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「カラフル」と「ケバい」の間の微妙な境界線上にある電子音楽

2016-10-21 20:36:04 | 音盤ノート
Oval "Popp" Uovoo, 2016.

  エレクトロニカ。コラボ作品を除けば、2010年の"O"以来のオヴァルの新作である。前作は短い曲ばかりで、音楽的快楽を持続させないまま曲が目まぐるしく変わっていってしまい、習作集を聴かされているような印象だった。今作の収録曲はすべて4分前後で、ポップミュージックのフォーマットに収めている(ニカ曲としては短いほうだろうが)。

  1990年代半ばにはあったアンビエントな雰囲気がまるでなく、音数が多くてきらびやかになっているのが大きな変化である。とてもポップだ。ただし、リズミカルではあるがクラブで使用されるようなノリや音圧は無く、あくまで室内でのリスニング用となっている。基本、音色の重なりの複雑さを注意して楽しむような楽曲ばかりだ。いくつかの曲でボーカロイド風の歌声が挿入される(トーキング・モジュレーター?)のだが、ここは好みが分かれるところだろう。あの歌声はR&Bでよく使われたせいもあって、残念ながら僕には安っぽく聴こえる。リスナーが落ち着いて天国的な響きに耳を傾けているところに、けばけばしいヤンキーが闖入してきたみたいな場違いさを感じる。まあ、一部の曲の話であって、すべての曲がそうというわけではないし、その一部の曲でもそれによって完成度が大きく損なわれているというものでもないので、気にしないでいることもできる。

  うーん、Ovalにはもうちょい抑制的でミニマリスティックであることを期待したいが、このままこういう方向にいくんだろうか。作風を広げてつまらなくなったPhotekのようにならないことを望みたい。このアルバムは派手にやっているけれども、ギリギリ踏みとどまっている、という作品だろう。
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