熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

新日本フィルのオネゲル「火刑台上のジャンヌ・ダルク」と都響のスメタナ「我が祖国」ほか

2006年02月19日 | クラシック音楽・オペラ
   今月は、2回、日本のオーケストラのコンサートに出かけた。

   最初は、新日本フィルハーモニー交響楽団の定期公演で、オネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」で、指揮は音楽監督のクリスティアン・アルミンク、字幕つきのコンサート・オペラ形式の演奏であった。
   舞台中央に、前に傾斜のついた逆三角形の小さな舞台が設営されていて、中二階のオルガン演奏用バルコニーとオーケストラ前を上手く使って歌手がセミ・パーフォーマンスを行っていた。
   三角舞台の頂上にマストのような十字が立っていて、最初から水平の柱が右肩上がりで斜めになっていたが、終曲でジャンヌが火刑台上で昇天した時点で水平に戻された。

   合唱は、栗友会合唱団は、オーケストラの背後の格子状の柱の背後から、そして、東京少年少女合唱隊は、中二階のバルコニーで歌っていた。
   ジャンヌ・ダルクは、独仏で舞台や映画で活躍しているアンヌ・ベネットで、シャンソンの夕べを開いて劇場で歌うくらいだから、歌うように語るフランス語が耳に優しく心地よい。
   ジャンヌが対話する修道士ドミニクは、やはり、映画やテレビ、劇場で活躍している役者フランク・ホフマン。
   指揮者から少し離れて、ジャンヌが左手、ドミニクが右手に位置して語る。
   聖処女を歌った品田昭子の澄んだ清らかな歌声など、総て日本人男女の歌手が歌っていたが水準は随分高くなっていると感じた。
   舞台でジャンヌを演じるのは可愛い少女の阿嘉真理之、演出は、アルミンクが依頼してこのシリーズの「サロメ」「レオノーレ」も手がけている三浦安浩。

   何しろ、このオネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」は、初めて聴く曲であり、当日ぶっつけ本番で解説書を読んでも良く分からないので、コメントのし様がないのだが、やはり、初期の映画音楽に関わったオネゲルなので、劇的オラトリオと言うこともあって、色々な音楽がごった煮で入っているかなりメリハリの利いたスペクタクルな感じがした。

   とにかく、田舎の無学な処女が、神の啓示を受けてフランス(?)を救うと言う信じられないようなことが歴史上起こったこと自身が奇跡だが、イングリッド・バーグマンの映画を思い出しながら聴いていた。
   随分前に、フランスを歩いたときに、ジャンヌの故地を訪ねて行ったが、あの時も、ジャンヌのことが信じられなくて、歴史とは、人智を超えたところで神様が操作されているのに感慨ひとしきりであった。
   それにしても、アルミンクのコンサート・オペラ形式で、新しい試みを試しながらスペクタクルな舞台を見せてくれるのは、新日本フィルの特色でもあり楽しみでもある。

   東京都交響楽団の演奏会は、都民芸術フェスティバルの一つのコンサートで、あのチェリストで有名な父親を持つヤン=パスカル・トルトゥリェが指揮で、ブラームスのハンガリー舞曲1,5&6、モーツアルトのクラリネット協奏曲イ長調K.622、そして、スメタナの「我が祖国」のモルダウ他2曲であった。
   トルトゥリェは、カラヤンのように指揮棒を持たずに、指先に豊かな表情を持たせて可なり派手な指揮ぶりで、感極まると台上で飛び上がっている。
   演奏している曲目そのものがポピュラーな所為もあって、指揮者も都響のメンバーもリラックスしてフルパワーの演奏で、ブラームスもスメタナも、非常にメリハリが利いたダイナミックな演奏であった。
   我が祖国の二曲目のモルダウだが、素晴しいハープのイントロダクションの後、管が奏でるモルダウ川の漣が何となく波が乱れていた感じがしたが、流石に、日本を代表するオーケストラで、楽しませて貰った。

   感激したのは、モーツアルトのクラリネット協奏曲で、バセット・クラリネットを奏した三界秀実が素晴しい演奏を聞かせてくれたことである。
   ウイーン・フィルやニューヨーク・フィルなどでも、モーツアルトの協奏曲は、そのオーケストラの首席奏者がソロを奏することがあり、これまでにもコンサートで聴いているが、この三界秀実も都響の首席奏者で、都響の音楽家の水準の高さが分かると言うものである。
   小澤征爾が、神様が手を取って書かせたとしか思えないとモーツアルトの音楽を語っていたが、フルートとハープの為の協奏曲などと共に、このクラリネット協奏曲も天国から聞こえて来るような素晴しく美しい曲である。

   
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