白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

棋士紹介第10回・藤井浩貴初段

2019年12月27日 23時59分59秒 | 棋士紹介

<本日の一言>
今年の最多勝利と最多対局は芝野虎丸名人(20)、最高勝率は一力遼八段(22)でした。
この2人は本当に大活躍でしたね。
今年は井山三冠が頂点を守りましたが、来年はどうなるでしょうか。



皆様こんばんは。
本日は久しぶりの棋士紹介シリーズです。

<藤井浩貴初段(公式プロフィール)>
平成14年(2002年)7月25日生まれの17歳です。
今年の夏季採用で、既に対局を始めています(正式な採用は来年4月)。

彼とは全く面識が無く、入段までは碁も見たことがありませんでしたが、注目していました。
下に彼の2018年4月から2019年6月までの院生での順位(冬季採用試験時を除く)を記します。

2・3・1・2・2・1・2・1・2・1・2・1・2

冬季棋士採用試験で8位と崩れたのが不思議なぐらいの安定した成績ですね。
いくら強くても、なかなかここまでの成績は出ません。
堅実で隙の無い、優等生的な碁を想像していました。
それは間違ってはいないかもしれませんが、しかし私のイメージとは大分違ったようです。
それでは、木曜日に行われた名人戦予選の井上国夫八段(71)との対局をご紹介しましょう。



1図(実戦)
井上八段の黒番です。
ここで藤井初段、白1の肩衝き!
そして、黒2に対して白3の押さえ込み!

この2手にはびっくりしました。
ミニ中国流が流行ったとき、似たような手が打たれていた気もしますが、それにしても驚きですね。
こういうことをすると白の形が悪くなりそう、という先入観があります。

 


2図(実戦)
しかしこうなってみると、左上白の構えがなかなか立派に見えます。
色々な打ち方があるものですね。


3図(実戦)
ここで白番です。
目に付く所は白AとBですね。
右辺が大きいか上辺が大きいかという問題ですが、藤井初段は右辺が大きいとみました。
それ自体は普通の感覚だと思いますが・・・。




4図(実戦)
白1と、5線にケイマ!
これにまた驚かされました。
黒2を待って、そこでようやく白3とハネています。

おそらく、いきなり白3とハネるのは黒Aと切られることが嫌だったのでしょう。
やはり堅実派のようですが、それでいて独創的でもあります。
ここまでの打ち方を見て、本因坊秀和の名前が浮かびました。
どことなく似た雰囲気を感じます。
なお、この後は白が着実にリードを維持・拡大し、単手数で相手を投了に追い込みました。


囲碁界の藤井も素晴らしい才能の持ち主ですね。
これからどんな成績を残していくのでしょうか。



☆各所で指導碁を行っています。皆様のお越しをお待ちしています。

日本棋院有楽町囲碁センター・・・JR有楽町駅前の交通会館9Fです。毎月1回、指導碁当番を担当しています。今後は10月11日(金)、11月15日(金)、12月13日(金)に指導碁を行います。

永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。毎月第2土曜日に講座と指導碁を行っています。

白石囲碁教室・・・五反田駅徒歩4分です。指導碁や個人レッスンを行っています。

New!上達の約束・・・上達の約束は、お客様の都合に合った会場を選べる回数制のレッスンを行っています。私の担当する五反田教室が新たに始まりました。毎週水曜、19:00~21:30です。


☆「やさしく語る」シリーズ、好評発売中!
やさしく語る 碁の本質」 「やさしく語る 布石の原則」 「やさしく語る 碁の大局観」 ・・・現在、「やさしく語る」シリーズを3冊出版しています。

※4作目「やさしく語る 棋譜並べ上達法」が、8月13日に発売されました!

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上野愛咲美まとめ

2019年09月14日 23時59分59秒 | 棋士紹介

<本日の一言>
本日は武蔵小杉の永代塾囲碁サロンにて指導碁を行いました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日はビッグニュースがありました。
上野愛咲美二段、竜星戦決勝進出!!!!

