じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

菅原潤「京都学派」

2021-02-27 23:35:50 | Weblog
★ 今年の京都大学、文系国語の2次試験は、西谷啓治「忘れ得ぬ言葉」から出題されていた。解く気はなかったが、読み始めるとなかなか面白かったので読み進めてしまった。

★ 著者が京都大学生時代の思い出を記したエッセイ。著者は熱を出し、腸チフスを疑われたが、そのとき面倒を見てくれた友人の言葉を「忘れ得ぬ言葉」として紹介していた。

★ ところで、「西谷啓治って誰」と思って調べてみると、西田哲学の後継者で「京大四天王」と呼ばれた人々の一人であることを知った。西田幾多郎から田辺元そして、西谷啓治、高坂正顕、高山岩男、鈴木成高と受け継がれた学派。それは「京都学派」と呼ばれる。

★ 京都に住んでいてもアカデミズムの世界は遠い。それも戦前の話となると尚更だ。そこで、菅原潤さんの「京都学派」(講談社現代新書)を読んだ。

★ 独創的な考察で世界的にも評価される西田哲学。その概略を説明しながら、西田の学説がどのように批判されながら受け継がれていったのか、特に西田の弟子を中心とした「京都学派」というグループを中心に解説されていた。

★ 先日読んだ小説の三木清も西田の弟子だが、本書によると、先輩教官の田辺元と感情的な対立があり、京都大学で職を得られなかったという。時代を背景に、「京都学派」にも左右そして中間と派閥めいたものがあったようだ。

★ 難しい哲学の解説はよくわからなかったが、当時の人間模様の一端を知ることができた。普遍性を追究すべき学者でも時勢には逆らえないのか、戦中の好戦的な発言が問題となり、「京大四天王」は戦後公職追放となる。

★ 左派の学者と思っていた三木清が、やがて首相となる近衛のブレインとして「東亜共同体」構想を掲げていたというのは、知ってはいたが驚きだった。三木の本音は知らないが、この構想は「大東亜共栄圏」へと発展し、日中戦争を正当化する方便となる。

★ 西谷はやがて追放が解除され京都大学に復職したという。この時期、なぜ西谷の文章が出題されたのか。そんなことを深読みしてしまう。

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1 コメント

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ビジネススクール哲学 (マルテンサイト変態)
2023-12-15 22:22:10
最近では久保田博士の材料物理数学再武装ってのが数理哲学として受けているようですね。人工知能のアルゴリズムについて書いてあるのだが、ここに出てくる関数接合論は、KPI競合モデルともよばれ経営学のセミナーなどでも出てくるらしい。要はストライベック曲線(工学分野、トライボロジー、摩擦学)から国富論の神の見えざる手(経済学)まで、分野横断的な全体的に関する方法で目からウロコの簡単な手法であるらしい。まずは博士のFacebookをのぞくといい。

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