白石勇一の囲碁日記

ほぼ毎日更新、囲碁棋士白石勇一六段のブログです。
著書「やさしく語る 碁の本質」「やさしく語る 布石の原則」発売中!

AI竜星戦

2017年12月10日 21時49分51秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日はAI竜星戦が行われました。
UEC杯コンピュータ囲碁大会の後継となる大会ですね。
プロレベルのプログラムがかなり増えているようですが、決勝は予想通りDeepZenGoと絶芸(FineArt)で争われました。



1図(実戦)
DeepZenGoが黒△と伸びた場面です。
ここで最も将来性のある場所は上辺一帯です。
黒×が大きな勢力なので、これを活用してどれだけ大きな黒模様や地を作れるかどうかが焦点となっています。
赤印あたりを囲うのでは小さいですが、青印あたりまで模様が広がる可能性もあります。
そこで、白は右上黒の薄みに目を付けて白Aから仕掛け・・・。





2図(実戦)
白△までと進みました。
こうなってみると、黒の打ち方が難しくなっています。
白の形が薄く見えるかもしれませんが、ここから白×を千切りに行くのではものが小さく、黒勝てそうになりません。

そこで、実戦は黒Aから丸飲みを狙うかのような攻め方を選択しました。
ただ、周辺の黒にもいくつか弱点があるので、そう強気に戦えるという感じもしません。





3図(実戦)
結果、白の反撃を受けて要石の黒△を取られることになりました。
こうなっては白成功で、人間レベルでも逆転が難しい形勢になったように思います。
この後黒は左下隅を取るなどして頑張りましたが、及びませんでした。


もはや絶芸やDeepZenGoが強いことは分かり切っていて、私としては後発のプログラムがどこまで追随できるか、あるいは個人レベルのプログラムがどこまで健闘できるかというところに注目しています。
これからは、公開されている情報を利用すれば、純粋な個人でも棋士レベルのプログラムが作れるようになりそうです。
以前の私は、ソフトが棋士を超えるためには量子コンピューターが実用化されるぐらいのことが必要かと思っていましたが・・・。
世の中どうなるか分かりませんね。
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縦の読み・横の読み

2017年12月09日 20時28分25秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は午前は五反田・午後は永代塾囲碁サロンにて指導碁を行いました。
近年は指導碁を数多く打っていますが、私の仕事の中でも最も楽しい部類ですね。
打つこと自体が楽しいということもありますが、お客様の上達を感じることができる点も大きいです。
何しろ、私自身はもう大きく棋力が変わることはありませんから・・・。
あと2子ぐらい強くなりたい気持ちはありますが、それは流石に無理でしょう(笑)。

さて、本日は読みについてお話しします。
囲碁において読みは非常に重要です。
ですから、読みのトレーニングは有効な上達法とされています。
ただ、注意点として、読みには2種類あるということを知っておきましょう。



<1図>
まずはこの図をご覧ください。
黒が1手目をこう打って、白が2手目をこう打って、黒が3手目をこう打って、白が4手目をこう打って・・・。
このように、数手先を想定していくことを私は縦の読みと呼んでいます。
地面を真っ直ぐ掘り進んでいくようなイメージですね。

「何手先まで読めますか?」という質問は、プロなら誰しも受けたことがあるでしょう。
そして、例えば「60手先まで読むこともある」などと答えると「凄い!流石プロだ!」などと驚いて頂けたりします。
でも、実際にはそんなに凄いことではないのです。
一本道を読むのであれば、プロにとっては10手だろうと100手だろうと難易度に変わりはなく、確認にかかる時間が違うぐらいです。





<2図>
ですが、読みは縦だけではなくにも広がります。
つまり、自分や相手の手には複数の選択肢があるということです。

自分が黒1の手を打ったとして、それに対して相手は白2で何通りか選択肢があります。
そして、そのそれぞれの手に対して黒3の手を打つわけですが、それにもまた何通りか選択肢があり、その枝分かれの先にまた白4をどう打つかの選択肢があり・・・。
と、想定されるコースはどんどん長く、かつ幅広くなっていくわけですね。
例えば、1つの手に対する対応が3通り考えられるとすれば、白2の時点でルートが3つに分かれ、黒3の時点でそれが3倍になり、白4でまた3倍になるわけです。
たった4手のうちに、27本ものルートが生まれました。





