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ほとんど知られていない映画の優れたサウンドトラック

2013-01-16 08:56:24 | 音盤ノート
Simon Fisher Turner "アンモナイトのささやきを聞いた" UPLINK, 1992.

  1992年の日本映画のサウンドトラック。サイモン・ターナーは英国ニューウェーヴ系の出自だが、デレク・ジャーマンの映画音楽を手掛けるようになってから、テープ・コラージュによるインスト曲を多く作るようになった。これもその系統の作品。

  簡単に言えば、ミニマル・ミュージックの要素のあるアンビエント音楽である。哀切たる旋律を弦楽四重奏(バラネスク・カルテットによる)が奏でるというのが演奏の中心であり、それにコラージュ音やシンセサイザー、アコギが加えられる。これらの音の絡ませ方がとても巧みで、深いエコーの中を非常に美的に響かせている。前作の"The Garden"(参考)のように暗く歪むようなことはほとんどなく、ただひたすら霊妙かつ清廉である。ただし、4トラックあるうちの最後の曲だけはいただけない。そこでターナーのニューウェーヴ魂があらわになってしまい、打ち込み+軟弱男性ボーカルが登場してしまう。雰囲気ぶち壊しである。とはいえ、それまでの38分間は完璧な詩情を聴かせてくれるのでよしとしよう。

  これは彼の全盛期の作品でありかなり出来が良いといえる。だが、映画は有名じゃないし、日本盤しか出ていないしで流通数は少ないだろう。もったいない。
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