囲碁は性別による能力差がほとんど無いゲームですが、環境などに差があり、現実には女流棋士がリーグ戦や本戦に入ることは困難でした。
しかし、少しずつ差は詰まってきており、いずれ誰かが壁を破ることは確信していましたが・・・。
それがまさか17歳の上野二段とは思いませんでした。
年齢を考えれば、全盛期に達するのは5年~10年先だと思いますが、物凄い勢いですね。

本戦トーナメントで勝った相手は、高尾紳路九段、村川大介十段、許家元八段(前碁聖)・・・。
文句の付けようがありませんね。
決勝戦の相手は一力遼竜星-鈴木伸二七段戦の勝者ということで、これまた大変な難敵ですが、今の上野二段の勢いなら十分チャンスはあるでしょう。
9/16(月・祝)の準決勝、9/23(月・祝)の決勝は囲碁プレミアム囲碁・将棋チャンネルで生中継されますので、ぜひご覧ください!

ところで、これまで当ブログでは上野愛咲美二段を何度もご紹介してきました。
この機会に、それらの記事をまとめておきたいと思います。



2016年9月25日 「日本勢・大健闘!」・・・プロ1年目、14歳の上野初段が宋容慧五段の大石を撲殺・・・。この頃から巨大ハンマーを振り回していました。

2017年01月13日「上野ー桑原戦(幽玄の間棋譜紹介)」・・・桑原陽子六段との大熱戦です。

2017年7月2日「上野初段」・・・上野初段が、幽玄の間でDeepZenGoに勝った碁です。

2017年11月1日「11月の情報会員向け解説」・・・90歳の杉内寿子八段と15歳の上野初段の75歳差対決です。

2017年12月11日「女流棋聖戦挑戦者決定戦&AlphaGo Teach」・・・奥田あや三段との対局を、1図だけですがご紹介しました。初タイトルにつながった一局です。

2018年1月20日「女流棋聖戦」・・・謝依旻女流棋聖との挑戦手合、第1局です。

2018年1月29日「上野二段、女流棋聖獲得!」・・・上野二段の強さを分析しました。

2018年4月30日「碁清源杯」・・・ゼイ廼偉九段に快勝した一局です。ゼイ九段は韓国の一般棋戦での優勝経験がありますが、上野二段は2人目になれるでしょうか?