<3図>
また、そもそも初手にもいくつか選択肢が考えられるわけで、ここでも3通りとすれば27×3=81本のルートを想定することになります。
ほんの少し先を読もうとしただけでも、かなり大変であることが分かりますね。

そして、その読みを元に初手はどこに打つかを決めることになります。
初手黒Aから派生するルートの中で、双方が最善を尽くした結果の評価はこのぐらいで、同様に初手Bならこのぐらい、初手Cはこのぐらい・・・。
そして、その中で最も黒にとって得なルートが想定できる手を打てば良いわけですね。

ただ、碁を打つ際に実際に虱潰しに読んでいるかと言えば、そうではありません。
こんなことをしなければいけないとしたら、碁を打つ人が誰もいなくなってしまいます(笑)。





<4図>
実際には、ある程度直感に頼って打つことになります。
例えば、初手の時点で正解に見える手を本命に考え、そのルートを掘り進めます。
それはその先の枝分かれでも同様であり、ひたすら本命だけを追っていけば、1本のルートを読むだけで4手先に辿り着くことさえ可能です。

つまり、横の読みで重要になるのは、数ある選択肢の中から直感で正解を感じ取る力です。
簡単な詰碁を解くことを推奨されるのは、これが理由なのです。
沢山の手筋や石の形に触れておけば、実戦で似た形が現れた時に「あっ、これは見たことあるな」と感じられるようになるのです。





<5図>
一方で、やはり碁は勘だけでは打てないところもあります。
時には具体的な図を読まなければいけません。
そこで、石を置かずに頭の中で想定図を作れるようにしておく必要があります。

ただ、頭の中でルートAの図を作り、次にルートBの図を作り、そして両方の図を頭の中で見比べる・・・といったことは慣れないと難しいです。
そこで、まずは一本道の図・・・縦の読みに絞って練習すると良いでしょう。

例えばシチョウ問題などは、縦の読みを鍛えるには最適です。
と言うのは、シチョウは基本的には必要とされる技術はほとんど無く、ただ交互に追いかけていくだけです。
ですから、頭の中で図を作ることに専念することができるのです。

例えば、本図で黒1とシチョウに抱えて白△を取れるかどうかを考えてみましょう。
右上に白×がいて、邪魔になりそうな気配もありますが・・・。





<6図>
結果はご覧のように、無事白を捕まえることができました(黒48だけは多少の技術が必要ですね)。
ここまで、なんと48手もの読みが必要です。
ですが、このぐらいのシチョウは実戦で頻繁に現れます。
普段シチョウを間違えない人は、縦だけの読みならこのぐらいはできるということです。
アマのレベルでもっと長手数の読みを要求されることはまず無く、単純なシチョウがスムーズに読めれば縦の読みは十分でしょう。

いきなりこの長さは厳しいという方は、5手や10手で終わる問題を解けば良いのです。
慣れればだんだん長く読めるようになってきます。
シチョウの他には、ゲタや追い落としなどで石を取る問題も良いですね。


よくポカで石が取られるという方は多いですが、それはうっかりミスというよりも、石を置かずに考える力が不足しているせいかもしれません。
簡単なトレーニングで劇的に改善される可能性もあるので、ぜひ取り組んで頂きたいですね。
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12月の情報会員解説

2017年12月08日 19時47分29秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
明日は最近囲碁アイドル企画で話題の、永代塾囲碁サロンにて指導碁を行います。
午後1時から1時間ほど解説会を行い、その後指導碁に入る予定です。
今回は昔の名人の打ち碁解説などしようかと思っています。
なお、指導碁の後はその場で棋譜をお渡ししています。
ご都合の合う方はぜひお越しください。


さて、本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
なお、過去の記事はこちらです。↓
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回
棋譜再生ソフトの使い方は第4回で詳しく解説しています。

今月の私の担当分は、
2017崋山国際囲碁大会決勝 柯潔九段対周睿羊九段
第43期棋聖戦ファーストトーナメント 伊了初段金沢真七段
の2局を解説しました。
今回は大熱戦となった柯-周戦の解説の一部をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
Kiin Editor」キャプチャー画面です。
今白△と打ったところです。
切りを見られているので、黒の次の一手は決まっている・・・ように見えるのではないでしょうか。





