白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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棋聖戦第1局感想

2023年01月13日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第1局の2日目が行われました。
対局の模様は読売新聞や日本棋院ネット対局「幽玄の間」、Youtubeの日本棋院囲碁チャンネル等でご覧ください。

1図(封じ手予想)
まずは私の封じ手予想を再掲します。
パっと見は白Aが良い形で、攻撃的にいくなら白Bもありそう、しかし結論は白Cとなりました。
さて、結果はどうだったかと言うと・・・。



2図(封じ手)
正解はDの白△でした!
これは完全に予想外でしたね・・・。
石の形としては普通ですが、左上黒全体に対する攻撃力に乏しいため、一瞬で候補から外してしまいました。
白×も同様です。



3図(実戦)
黒1と換わってから、候補に入っていた白2と打ちました。
後に白Aと打てば黒×を取ることはできますが、左上の強い白から地を増やすだけの手なので価値が低いです。
しかし、一力遼棋聖はもっと深いところを見ていました。



4図(参考図)
左下には、黒2子を黒1~5と逃げ出す狙いが残っています。
しかし、Aの断点が残っていれば、決行が難しくなるというわけですね。
これは凄いと思いました。
と言っても、この読みが凄いというわけではありません。

まずこの図を改めて見て頂くと、白にはほとんど弱い石が無いと感じられると思います。
左右に分かれた白の左側だけは死にが残っていますが、白Bと打てばすぐに生きられます。
一方、逃げ出した黒には眼がありません。
つまり、もともと黒1と逃げられても白が有利な戦いなのです。
リスクと言えば少し地が減ることだけですね。

大きなリスクに備えておくことは、プロとしてごく当たり前のことです。
仮に、黒1と逃げられると白が攻められてしまうような状況であれば、誰しもしっかりと対策を用意しておきます。
ですから、封じ手のような手も当たり前に打つことができるでしょう。

ところが、これが小さなリスクとなると、つい軽視してしまいがちです。
しかし、一力棋聖にはそれが当てはまりません。
小さいリスクと言っても、摘んでおけば僅かでも勝率が上がるということで、そのための努力を惜しみませんでした。
その最善を尽くす姿勢は見習わなければいけませんね。


結果は一力棋聖の中押し勝ちとなりました。
比較的楽な気持ちで打てると言われる第1局ですが、思ったより落ち着いた展開だったと感じました。
やはり芝野虎丸挑戦者は、初めて名人になった頃に比べて大分棋風が変わったようですね。
シリーズ全体としても、じっくりした勝負が多くなるのではないでしょうか。



永代塾囲碁サロン・・・武蔵小杉駅徒歩5分です。2020年7月から共同経営者になりました。

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