白石勇一の囲碁日記

ほぼ毎日更新、囲碁棋士白石勇一六段のブログです。
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幽玄の間その3

2016年07月31日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
芸の無い事に本日も幽玄の間中継棋譜のご紹介です。
なお、紹介であって解説ではありません。
解説というのはかなりの労力を伴います。
プロ同士、あるいはアマ同士でも大会の碁などは全身全霊をかけての戦いです。
それをぱっと見ただけでこれは良い、これは悪いとは軽々しく言うわけにはいきません。
その必要がある時には自分なりにしっかりと裏を取るように心がけています。
そのあたりについては、別の機会に詳しく記そうと思います。



さて、本日取り上げるのは河野臨九段(黒)対桂篤五段戦です。
何故この対局を選んだかと言えば、桂五段があまりにも自由に打っているからです(笑)
勝たなければならないプロがこんな打ち方が出来るのですから、アマの方にも自由な発想で打って頂きたいですね。

さて、局面は黒△と隅を戸締まりした所です。
白1子が弱くなったので何かこの周辺に打たなければいけません。
自由と言っても、やはり逃せない所はあります。
着点としては堂々の白A、1子を捨てる事も視野に入れてのBやCなども考えられます。





ところが、実戦は何と白1以下と見た事もない打ち方!
発想としては左下の黒が強いので、そこへさらに手をかけさせている間に左辺へ先行しようという事ですね。
ただし、この形は皆様は真似されない方が良いでしょう(笑)
状況に応じて手を選べる、プロならではの趣向とご理解ください。





白1は黒2か黒Aか、黒の受け方を聞く常套手段です。
しかし白3とは思い切った手です。
私もこういう手は指導碁ではよく打ちます(笑)
しかし、盤の向こうに座っているのは河野臨九段





さらに、白△と空き三角に打ちました。
次にAとBを見合いにして強引に切断しようという手です。
こういう形の悪い手はアマの皆様には人気ですが、プロはあまり好みません。
しかし時には良い手になる事があり、江戸時代の名人、本因坊丈和の有名な対局にも出現します。





対する河野九段の黒1からのサバキは、高段者にはとても参考になるでしょう。
AやBが先手ですが、どちらも決めずに黒11と打つのがポイントです。





白は中央で好形を得て、黒は左辺で白2子を取り込む鮮やかな分かれになりました。





黒は上辺を生きましたが、そこで白1が狙いの一着です。
白△と黒△を交換しておいたのが生きて来ました。
後から白△と打つのでは、黒Aと受けられて効果が挙がらない所です。





白1から黒地を白地にして、大きなエグリです。
場合によっては外側の黒を攻めようという狙いさえあります。
左辺の白数子がどうなるか判断が難しいですが、少なくとも見た目は白悪くないように見えます。
最後は黒2目半勝ちでしたが、白にもチャンスがあったのではないでしょうか。


本局は私の発想に全く無い手が多く出て来ましたが、それでも河野九段を相手に勝負の形になっています。
碁というのは私が考えているより遥かに深いのかもしれません。
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幽玄の間その2

2016年07月30日 23時50分56秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は前回に引き続き、幽玄の間で中継された対局をご紹介したいと思います。



趙治勲名誉名人(黒)対王銘エン九段戦です。

白△がプロの踏み込み!





白1では厳しさが足りません。
白5まで打っても下辺には黒の1眼確定、黒6と悠々飛び出されて攻めになりません。





実戦は白1の踏み込みから白7までと進み、下辺黒の眼の出来具合が違う事をご確認ください。





黒1、3なら白4、6となり、明らかに白が攻勢に立っています。





実戦は黒は5子を捨て、黒5と右下白へ迫って行きました。
ここで主導権を握る作戦です。





黒6までと進み、次に白Aなら黒Bとなって白が下辺に閉じ込められます。





そこで白1と変化、黒は右下白を取り、白は中央を突き破る変化になりました。
相手の言いなりにならない、プロらしい分かれになったと思います。





その後このような展開になりました。
右下隅の石を取られた白は、下辺一帯でそれ以上の大きさの白模様を築いています。
白の碁盤全体を見た打ち方が光った1局でした。
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幽玄の間

2016年07月29日 23時34分15秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は木曜日に幽玄の間で中継された対局をご紹介します。



金秀俊八段(黒)対伊田篤史八段戦です。
白△とハネた場面、黒A、白Bとなればごく自然な進行です。





ところが、実戦は黒1と驚きの強手!
碁界屈指の力戦家、金八段ならではの仕掛けでした。





白1と出る一手に、黒2の逃げ出しが狙いです。
黒の左右が裂かれ形になるので怖い打ち方ですが、白を分断して強引に戦いに持ち込みました。
相手の伊田八段も力戦家、ここから長い戦いが始まります。