2図(実戦進行)
ところが、実戦はこのように進行しました。
えっ、何で黒2子を取られたの!? と驚かれる方が多いのではないでしょうか。
こういうところはプロの碁が難しく感じる要因の1つでしょうね。
ですが、これには分かり易い理由があります。
それでは順にみていきましょう。





3図(参考図)
ほとんどの方は、テーマ図の後は本図黒1とつなぐでしょう。
ですが・・・。

「黒1のつなぎも先手で打てますが、これを打ってしまうと、せっかくの狙いの厳しさを損なってしまいます。」

黒には大きな狙いがあり、黒2子を助けるとそれを邪魔してしまうのです。
その理由はこの後分かります。





4図(実戦)
実戦の進行に戻ります。

黒3「この白を攻めるのが黒の狙いでした。
左辺での動きも、全てはこのためだったかもしれません。」


左辺での動きとは、テーマ図以前の応酬を指します。
黒はずっと前から右上白への攻めを狙い、準備を重ねていたのでしょう。

ここで参考図が2つ入り、黒2子を助けなかったことの種明かしをしています。





5図(参考図1)
「後に黒1と押さえると、白は2と切る下がる一手です。 ※間違いがありましたので訂正予定です。
そこで、黒3と切っていく味があるのです。
例えば、このようになれば先手で外側が止まりますし・・・。」

攻め合いが1手差で、左辺白は中央へ出て行けない形です。
別の見方をすれば、右上白一団が左辺白とつながる可能性が無くなるとも言えます。
3図と本図を比べれば、本図の方が右上白への攻めが厳しくなることは明らかですね。





6図(参考図2)
前図では白がまずいので、対応を変えてくることが考えられます。

「あるいは、このような進行も考えられます。
現状白は捕まりませんが、これを横目に無数の利き筋ができます。
つまり、この周辺に見えない壁ができるので、それを利用して右上白を厳しく攻めようというのです。」


結果、白は中央を完全に塞がれることは防ぎましたが、それでも中央に黒石が増えたことには変わりません。
右上白を攻めるための援軍になるでしょう。
ここに示した2図は数ある変化のほんの一部ですが、白がどんな対応を選んだとしても、中央に黒の勢力が築かれるとご理解ください。

ただ、黒としてもこの狙いを決行する時期が早過ぎると後手を引いてしまったり、石を捨てることによる地の損が大きくなるかもしれません。
ですから、3図のようにつなぐ可能性も残しておき、白の出方に応じて選ぼうというのです。
言わば黒は後出しジャンケンをしようとしているようなものです。
なんとズルいことを考えているのでしょうか(笑)。
そして、プロは皆このズルさを持っています。





7図(実戦)
実戦に戻ります。

白1「何はともあれ、白はこの石を逃げ出します。」
黒2「応急処置を施しました。
地を守るというより、白の眼を奪った意味でしょう。」


右辺を地にしているように見えるかもしれませんが、あくまで黒の狙いは右上白一団です。
黒2のノゾキの意味は次の参考図で解説しています。





8図(参考図)
「このように1目取る手があったところです。」

1目取れば1眼できるので、白が生きに近付いてしまいますね。
これを防ぐためのノゾキでした。





9図(実戦)
実戦に戻ります。

黒1「そして、上下の連絡を絶っていきました。
大石の取りかけをも狙っている雰囲気があります。
さて、ここで白はどう守ったものでしょうか?」

白2「切って禍根を絶ちました。
地の得も小さくありませんが、何より絡み攻めを防いだ意味があります。
さて、ここで黒はどう攻めたものでしょうか?
一方石に死に無しと言いますが・・・。」


右上白を攻められているのに、白2と離れたところに打ちました。
これも実は右上白を守った手です。
後出しジャンケンを防ぐために、手札ごと奪ったということです。
その価値は次の参考図をご覧頂ければ感じられるでしょう。





10図(参考図)
前図白2を打たなかった場合の変化です(黒14は25の所)。

「白1などと守ると、かえってこのような絡み攻めを誘発する可能性があります。
一例として黒30までとなると白潰れです。」


図で見ると頭が痛くなりそうな長さですね。
白1を見て黒は用意の手札を切り、左右の白の絡み攻めに持ち込みました。
結果中央白が取られることになったという図です。

棋譜を見ているだけだと水面下の動きが見えないので、実戦の進行はわけが分からないように感じる方が多いでしょう。
ですが、種を明かしてしまえば、双方の考えていることは意外にシンプルだと分かります。
もっとも、対局者は膨大な読みの裏付けのもとに打っていますが、そこは把握できなくても大丈夫なのです。