2018年5月12日「日本、中国に勝利!」・・・天台山杯での李赫五段との対局です。ハンマーを振り続けました。

2018年6月5日「黄竜士杯第2ステージ開幕」・・・呉侑珍五段との対局です。敗れはしましたが、ハンマーはぶんぶん振り回していました。

2018年7月13日「扇興杯準決勝」・・・牛栄子二段に敗れた一局です。敗因はハンマーの振り不足でしょうか。

2018年7月20日「ナショナルチーム合宿」・・・六浦雄太七段との対局です。度胸満点の捌きを見せてくれました。

2018年7月22日「上野-結城戦」・・・結城聡九段との対局です。ハンマーが空振りすることもあります。

2018年7月23日「上野-六浦戦その2」・・・本記事は六浦七段が主役です。

2018年8月9日「本日の対局」・・・私と上野二段の対局です。悲しい思い出ができました・・・。

2018年9月8日「女流本因坊戦、挑戦者決定」・・・藤沢里菜女流立葵杯との決戦です。ハンマーでの殴り合いでした。

2018年12月6日「ゾーンプレス」・・・本記事は王銘エン九段が主役です。

2019年1月18日「若さ爆発」・・・藤沢里菜女流三冠との対局です。異次元の感性を示しました。

2019年1月28日「女流棋聖戦第2局」・・・藤沢里菜女流三冠に強烈なハンマーが襲い掛かりました。

2019年2月10日「棋士紹介第5回・上野愛咲美女流棋聖」・・・上野女流棋聖の受けの強さをご紹介しました。

2019年2月24日「上野愛咲美二段-黒嘉嘉七段」・・・上野二段の恐ろしさをご紹介しました。

2019年6月16日「女流立葵杯第2局」・・・藤沢里菜女流立葵杯との殴り合いです。

2019年7月12日「謝依旻-上野愛咲美」・・・謝依旻六段との力比べです。

2019年8月2日「李沂修-上野愛咲美」・・・上野二段の鮮やかな捌き! からの・・・。


こうしてみると、かなりの回数登場していることが分かりますね。
活躍しているということでもありますし、魅力的な碁を打っているということでもあるでしょう。



☆各所で指導碁を行っています。皆様のお越しをお待ちしています。

日本棋院有楽町囲碁センター
・・・JR有楽町駅前の交通会館9Fです。毎月1回、指導碁当番を担当しています。今後は10月11日(金)、11月15日(金)、12月13日(金)に指導碁を行います。

永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。毎月第2土曜日に講座と指導碁を行っています。

白石囲碁教室・・・五反田駅徒歩4分です。指導碁や個人レッスンを行っています。

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棋士紹介第9回・上野梨紗初段

2019年08月01日 23時59分59秒 | 棋士紹介

<本日の一言>
本日、名人戦リーグの最終戦が行われました。
日本棋院ネット対局幽玄の間でも全4局が中継されています。
結果は河野臨九段と芝野虎丸七段が6勝2敗で並び、プレーオフとなりました。
張栩名人に挑戦するのはどちらでしょうか?



皆様こんばんは。
本日は棋士紹介シリーズです。

<上野梨紗初段(公式プロフィール)>

平成18年(2006年)6月24日生まれの13歳、中学1年生です。
上野愛咲美女流棋聖の妹ですね。
私があれこれ印象を語るより、映像が残っているのでそちらをご覧頂いた方が良いでしょう。

入段会見→https://www.youtube.com/watch?v=3Irbp-bkp_E
テレビ取材(TOKYO MX)→https://s.mxtv.jp/mxnews/kiji.php?date=46513746

一言で言えば、大物ということでしょう(笑)。
勝負に勝っても負けても笑顔を見せています。
対局姿勢や碁の内容にもその性格が表れているように思います。
同期入段の仲邑菫初段が、対局中は別人のように厳しい顔を見せる一方、梨紗初段は普段とさほど変わらない印象です。

さて、梨紗初段は2014年10月に院生になりました。
Eクラスの最下位、院生全体の順位で言えば60位タイからのスタートです。
ちなみに、当時まだ8歳です。
最近は院生の低年齢化が進んでいますが、それにしても早いですね。
やはり姉が先に入っていることで、安心できるのでしょう。
囲碁界は弟や妹の方が、環境面で有利になることが多いのです。
ちなみに、当時愛咲美女流棋聖は12歳で院生7位でした。

・・・と書いていて、ふと疑問に思ったので愛咲美女流棋聖が院生に入った年齢を調べてみましたが・・・。
なんと7歳でした。
姉妹揃ってプロ一直線だったのですね。

さて、上野初段の院生の順位は以下のように推移しました。

2014年10月・・・60位
2015年10月・・・43位
2016年10月・・・34位
2017年10月・・・18位

そして、この後は
19位、9位、13位、15位、16位、15位、16位、15位、15位、14位、12位、13位、13位
と推移しています。
最後の年の安定感、凄いですね(笑)。
ほとんどクラスが変わりませんが、じわじわと順位を上げています。
院生の順位は女子の中で一番ではありませんでしたが、女流棋士採用試験は見事に1位で突破しました。
本番で力を出しきれることは大きな強みです。

さて、本日は幽玄の間で梨紗初段の棋譜が中継されていたのでご紹介しましょう。
十段戦予選、相手は風間隼三段です。

1図(実戦)
梨紗初段の黒番です。
AI流の進行ですね。
愛咲美初段もAIを活用していますが、5歳年下の梨紗初段は、なおさらAI流に抵抗感が薄いでしょうね。






2図(実戦)
白1のカカリに対して、黒2、4と戦いを挑みました。
積極的な打ち回しです。
どんどん前に出て行く碁、という師匠の評がありましたが、まさにその通りですね。



