白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

幽玄の間シリーズその7 権孝珍ー仲邑菫(三星杯)

2022年10月28日 23時44分09秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
明日10/29(土)と30(日)に第5回SGW杯中庸戦本戦が行われます。
実力者ばかりですが、誰が優勝するでしょうか?
ぜひ贔屓の棋士を応援して頂ければと思います。

さて、本日は幽玄の間で中継された、三星火災杯本戦1回戦の権孝珍四段(黒)と仲邑菫三段の対局をご紹介します。
仲邑三段は呉侑珍九段と同じくワイルドカードでの出場です。

1図(テーマ図)
黒△とツケられた場面です。
この手は形だけ見ると無い手ですが、Aの弱点周辺の利き筋を意識したものです。
例えば、白B、黒C、白D、黒E、白Fと脱出するのは、黒Aと出られて白2子を取られます。
白としては閉じ込められたくないのですが、どうしたものでしょうか?



2図(実戦)
実戦は白1~5!
利き筋を見られていると縮こまらざるを得ないことが多いですが、実戦は手筋で反撃しました。
問題の黒6には、黒×を捨てて白7と取れば良いという柔軟な発想です。
前図で示した手順より数段白の姿が良く、白優勢が確立されました。



3図(実戦)
しかし、白1から戦ったのは大変な勇み足でした。
黒にはAやBの断点がありますが、白も危うい姿になっています。
おそらく何か錯覚があったのでしょうが、せっかくの優勢を手放すことになりました。

積極的な姿勢は棋力向上に欠かせませんが、目先では勝率を落とす要因になることもあります。
多くの若い棋士や棋士志望者の悩みどころではないでしょうか。



4図(実戦)
黒×と白×の攻め合いはセキになりました。
先手で黒△に回り、はっきり黒優勢です。
しかし、今の仲邑三段は非常に粘り強くなっています。
我慢してチャンスを待ち、黒のミスを捉えて見事逆転勝利を収めました!

男女混合の国際棋戦で日本の女性棋士が勝ったのは、これが初めてのことです。
仲邑三段が、またしても歴史に名を刻みました。



永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。2020年7月から共同経営者になりました。

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幽玄の間シリーズその6 呉侑珍-一力遼(三星杯)

2022年10月27日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、三星火災杯本戦1回戦の呉侑珍九段(黒)と一力遼九段の対局をご紹介します。

1図(テーマ図)
黒△とツケて利かしにきた場面です。
ここは白A、黒B、白Cと受けるのが形です。
黒D、白E、黒Fなどと進んで、黒のサバキに苦労は無さそうですが、ほとんどのプロは仕方ないと我慢するでしょう。



2図(実戦)
しかし、実戦は白1、3!
白は3か所に断点があるうえ、黒AやBとハネられる弱みもあります。
何か1つでも見落としがあれば簡単に負けてしまう、白にとって極めて「怖い」打ち方ですが、自分の読みを信じて最強手を繰り出しましたね。



3図(実戦)
黒1に対しては、白2ともう1手かけて大丈夫と読んでいます。
続いて黒Aには白B、黒C、白D、黒E、白Fとなり、攻め合いは白有利です。



4図(実戦)
左上の方も頑張りきりました。
この後黒Aには白B、黒C、白Dで大丈夫です。
結局、利かしにきた黒を丸飲みしてしまいました。

黒が押し気味の形勢だったと思いますが、力づくでひっくり返しましたね。
冷静な一力九段ですが、ここぞというときの迫力は凄いものがあります。



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名人戦第6局封じ手予想

2022年10月24日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

皆様こんばんは。
本日は名人戦第6局の1日目が行われました。
芝野虎丸挑戦者が押していますが、井山裕太挑戦者も踏みとどまっています。
対局の模様については、ネット対局「幽玄の間」や朝日新聞の「囲碁将棋TV」などをご覧ください。

1図(打ち掛け局面)
上辺で面白い駆け引きが繰り広げられました。
黒△と打ったところで打ち掛けとなっています。
次の白の手が封じ手です。

白×はまだ死にきっていません。
白A、黒B、白C、黒Dと進めばコウに持ち込むことができます。
ただし、負けた場合のダメージも大きく、仕掛けて良いものか迷うところです。



2図(封じ手予想)
封じ手は白△と予想します。
上辺白4子は放棄して、中央の勢力を大事にする手です。
芝野挑戦者らしい、スケールの大きな打ち方ではないでしょうか。
毎回同じようなことを言っている気もしますが(笑)。



