パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』イースト・プレス, 2004.
読書と成績ネタでもう一題。本書の“第16回 それでも本を読みますか”で、成績と読書量の関係が調べられている。ちなみに文庫版がちくまから最近出版されたようだけど、そちらは読んでいない。
その回で2000年のPISA調査の結果が言及されている。分析自体は、国立教育政策研究所の出版物1)に依存しているようだ。読書時間と読解力の成績との間の関係には次のような関係が認められるという。
マッツァリーノは、これにアメリカでの調査の知見を加える2)。それによれば、テレビの場合でも、一日二時間までの間なら見る時間が長いほど成績は良くなるが、四時間を越えるとどんどん悪くなるという。
読書とテレビの話を合わせて考えると、一日二時間以上何かに没頭すると、単に勉強時間が無くなって成績が悪くなるというわけだ。読書量と成績には直接の相関関係はないのだ、と。また、本も読まない、テレビも全然見ないような「世間に関心の無い」生徒も、その勉強意欲を推測すれば成績は推して知るべし。
すなわち、本またはテレビなど媒介はなんであれ、知識・情報を取得することに意欲があり、一方で興味を二時間以内に抑えて、勉強時間を確保できる生徒は、成績が良いのである。
これは「読書の量が読解力を形成するわけではない」という非常に大胆な主張に敷衍できる。一般に、読解力の成績が悪い児童・生徒に対して「もっと本を読め」というシンプルな対処法が提案されがちだ。国家レベルでも、PISA調査の結果の悪さから、学校図書館の充実のために予算を割いている(その使われ方が最近問題になったけど)。しかし、上の主張からは、成績を上げるためには、読むことよりも読解力形成のための修練を積んだ方が効果的であることが予想される。読書環境の充実よりも、教育プログラムを優先すべきなのだ。
ただ、本書はシリアスな装いを廃したエンターテイメントの書であるので、この章の後半は「日本で本を読んでない層は子どもじゃなくて大人だよ」という別の話に流れて終わっている。読解力の形成について、もう少し考察を深めた話を読みたいところだ。
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1)国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能:OECD生徒の学習到達度調査(PISA) 2000年調査国際結果報告書』ぎょうせい, 2002.
2)スティーヴン・クラッシェン『読書はパワー』長倉美恵子ほか訳, 金の星社, 1996.
読書と成績ネタでもう一題。本書の“第16回 それでも本を読みますか”で、成績と読書量の関係が調べられている。ちなみに文庫版がちくまから最近出版されたようだけど、そちらは読んでいない。
その回で2000年のPISA調査の結果が言及されている。分析自体は、国立教育政策研究所の出版物1)に依存しているようだ。読書時間と読解力の成績との間の関係には次のような関係が認められるという。
“世界的な傾向として、読解力の成績と読書時間が比例するのは、一日二時間までということがわかりました。毎日二時間以上本を読んでいる生徒は、逆に成績が落ちています。”
マッツァリーノは、これにアメリカでの調査の知見を加える2)。それによれば、テレビの場合でも、一日二時間までの間なら見る時間が長いほど成績は良くなるが、四時間を越えるとどんどん悪くなるという。
読書とテレビの話を合わせて考えると、一日二時間以上何かに没頭すると、単に勉強時間が無くなって成績が悪くなるというわけだ。読書量と成績には直接の相関関係はないのだ、と。また、本も読まない、テレビも全然見ないような「世間に関心の無い」生徒も、その勉強意欲を推測すれば成績は推して知るべし。
すなわち、本またはテレビなど媒介はなんであれ、知識・情報を取得することに意欲があり、一方で興味を二時間以内に抑えて、勉強時間を確保できる生徒は、成績が良いのである。
これは「読書の量が読解力を形成するわけではない」という非常に大胆な主張に敷衍できる。一般に、読解力の成績が悪い児童・生徒に対して「もっと本を読め」というシンプルな対処法が提案されがちだ。国家レベルでも、PISA調査の結果の悪さから、学校図書館の充実のために予算を割いている(その使われ方が最近問題になったけど)。しかし、上の主張からは、成績を上げるためには、読むことよりも読解力形成のための修練を積んだ方が効果的であることが予想される。読書環境の充実よりも、教育プログラムを優先すべきなのだ。
ただ、本書はシリアスな装いを廃したエンターテイメントの書であるので、この章の後半は「日本で本を読んでない層は子どもじゃなくて大人だよ」という別の話に流れて終わっている。読解力の形成について、もう少し考察を深めた話を読みたいところだ。
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1)国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能:OECD生徒の学習到達度調査(PISA) 2000年調査国際結果報告書』ぎょうせい, 2002.
2)スティーヴン・クラッシェン『読書はパワー』長倉美恵子ほか訳, 金の星社, 1996.