白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

10月の情報会員向け解説

2017年10月13日 23時39分10秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
明日は午後1時から永代塾囲碁サロンにて講座・指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。
ちなみに、お昼はメイド喫茶イベントを行っているそうですが・・・。
囲碁サロンの看板が怪しくなって来た気がします(笑)。


さて、本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
過去の記事はこちらです→第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回

棋譜再生ソフトの使い方は第4回で詳しく解説しています。
・・・過去の記事一覧を並べるのも、そろそろ鬱陶しくなって来ましたね(笑)。
解説を担当するようになってから、既に1年半以上経過しました。

今月は第65期王座戦本戦 芝野虎丸三段余正麒七段
第36期女流本因坊戦準決勝 謝依旻女流棋聖木部夏生二段
の2局を解説しました。
今回は芝野-余戦の解説の一部をご紹介しましょう。
また芝野かと言われてしまいそうですが・・・。



1図(テーマ図)
いつも通りの「Kiin Editor」キャプチャー画面です。
余七段の強手から・・・。





2図(実戦進行)
このように進行しました。
何が何やら分からないような感じですが、必然性のある進行なのです。
それでは進行の意味を解明して行きましょう。





3図(実戦)
黒1「ボウシに対しては曲げがプロの感覚です。」

まず、この曲げがプロの碁を理解するためには非常に重要です。
似たような形ができると、プロは99%ぐらい曲げている気がします。
何故なら・・・。





4図(参考図)
アマの皆さんは、前図黒1で本図黒1と打つ方が多いですね。
これは高段者にも当てはまります。

「黒1はどちらの白にも響かず、あまり考えたくない手です。
白4以降、一方的に攻められそうです。」


黒1は決して悪手ではありません。
しかし、プロが共通して物足りなさを感じる手なのです。
この感覚を身に付けるのはなかなか大変ですが、そういうものだと知っておくだけでも、プロの碁を理解しやすくなるでしょう。





5図(実戦)
実戦に戻ります。

黒2「曲げとセットの手筋です。
ボウシすれば、ここまで想定できますが・・・。」

白3「ここで割り込みが成立すると読んでいました。」

黒2で3のところに打つ手は、空き三角の形になるのでよくありません。
また、黒2でAとハネる手は無理です。
それぞれ参考図で解説していますが、ここでは省略します。

白3とは強引なようですが、こう打たなければならない理由があります。
それも参考図で解説しているので、ご覧頂きましょう。





6図(参考図)
前図白3で本図白1と引いた場合の図です。

「ここで白1と伸びるようでは、黒2が有名な好形です。
黒AやBの後続手段があり、かえって黒を強くした結果になってしまいます。」


黒△の石から、カケツギの形で進出するのは有名な好形です。
有名と言っても、呼称は定まっていないと思いますが・・・。
それはともかく、この形もまた非常に重要です。
この形が好形であることを覚えておくと、プロが相手にこの形を作らせまいとしていることも把握しやすくなるでしょう。
もちろん、皆様自身の対局にも役立ちます。





7図(実戦)
実戦に戻ります。

黒1「取られては終わりなので、黒は逃げ出します。」
黒5「これで黒AとBが見合いになるというのは、プロには簡単な読みです。」

では、黒AとBが見合いになっていることを参考図で確認しましょう。





8図(参考図)
白が7図Aの方を守った場合の図です。

「白1なら黒2で脱出できますし・・・。」

これは白の得た物が何も無い図ですね。
では、見合いのもう片方を打てばどうなるでしょうか?





9図(参考図)
白が7図Bの方を止めた場合の図です。

「白1には黒2と出て、逆に白を取れます。」

これも白がダメですね。
どちらの参考図もダメとなれば、白が困ったようですが・・・。





10図(実戦)
白1「しかし、ここで覗く手を見ていました。」
黒2「中央黒の脱出は許しますが・・・。」
白3「タケフに打って、AとBの切断が見合いです。
余七段らしい深い読みでした。」


テーマ図の時点から、9図まではプロなら簡単に読めます。
そしてテーマ図のボウシは無理だと諦めてしまいがちですが、余七段はその先まで読んでいたのです。
ここから黒B、白Aとなって戦いは続いて行きますが、その進行もある程度見通しは立っていたでしょう。


この碁は最初から最後まで全て見所と言って良いほど中身が濃く、解説者にも普段の倍ぐらい時間がかかりました(笑)。
大熱戦の模様を、ぜひ多くの方にご覧頂きたいと思います。

また、もう1局の謝-木部戦も大変熱い戦いでした。
来週の週刊碁で木部二段の講座がスタートするそうですが、そちらの題材にもなっているようですね。
ちなみに、木部二段の解説方法は視覚的に分かり易く、私も時々真似しています。
今後広まって行くのではないでしょうか。

なお、来月は
第43期名人戦予選A 富士田明彦六段対武宮正樹九段
第5期立葵杯予選 杉内寿子八段上野愛咲美初段

の2局を解説します。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!