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貧乏無職引きこもりを歌にする耽美なギターポップ(3)

2014-09-03 13:18:42 | 音盤ノート
The Smiths "Meat is Murder" Rough Trade, 1985.

  前回の続き。これはオリジナルアルバム第二作でかつ代表作。力強いロックンロール・アルバムで、繊細なスローバラードも収録されているけれども骨太なサウンドの方が目立つ。

  収録曲は、学校の先生による理不尽な体罰を受けて「家に帰りたいよ」と嘆くフォークロック'The Headmaster Ritual'に始まり、独りで帰る道すがらにその日のデートの情景(強盗殺傷事件や「あのパラシュートの一番上から飛び降りたらどのくらい早く死ねるかしら?」などという相手の発言など)を思い返すロカビリー'Rusholme Ruffians'、貧乏な少年の成長と性的欲望を歌ったストレートなロック曲‘I Want the One I Can't Have’、ネガティブな発言ばかりする内気な文学少女についてのヘヴィメタ風'What She Said'、「ぼっち」を嘲笑する相手に「そんなジョークはちっとも面白くない」と突き放すバラード'That Joke Isn't Funny Anymore'と続く。

  以上五曲の後に、CDではボートラとして"Hatful of Hollow"収録済の'How Soon is Now'が続くのだが、これは余計だ。オリジナルの6曲目は、経済格差に憤るあまりズボンを降ろして世界や英国女王に向かってお尻を突きだしてやりたいという'Nowhere Fast'というパンクな曲である。その後は、自分が死んでも忘れないでくれと弱弱しくお願いするアコギのストロークが美しいバラード'Well I Wonder'、子どもへのDVを歌うファンク風(フレーズの長いギターリフが決まっている)'Barbarism Begins At Home'、牛がモーモー言う中で肉食反対を歌う'Meat Is Murder'と展開する。

  齢40を超えてこれらの歌詞を読むと簡単に「死ぬ死ぬ」と騒ぐ厨な歌ばかりだなという感慨だが、それでも聴き手を深刻にさせずに笑わせるので救われる。サウンド面では、Johnny Marrのギターが本当に素晴らしく、多彩で飽きさせない。若いうちに聴いておこう。
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