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幽玄の間シリーズその5 崔精-上野愛咲美

2022年10月18日 23時25分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
天元戦第2局は伊田篤史挑戦者が勝ちましたね。
内容としては、またしても見たことの無いような展開だったと思います。
既存の枠にとらわれない対局は面白いですね。

そして、昨日は杉内寿子八段が勝ちましたね!
95歳7か月での公式戦勝利ということで、自身の持つ女性棋士の記録を更新しました。
今後もお元気に活躍されることを願っています。
なお、棋士全体での記録は故・杉内雅男九段の96歳10か月とのことです。
嘘みたいな本当の話・・・。



皆様こんばんは。
本日は湖盤杯ソウル新聞世界女子囲碁覇王戦、崔精九段(黒)と上野愛咲美四段の対局をご紹介します。
なお、この対局の模様はyoutubeの日本棋院囲碁チャンネル幽玄の間にて中継されました。

1図(実戦)
白×をあっさり捨ててしまいました。
そして、先手を取って白8の仕掛けに向かいました。
上野四段らしい積極策ですね。



2図(実戦)
白1、5はぜひとも打ちたかったところでしょう。
黒×に詰め寄っていきました。
なんと言っても、攻めの強さは上野四段最大の持ち味だと思います。



3図(実戦)
そして、白△のツケ!
力強いモタレ攻めが飛んでました。
本当の狙いは上辺黒です。



4図(実戦)
白6まで、あっという間に黒が薄くなりました。
白優勢は明らかです。
上野四段、見事に韓国最強棋士を破りました。
日本は上野四段のみ、中国はあと3人残っていますが、明日以降も頑張って欲しいですね。



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武蔵小杉最強リーグ

2022年10月13日 23時59分59秒 | 永代塾囲碁サロン

皆様こんばんは。
名人戦第5局は、井山裕太名人が勝って踏み止まりました。
1日目でかなり苦しくなったかと思いましたが、やはり井山名人の追い込みは迫力がありますね。
鋭い手筋の連発など、流石としか言いようがありません。



さて、本日は永代塾囲碁サロンで毎月行われている、武蔵小杉最強リーグについてご紹介したいと思います。

第4期は1リーグ制で開催しました。
途中で休みが入りましたが、9月で終了しています。
詳細は下記の通りです。

開催日:毎月第4日曜日
スケジュール:1局目 13:10~15:10
       2局目 15:20~17:20
       白石勇一の大盤解説 17:30~
会費:1期5000円(サロン利用料は別途必要)
   白石勇一の指導碁料を含む
手合割:点数制(1点差1目)
    持ち点は成績により変動あり
ハンデの上限:3子白9目半コミ出しまで
持ち時間:各60分、秒読み無し

点数制のリーグ戦となっており、勝ち越し、負け越し1つにつき1点変動します。
私は点数変動が無く、賞にも入りませんが、インフレ防止装置も兼ねていることもあり、真剣に対局しています(笑)。
来期は2リーグ制になる可能性もありますが、その場合は両方のリーグに入り、2面打ちで対局します。
なお、欠席される場合は事前にお知らせ頂ければ別の日に対局して頂くことも可能です。

来期は私を除いて9名の方の参加が確定しています。
新たに1名でも増えれば、2リーグ制で開催する予定です。
枠には余裕がありますので、ぜひご参加頂ければと思います。
お申込み・お問い合わせのメールはgotanda@igoshiraishi.comへよろしくお願いいたします。

さて、それでは今回は武蔵小杉最強リーグに現れた場面をご紹介したいと思います。

1図(テーマ図)
白番です。
大きな戦いが終わって寄せに入っている状況です。
右辺も気になるところですが、それよりも左辺が大きそうです。
どのように寄せるのが最善でしょうか?
黒×がやや薄いことに目を付けましょう。



2図(正解)
白△の置きが最大限の踏み込みです。
2間開きへの置きは、実戦でしばしば現れる手筋ですね。
本局では周囲に白石が多いため成立します。



3図(正解)
黒1、3と受けるぐらいですが、白4まで目一杯の形を作ることができました。
また、黒の眼が薄くなったため、次に白A、黒B、白Cというイジメが生じています。



4図(変化図)
白1に対して黒2と出るのは、白3と分断されて困ります。
白9まで、攻め合い白勝ちです。

寄せではこの手何目という、目数を数える技術も重要です。
しかし、最も重要なことは最善の形を目指すための技術や知識なのです。



永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。2020年7月から共同経営者になりました。

☆「やさしく語る」シリーズ、好評発売中!
現在、「やさしく語る 碁の本質」 「やさしく語る 布石の原則」 「やさしく語る 碁の大局観」 「やさしく語る 棋譜並べ上達法」の4冊を出版しています。
5冊目も出ました!

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