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米国図書館史リヴィジョニスト系の訳本その2

2016-10-19 21:12:54 | 読書ノート
ローズマリー・R.ドゥモント『改革と反応:アメリカの生活における大都市公立図書館』川崎良孝, 久野和子訳, 京都図書館情報学研究会, 2014.

  図書館史。原書は1979年で、Reform and reaction : The big city library in American life (Greenwood Press)。訳者解説によれば、ギャリソンの『文化の使徒』と同じくリヴィジョニスト本とのことである。ただし、19世紀から20世紀の公共図書館の主導者の思想に関心があったギャリソンとは異なり、ドゥモントは公共図書館を取り巻く時代や社会といった環境要因を重視している。中産階級的な「改良主義」を動機として公共図書館の設置・サービスが進展したが、それは利用者個人を現状の社会への適応に導くような改善でしかなく、社会全体の改革にはつながらいものだった。また、図書館は一般大衆の十分な利用を喚起できなかったために、非利用者層を取り込むさまざまなサービスを考案したが、結果として社会改良主義的な目的達成を薄めることになった、と。

  19世紀の図書館の設立と民主主義思想との密接な結びつきというのは欺瞞で、公共図書館とは出自からして階級的な機関なのだ、というのが本書も含めたリヴィジョニストの指摘である。米国1970年代の公共図書館には、リベラルな論者のこのような議論と、受益者負担原則に基づく課金論という経済学系論者の批判があった時代である。1980年代以降、米国図書館協会は、表現の自由に深くコミットする、より純度の高いリベラリズムを目指すようになったように見える。それは1970年代のこうした批判に対する回答だったのだろう。「社会の改善」という旗を降ろし、「個人の権利を保障する機関である」という目標に変更することで、図書館は生き残ろうとしたわけである。だが、そもそもその目標変更に説得力があったおかげで現在まで図書館は生き残れたのか、というのは疑問に思うところだ。資金を出す人々の期待は別のところにあったかもしれない。このあたりは検証すべきことだが、本書の内容を超える話だな。
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