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愛無き世界以降

2008-04-27 14:37:48 | 音盤ノート
 My Bloody Valentineが復活するらしい。具体的には、1.16年ぶりのライブ演奏、2.17年ぶりの新アルバム発表、3.過去録音のボックスセットの発売、の三つが今年中にあるというのだが・・・。

 これが全部実現すると考えているならば、甘い。全て実現しない可能性もある。僕は1988年の"Isn't Anything"以来の古参のファンだ。長い間、この種の情報にずっとだまされ続けてきた経験がある。狼が来た!!、という印象だ。

 1991年のアルバム"Loveless"以降、活動休止中のバンドの情報が邦語出版物に載ることは当然ながらほとんどなかった。代わりに、当時普及し始めたインターネットを使って色々調べたものだ。中にはメンバーへのインタビューもあった。それによれば「現在新作のレコーディング中」というのが1990年後半の状況だった。期待して待っていたが、そのまま20世紀が終わった。

 21世紀に入ってからは新作の話は消滅し、今度は「シングル曲とレア曲をまとめた編集盤が出る」という告知が二度なされた。ネット上の怪しげな情報ではない。最初の話は、ある音楽誌の広告として目にしたが、いつしか立ち消えになっていた。二度目の話は曲目まで発表され、大手輸入盤店で予約可能な段階まで進んだ。でも発売中止になった。

 2008年の4月現在まで、オリジナルアルバムも編集盤も発表されないままだ。増えたのは、海賊盤とシワの数だけ。音の悪い海賊録音盤を何枚もつかまされたおかげで、「サウンドボード録音」など、普通の音楽愛好家には意味不明な概念を分かるようにならなければならなかった。余計なことをさせるものだ。

 このような経験を積み重ねてきた古参のファンたちは、ひねくれた疑り深い人間にすっかり変わっていることだろう。そんな可哀想な人生を歩んできた人たちの静かな余生に、これまた強力な釣り針が放り込まれてきた!! 今回の話は、新作と編集盤に加えてライブ演奏付き!! まるで「ただの嘘には引っかからないだろうからもうちょっとすごい嘘を加えてみよう」と言わんばかりだ。シールズ様、だまされて打ちのめされるファンの姿をあなたはそんなに見たいのですか?

 いやいや、今回の話が嘘だと決まったわけではない。で結局、手はじめに今年の6月末に発売されるという「3.過去の録音のボックスセット」を予約してしまった。だが、たかがCDの予約にも、MBVのファンならば十分な精神衛生上の対策を練っておかなければならない。

 第一に、収録曲目はまだ公表されていないが、オリジナル盤と海賊盤で既に所有している曲以外の収録は無いだろう、とまず期待のハードルを下げておかなければならない。第二に、ボックスセットと告知されているが、もしかしたら告知通りの形態で発表されず、一枚もののベスト盤なんかに企画を縮小して発売されるかもしれない、という可能性も考慮しておく。第三に、そもそも発売されない、という「いつもの結果」を常に念頭に置いて毎日を過ごさなければならない。

 ここまでしてやっと、現物を目にするまでの、期待と不安が交錯するつらい待ちの時期をなんとかやり過ごせるようになる。

 お金を払ってくれる相手に、これほどまでに苦難と苦行を強いる客商売がかつてあっただろうか?罪深いにもほどがある。"Loveless"以来の新作が発表されたら、僕は即刻ファンを辞めるつもりでいる。しかし、いつ出るともわからない作品を待ったまま辞められない可能性がある、というのがこれまた悔しい。負けた。
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