白△と飛んだ場面、双方共に左右に生きていない石を抱えています。
下辺の白は一見強いようですが、黒A、白B、黒Cの手順で眼が無くなります。
ここから黒Dと打ち、さらに左下の白に狙いを付けて行きました。





このように進むと左下の白に眼が無くなります。
これが黒の注文なので・・・





白は2子を捨てて隅に根拠を確保する事になりました。
ここは黒がポイントを挙げていますが・・・





白は先手を取って1、3と中央の黒に攻めかかりました。
黒も6から反撃して一歩も引きません。





白1と右辺白を生きてようやく一段落かと思いきや、黒2と打ち込んでまだまだ戦いは続きます。





左上では、意外な所でコウ争いが勃発!





白△とコウを解消して、黒△から始まった戦いがようやく終わりました。
この間、150手以上!
戦いに次ぐ戦いで、面白い1局だったと思います。
ぜひ総譜をご覧ください。
なお、結果は金八段の黒番中押し勝ちとなりました。
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井山碁聖、5連覇!

2016年07月28日 22時09分52秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第41期碁聖戦5番勝負第3局が行われました。
結果は井山碁聖の勝利で5連覇達成、名誉碁聖を名乗る資格を得ました。
それでは早速振り返って行きましょう。



白番の村川碁聖、白△の押さえ込みから仕掛けました。
黒地を荒らす手ではなく、黒を分断して攻める狙いです。





白△と上辺の黒に迫りましたが、構わず黒1から下方を目一杯に打って頑張りました。
こうなっては激戦必至です。





ここで白1とは格好良い!
Aの封鎖、Bから2子を取りに行く手を両睨みにした好手です。





黒1~5と玄妙な手順で両凌ぎを図るのに対し、それは許さんと白6!
戦いはますます激しくなって行きます。





黒1と出た瞬間、なんと押さえずに白2、4!
強引に眼を取りに行きました。
最近の村川八段らしい、力強さを前面に出した手です。





黒凌ぎが困難かと思われましたが、黒1、3が素晴らしい手筋のコンビネーション!
さすが井山碁聖、簡単には潰れません。





白は黒4子を抜き、黒は白△の一団を取る大変化になりました。
ここで黒が上辺を生き、白はAと生きれば戦いが終わる所でした。





ところが黒1と右辺白の眼を取り、白も2と上辺黒の眼を取る事になって生死をかけた争いに!





コウの絡んだ攻め合いの結果、白は右辺に入り込んで生き、黒は右上白を取る分かれになりました。
当初の形からは考えられないほどの大変化です。
しかし△と囲う事になっては左辺白模様が巨大になり、白勝勢になりました。
村川挑戦者の初勝利は確実と思われましたが・・・





ここから井山マジックが始まります。
あちらを打ったりこちらを打ったりで、手品の種を仕込んでいます。





黒△となってみるとスペースが広く、簡単には死にません。
白Aと追及されてまだ苦しそうですが、勝負の圏内です。





黒△となって左下の白も心配になって来ました。





白を切り離し、とうとう攻め合いに持ち込みました。
Aのコウ付きですが、黒には右辺に多くのコウ材があります。





最後はAのコウ争いになりました。
やはり黒のコウ材が多く、ついに白の大石を取ってしまいました。
井山碁聖、稀に見る大逆転で防衛を決めました。


第1局では乱戦での強さ、第2局では優勢になってからの勝ち方、そしてこの第3局では劣勢になってからの驚異的な粘り強さを見せ付けました。
井山碁聖の強さがあらゆる面で現れたシリーズだったと思います。
これほど強い井山七冠を倒すのは、一体誰になるのでしょうか?