3図(実戦)
白1、3に対し、流れだけ見れば黒Aの伸びですが、黒4のコスミツケました。
おそらく白Bの下がりなら黒Cと飛ぶということで、よくある手ではありますが、このタイミングで打つとは冷静ですね。
戦いの碁ですが、勢い任せではなく慎重に判断していくタイプのようです。



4図(実戦)
黒3!
強烈な手筋があったものですね。
白の見落としでしょう。

ただ、その前の黒1は打たない方が良さそうで、それなら逆転していたかもしれませんね。
結果は白の半目勝ちでした。


惜しくも及びませんでしたが、実力者をぎりぎりのところまで追い詰めました。
上野梨紗初段の今後の活躍が楽しみですね。




☆各所で指導碁を行っています。皆様のお越しをお待ちしています。

日本棋院有楽町囲碁センター・・・JR有楽町駅前の交通会館9Fです。毎月1回、指導碁当番を担当しています。今後は7月12日(金)、8月5日(月)、9月2日(月)に指導碁を行います。

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棋士紹介第8回・福岡航太朗初段 

2019年07月25日 23時59分59秒 | 棋士紹介

<本日の一言>
本日は横浜市栄区の本郷小学校にて入門教室を行いました。
1年生から6年生まで40人ぐらいの参加がありましたが、大勢のスタッフの皆さんのお手伝いのおかげで、行き届いた指導を行うことができました。
栄区では入門者や初級者に優しい環境ができていて素晴らしいですね。

ところで、参加者の子供とのやり取りでこんな場面がありました。
子「先生は何歳なの?」
私「そうだねぇ、何歳だと思う?」
子「えーっと・・・65歳!」



皆様こんばんは。
本日は久々の棋士紹介シリーズです。

<福岡航太朗初段(公式プロフィール)>

平成17年(2005年)12月22日生まれの13歳、中学2年生です。
小柄で童顔の少年ですね。
しかし、碁打ちとしては非常に大人ではないでしょうか。
彼には小学生低学年の頃から注目していましたが、当時から風格すら漂う碁を打っていました。
棋風は仲邑菫初段と近いところもある気がしますが、気合で押す印象の仲邑初段と比べ、福岡初段は終始冷静な打ち回しが持ち味ではないでしょうか。
韓国に留学して囲碁漬けの生活を送った時期もあり、さらに力を付けたようです。

福岡初段は2018年の4月に院生になりました。
Eクラスの一番下、全体の順位で言えば52位からのスタートです。
そこから驚異的な成績を残していきます。
5月には43位、6月には29位、7月には16位と毎月順位を上げ、8月には最短でAクラスに到達、順位は8位となりました。
そして、翌9月には5位、10月にはなんと1位になりました。
さらに、そのまま冬季棋士採用試験を迎え、2位に入って入段を果たしています。
凄まじい速度で駆け上がったものですが、院生に入った時点で既に十分な実力があったということでしょう。

さて、本日は日本棋院ネット対局幽玄の間にて福岡初段の棋譜が中継されていたので、ご紹介してみます。
福岡初段の黒番、相手は甲田明子四段です。

 

1図(テーマ図)
黒1、3は、地の増減だけ見ても大きいところです。
しかし、目先のことだけでなく、将来のストーリーまで思い描いているのが福岡初段です。



2図(実戦)
白1などと打ってくることは予想できますから、黒2の打ち込みから黒10までも予定通りの打ち回しでしょう。
左辺の白模様を荒らしていますが、それだけではありません。



3図(実戦)
白1と左辺黒に圧力をかけましたが、黒2で黒△を助けました。
白の眼を奪って、逆に攻めを狙っています。
テーマ図の時点で、既にこのような進行のイメージを持っていたのでしょう。



4図(実戦)
黒1、3、5の様子見も、目的意識から生まれる着想です。
なんとかして白の構えに弱点を作り、黒9のツケコシを成立させようというのですね。


このように、13歳にして非常に完成度の高い碁を打っています。
井山裕太四冠や一力遼八段もそうでしたね。
福岡初段の今後の活躍が楽しみです。




☆各所で指導碁を行っています。皆様のお越しをお待ちしています。

日本棋院有楽町囲碁センター・・・JR有楽町駅前の交通会館9Fです。毎月1回、指導碁当番を担当しています。今後は7月12日(金)、8月5日(月)、9月2日(月)に指導碁を行います。