9図の後、黒は右上白大石に迫るため、さらなる大作戦に出ました。
そちらも面白いところなので、ぜひ全ての解説をご覧ください。

なお、来月は
第22回LG杯準決勝 井山裕太九段対柯潔九段
おかげ杯国際新鋭囲碁対抗戦 村川大介八段対李映九九段
の2局を解説します。
お正月ということで、日本棋士の好局をのんびり楽しんでください。

ところで、私は詳細かつ分かり易い解説を心がけていますが、語りが少し硬過ぎるような気がしています。
来月からはもっと感情を出して、私自身の感動を皆様に直接お伝えするような内容を目指していこうかと思っています。

ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!
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本日の問題

2017年12月07日 21時00分12秒 | 問題集
皆様こんばんは。
木曜日は棋士の手合日なので、幽玄の間でも多くの対局が中継されました。
注目の対局は、何と言っても伊田篤史八段対一力遼八段ですね。
内容は・・・ひたすら石の取り合いで、どうなっているのかさっぱり分かりません!
まあ、実際に読んでみれば一応納得できる部分もありますが、何故ここまで際どい戦いを選ぶのか・・・。
先に引いたら負けというチキンレースなのかもしれませんね(笑)。

さて、本日は久しぶりに問題を出してみます。
高度な手筋ですが、考えるところは少ないので、級位者の方でも正解に辿り着くことは可能です。



1図(問題図)
黒番です。
黒Aと打てば隅の黒は生きることができます。
しかし、白Bと逃げられると黒△が取られてしまいます。
ならばと黒Bに抜くのは、白Aと切られて全体が死んでしまいます。
両方助けるにはどうすれば良いでしょうか?









2図(正解図1)
黒1のツケが正解です!
たとえ先が読めなくても、ここに目が行った方はセンスが良いです。





3図(正解図2)
黒△に対して白1と受ければ、それから黒2と生きるスペースを確保します。
白3には黒4と当て、白はAにつなげなくなっています。
黒△が良い所にありますね。





4図(正解図3)
黒△に対して白1なら、黒2と抜いておきます。
白3と切ってくれば黒4と二が出し、白5子との攻め合いは黒勝ちです。
この時も黒△が良いダメの詰め方になっていますね。





5図(元ネタ)
元ネタは昨日の指導碁です。
白△までの形が実際にできましたが、ここで白Aの逃げ出しを先手で防ぐことができました。
しかし、問題で出されれば別ですが、ここで手筋に気が付く方は高段者の中にもなかなかいません。
常にアンテナを張り巡らせているかどうかですね。
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Alpha Zero&阿含・桐山杯日中決戦

2017年12月06日 23時58分22秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。

本日もまた凄いニュースがありましたね・・・。
DeepMind社の新AI「Alpha Zero」が、囲碁・将棋・チェスそれぞれでコンピューターの頂点に君臨したとか・・・。
永世七冠の翌日にぶつけてくるとは、広報もえげつないですね。
多くの方がAIに不可能は無いのでは? と感じたのではないでしょうか。

さて、本日は阿含・桐山杯日中決戦が行われました。
まだ手順を見ただけですが、軽く感想を。



1図(実戦)
柁嘉熹九段の黒番です。
私なら、黒△の鉄壁を作らせてはつらいように感じます。
しかし、六浦七段はのんびり白△と構えて打てるとみているのですね。
相手が名人だろうと世界一経験者だろうと、いつも通りに打っている印象です。
この度胸も六浦七段の快挙の要因でしょうか。





2図(実戦)
黒△と打たれた場面です。
白△が置き去りになり、明らかに白がやり損なっています。
焦ってしまいそうな局面ですが、ここから絶妙な距離に踏み込んで・・・。





3図(実戦)
白△まで、勝負形に持ち込みました。
この後上辺で生きられそうでしたが、それで形勢はどうだったのでしょうか。
ぱっと見では良い勝負と感じます。
しかし、最後に早碁ならではのミスが出てしまったのは残念でしたね。

結果は出ませんでしたが、戦いぶりには頼もしいものを感じました。
六浦七段の今後が楽しみです。
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