次のチャンスは8月末から開幕する名人戦挑戦手合です。
挑戦者決定リーグは現在高尾九段が6勝1敗と一歩リード、次の最終戦に勝てば挑戦が決まります。
5勝2敗の張栩九段、村川八段も勝てばプレーオフ進出の可能性があります。
本因坊戦で敗れた高尾九段、碁聖戦で敗れた村川八段は何としても雪辱を果たしたい所でしょう。
また、張栩九段も長らく挑戦手合からは遠ざかっており、久しぶりのチャンスに相当気合が入っている筈です。
挑戦権を勝ち取るのは誰になるでしょうか?
8/4(木)の最終戦に注目です!
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高校選手権・個人決勝

2016年07月27日 23時03分02秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨日に引き続いて高校選手権のニュースです。
本日は個人戦が行われました。
熱闘の結果、男子優勝は津田裕生さん、女子優勝は辻萌夏さんとなりました。
おめでとうございます!
それでは対局の模様を振り返って行きましょう。
なお、決勝は団体戦と同じく幽玄の間で中継されました。



男子決勝、黒番は松本直太さん(島原高等学校)、白番は津田裕生(浦和高等学校)さんです。
白1、3が隅へのサバキを拒否して頑固な打ち方なら、黒4もまた頑固!
黒A周辺なら普通ですが、ハネツギを拒否して相手の注文を外しました。
気合と気合が激突した場面です。





左下の戦いで黒の動きがやや重かったか、白△と打って白好調の流れになっています。





しかし、白1と狭い所に行ったのは考えすぎでしょう。
黒4と切られては薄くなりました。





黒1の下がりを無視して白2は好感覚、対して黒3も気合良くボウシ!
この手はたぶんノータイムだったでしょうね。





戦いが進む中、黒1が凄い手!
黒Aの封鎖を狙っています。





勢い白1と反撃して激戦になっています。
手の解説は余計ですね。
両者の気合を感じ取ってください。





黒は左辺の白を取りに行く展開になりました。
黒3ではAがより厳しい筋で、そちらなら取れていたかもしれません。
とはいえこの後攻め合いになり・・





ここまで進みました。
一体どうなっているのでしょうか?
黒からダメを詰めて行ってみましょう。





最後はこの形になり、白1と取ってコウです。
白がAと繋げばセキ、黒がコウを取った状態でBと打てば攻め合い黒勝ちです。
白だけに負担の重いコウで、こんな手が残っては黒優勢と思われました。
しかし、持ち時間が無かったのでしょう。
打ち切りか、秒読みがあったとしてもかなり短い時間のはず。
切羽詰まった状況でミスが出て、最後は黒時間切れ負けとなってしまいました。

実は15年前に私が優勝した時も時間切れ負けで決着しています。
そのせいか、翌年から秒読みが付くようになったと記憶しています
しかしこれも対局者同士が極限まで力を出し切った結果です。
決勝戦にふさわしい熱い戦いでした!





女子決勝、黒番は福島みのりさん(渋谷教育学園幕張高等学校)、白番は辻萌夏さん(戸山高等学校)です。
白1の打ち込みに黒2でお返しするとは、すごい気迫です。
左辺は白の石数が多いので、黒AやBで先に攻めていれば普通ではあります。





白5まで突き抜く事になっては白がリードしました。





しかし白1は打たない方が良かったでしょう。
黒2と軽快に進出したのが好手で、ここに石が来た事で黒△の動き出しを狙われる事になりました。





また、白1のツケに構わず黒2、4と封じ込めたのも良い判断です。
この線が繋がって黒手厚くなりました。





下辺で勢力を築いてから黒△へ打ち込み、良い流れになっています。





右辺で白は実戦的に渡り、勝負はこれからです。
しかし黒1に対して白2ではAが本手でした。
黒にチャンスが来ました。





少々露骨ですが、黒1から決めて行くのがわかりやすい打ち方でした。
黒9と分断しては成功です。
白8では9と渡るでしょうが、実戦より良かったでしょう。





実戦は筋良く黒1のツケでした。
これで白困ったかと思いきや、白2と読みの入った手で対抗!
白8まで無事渡る事になっては黒の仕掛けは空振りしました。
本局の名場面と言って良いでしょう。





細かい勝負になっていますが、黒1が痛恨の一手でした。
ダメを詰めてしまったので・・・





白5まで先手で利かされてしまいました。
黒△が無ければ黒6と受けなくても大丈夫でした。





最後は白1から3の切りが鮮やかな決め手になりました。
黒6でAと打ちたいのですが、白6と打たれて攻め合い一手負けになります。
最後まで黒△に祟られてしまいました。

女子の方も非常にレベルが高く、また気合も十分でした。
団体戦で優勝した辻さんにより勢いがあったのでしょう。
辻さんには最高の夏になりましたね。

これで3日間に渡る高校生の熱い戦いが幕を閉じました。
来年はどんな選手達が出てくるのか、今から楽しみですね。


明日は碁聖戦第3局が行われます。
第2局は井山碁聖の圧勝でしたが、村川八段も互角に戦える力を持っているはずです。
ぎりぎりの勝負を期待しましょう!
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