永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。毎月第2土曜日に講座と指導碁を行っています。

白石囲碁教室・・・五反田駅徒歩4分です。指導碁や個人レッスンを行っています。

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棋士紹介第7回・酒井佑規初段

2019年02月21日 21時31分43秒 | 棋士紹介
<本日の一言>
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
日本棋院ネット対局幽玄の間では多くの対局が中継されました。
帰宅後真っ先に確認したのは杉内寿子八段の対局ですが、本日の結果は残念でしたね。
内容の派手さで言えば、加藤祐輝六段と彦坂直人九段の対局が断トツでした。
ちなみに、私の対局も中継されていましたが・・・。
後半は緩みすぎ、大ポカもありと、ちょっとだらしない内容でしたね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋士紹介シリーズの第7回です。

<酒井佑規初段(公式プロフィール)>

平成16年(2004年)4月14日生まれの14歳、朴訥な印象を受ける中学2年生です。
しかし、若い・・・。
私が入段した時、彼は1歳ぐらいですよ。

今まで、杉内八段以外は棋道賞受賞者から選んできましたが、今回はネタができたので臨時でご紹介することにしました。
酒井初段の対局が終わった後、ベテラン棋士たちが彼を取り囲んで碁を見せてもらっていたのですが、私もその輪の中にいたのです。
非常に若い棋士ということで注目していたこともありますが、なんと言っても碁の内容に驚きました。





1図(テーマ図)
酒井初段の黒番、相手は芝野龍之介二段です。
なお、うろ覚えなので手順などに間違いがある可能性もありますが、その点はご容赦ください。

さて、昼休みに碁を見に行ったらこんな盤面でした。
この黒の構えは、一体???
?マークが沢山浮かびましたが、再開時間が近付いたので自分の対局に戻りました。





2図(実戦)
序盤のこの場面、黒×が弱いのでまず黒AやBと逃げる手が思い浮かびます。
あるいは、黒Cと攻撃から入り、白△との競り合いに持ち込みたくなる人もいるでしょう。
しかし、酒井初段の選択はなんと黒D!





3図(実戦)
左下の黒2子を捨て、中央に勢力を築く大作戦でした。
この思い切りの良さにはビックリです
左辺から下辺にかけての白地は、ざっと85目ぐらいありそうに見えますからね・・・。

そしてこの黒△です。
辺の星から上にコスミとは、見たことのない構えですが・・・。
この手には、どうやら凄い決意が秘められていたようです。





4図(実戦)
白が右辺に侵入したのは当然です。
白7までと進んだ場面がテーマ図でした。
皆様は、現在どんな状況になっていると判断されますか?
「白が右辺で治まり、これから黒が中央をどれだけまとめられるかが勝負」といったところではないでしょうか。





5図(実戦)
そう思った方は大外れです。
昼食休憩時の私もですが・・・(笑)。

実戦は、なんと右辺白を皆殺しに行きました!
確かに部分的に2眼はありませんが、外側が穴だらけなので、こんな石が死ぬとはとても思えません。
おそらく、芝野二段もそう思っていたでしょう。
しかし、酒井初段は全力で白を追い詰め、ついに仕留めてしまいました。
しかも残り1分の秒読みに急き立てられながらです。
恐ろしい腕力ですね。

正直なところ、結果を知っていても酒井初段の作戦は無茶に思えます(笑)。
しかし、昨日も書いたように若いうちはどんどん無茶をして良いと思います。

ところで、かつて加藤正夫名誉王座と言う大棋士がいたのですが・・・。
加藤名誉王座が22歳六段の時、高川秀格九段の大石を仕留めたエピソードがあります。
局後の高川九段は、「こんな石が取られるのかねえ」と加藤六段の腕力に呆れたそうです。
酒井初段は、第二の加藤正夫になれる素質を秘めているのかもしれませんね。
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