金の3年」と言われながら、政治家と旧統一教会との関係で岸田内閣が苦境に陥っている。岸田首相の目論見はあの事件で大きく揺れ動いているようだ。早くもポスト岸田に思いをめぐらすが、これといった人物も浮かばず、どうせ日本は官僚がしっかりしているから、誰が首相になろうとどうにかなるだろうと高を括る。

★ テロと異常気象に振り回された2022年の夏だった。

★ さて、今日は吉田修一さんの「春、バーニーズで」(文春文庫)から表題作を読んだ。

★ 息子(といっても実の息子ではない)の入園式に備えて、新宿へ買い物に出かけた筒井。そこで懐かしい人に出会う。10年前同棲していた人。実はその人は「オカマさん」だった。

★ 文庫の帯には「ふとしたはずみに、もうひとつの時間へ」とある。人生は選択の連続だ。瞬間ごとにパラレルな世界が分岐する。歴史に「タラレバ」はないけれど、違った選択肢を思い描いてしまうのは人間の習性なのかも知れない。

★ この作品は2006年にドラマ化されている。主人公は西島秀俊さん。若い。

コメント (2)

凪良ゆう「流浪の月」

2022-08-21 22:05:59 | Weblog

★ 東京では「死刑になりたい」と中学生が見知らぬ親子を刺したという。家族を殺害するための予行だったという供述も漏れてくる。最近、ときどき死刑が犯罪の抑止力ではなく、犯罪の動機になるケースを見る。どう対応すれば良いのやら。

★ ともかく中学生が死刑になることはない。彼女はそんなことを知らなかったのか。あるいは何らかの心の病を抱えているのか。余人には分かりかねる彼女なりの理屈があるのか。

★ 久しぶりに長編小説を読み終えた。凪良ゆうさんの「流浪の月」(創元文芸文庫)。

★ 両親がいなくなり居場所のない9歳の少女が、「ロリコン」の大学生と共同生活を始める。少女の名前は更紗。大学生は文(ふみ)という。「ロリコン」といっても、文は少女に性的な興味があるわけではなさそうだ。

★ ただ、そんな二人を世の中は見過ごしてくれない(当然と言えば当然だが)。文は少女を誘拐、監禁した異常性愛者として逮捕され、更紗はかわいそうな被害者として保護される。

★ それから10数年。一時期の喧騒は去ったが、ネット上の情報は生き続けている。更紗は被害に遭ったかわいそうな少女として今も扱われている。彼女自身、何度か恋愛を経験したが、その状況に安住することができないでいる。

★ そして運命は二人を再会させる。そこから物語は大きく動く。

★ 人は自分の枠内で物事を納得しようとする。「ロリコン」の大学生を異常性欲者、少女を被害者と位置付けてしまえば、何となくわかった気になる。実際は違っていても。更紗の葛藤もそこにある。彼女が泣き叫ぼうと誰もわかってはくれない。「洗脳」「マインドコントロール」「ストックホルム症候群」として片付けられてしまう。遂には叫ぶことをやめ、ただ下を向くことに。

★ 月日が過ぎても、世の中は相変わらず二人の事件を面白おかしく取り上げる、しかし、二人はもはやそれほど気にしてない様子。終盤、二人を理解する人物が登場する。良かったなぁと思った。

コメント

横山秀夫「深追い」

2022-08-20 18:38:39 | Weblog

★ 新型コロナの全数把握をやめるかもとか。確かにこれだけ増えてくると、かなりの潜在感染者が予想され、カウント自体にどれほど意味があるのかわからない。

★ 新聞に世界の国ごとの感染者数ランキングが載っている。韓国、日本がグイグイとランキングを上げている。日本人はこういうのが好きだ。

★ 全数把握をやめるとして、もはやカゼあるいは季節性のインフルエンザと同等に扱って良いものなのだろうか。素人には分からない。

★ さて、今日は横山秀夫さんの「深追い」(新潮文庫)から表題作を読んだ。横山さんの警察小説は短くても読みやすくて面白い。

★ 秋葉健治、32歳、巡査部長。交通機動隊で白バイに乗っていたが、不審な車を追跡中、当該車が事故を起こす。強盗犯が乗っていたので、表向きは適正な職務遂行だったが、警察組織の論理は違うようで、彼は白バイを下ろされ、所轄署の事故処理係に異動させられた。

★ 彼は鬱屈した日々を過ごしていたが、そんな時、ある事故の処理を担当する。男性が自転車で帰宅中、よろめいてダンプにはねられ死んでしまう。男性の遺留品の中にポケットベルと奥さんの写真があった。その奥さんというのが秋葉が高校生時代に思いを寄せていた女性だったのだのだ。

★ 夫が亡くなったあとも、ポケベルに奥さんから送られてくるメッセージ。不審に思った秋葉は彼女を訪れる。どうやら、職業倫理に反するが、過去の恋心も動き出したようだ。そして、彼女の手帳に残された「K」という人物にたどり着く。

★ そして、彼の「深追い」が新たな展開に。

★ 女性は現実的だが、男はいつまでも夢(あるいは妄想)を追い続けるようだ。片想いに至っては、一つ間違えればストーカーになる。気をつけたいものだ。

★ 話は変わって、教科書のデジタル化が進みそう。まずは英語から導入するようだが、塾でも対応策を考えねば。

 

コメント