白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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1月の情報会員解説

2018年01月23日 21時15分42秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
なお、過去の記事はこちらです。↓
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棋譜再生ソフトの使い方は第4回で詳しく解説しています。

今月は第22回LG杯準決勝 井山裕太九段対柯潔九段
おかげ杯国際新鋭囲碁対抗戦 村川大介八段対李映九九段
の2局を解説しました。
ここでは井山-柯戦の解説の一部をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
Kiin Editor」キャプチャー画面です。
白△とカカった場面ですが、この後意外な進行に・・・。





2図(実戦進行)
見たことの無い分かれになりました。
一体何を考えて打っているのか、わけが分からないという方も多いと思います。
それでは、私がどんな解説をしているのか見ていきましょう。





3図(実戦)
黒1「ここで井山九段、ごつい手を繰り出しました!
この手はアマの皆様には真似して欲しくありません(笑)。

「弱い石にはツケるな」と言います。
これはツケではなくカドですが、似たようなものです。
何故この手を打ったのでしょうか?」


一般的に、相手の石にくっ付けていくと、その石を強化してしまいます。
井山九段の狙いは何でしょうか?
参考図を4つ使って解説しています。





4図(参考図1)
参考図1つ目です。

「まず、黒1と受ける手もありますが、白2と開かれると落ち着いた局面になります。
井山九段はこの展開を望みませんでした。」


ということで、次に考えられる手は・・・。





5図(参考図2)
参考図2つ目です。

「黒1と挟んで戦いに持ち込みたかったのでしょう。
戦いになれば、右上黒の勢力が働きそうです。
ただ、挟めば必ずしも戦いになるとは限りません。」


この手も当然考えられる手ですが、白にかわされてしまう可能性もあります。
それが次の参考図です。





6図(参考図3)
参考図3つ目です。

「黒1に対しては、白2から白△を捨てて隅に治まってしまう打ち方もあります。
こうなると戦いが終わってしまうので、戦いに持ち込みたい井山九段としては嫌だったのでしょう。」


井山九段はこの進行もベストではない、あるいは好みではないと感じたのでしょう。
そこで思い描いたのが、次の参考図のような展開です。





7図(参考図4)
参考図4つ目です。

「そこで、実戦の黒1という発想が生まれます。
白2ならそこで黒3、5などと挟み、白6に対しては黒7から分断していく予定でしょう。
黒有利な戦いです。」


黒1、白2の交換は、いわゆる相手を重くする意味で打たれました。
白は変わり身が難しくなるのです。
これを踏まえた上で、実戦の進行を見てみましょう。





8図(実戦)
実戦の進行です。

白1「白も黒の狙いを察知し、変化しました!
レベルの高い攻防です。」
黒2「お互いの根拠の要点なので、ここは逃せません。」
白3「白Aと打ってしまうと捨てづらくなるので、何も打たずに右辺に侵入したのです。」


黒は下辺白を攻めたい、白は攻められるぐらいなら捨ててしまおう、ということでこのような進行になったのです。
こう考えると、簡単な理屈に感じますよね。
プロの碁を見る時は、なるべくシンプルに理解するに限ります。

では、具体的にこの打ち方を選んだのは何故なのか?
それは参考図を2つ使って解説しています。





9図(参考図1)
参考図1つ目です。

「単に白1だと、黒2と打たれて窮屈です。
白はこれを嫌って一本利かしました。」


プロは眼の作りやすさを非常に重視します。
石の強弱が大きく変わってくるからです。

ただ、白1を打ちっぱなしで大丈夫なのか、心配される方もいらっしゃるでしょう。
その答えを次の参考図で解説しています。





10図(参考図2)
参考図2つ目です。

「黒1とハネてくれば、構わず白2と進出します。
前図と違ってAの所に黒石が無いので、白にゆとりがあります。」


白1子はあくまで足止めであり、役割を果たした後は取られても良いのです。
プロが多用する考え方ですね。





11図(実戦)

実戦に戻ります。

「生きている右下隅から地を増やしても仕方がありません。
中央への進出を止めました。」


黒Aと打つ手が白の注文であることは前図で示しました。
では、黒Bはどうなのか?
それは次の参考図で示しています。





12図(参考図)
前図黒1で、本図黒1と打った場合です。

「黒1も良くありません。
右辺は白Aが残っており、一種のスソアキなのです。
地にならないところを大事にするべきではありません。」


スソアキを囲おうとしてしまう方は少なくありません。
穴の空いたバケツに水を汲んでいるようなものですね。





13図(実戦)
実戦に戻ります。

白1「この滑りで、白はほぼ安定しましたが・・・。」
黒2「下辺一帯を大きく構えました。
一番将来性のある場所なのです。」


黒はスソアキの右辺を囲うのではなく、将来性のある下辺を広げる作戦を採りました。
ここまでの折衝で、お互いに理に適った打ち方をしていることがご理解頂けたのではないでしょうか。


なお、来月は
2017年12月21日 第66期王座戦予選A 小林光一九段山城宏九段
2017年12月7日 第43期新人王戦予選 芝野龍之介初段稲葉貴宇三段

の2局を解説する予定です。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!

※誤って3月の予定を書いていました。
2月は
2017年11月2日 第43期棋聖戦ファーストトーナメント 杉内雅男九段小山栄美六段
2017年9月14日 第43期碁聖戦予選A 蘇耀国九段依田紀基九段
の2局を解説しています。
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