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追記あり。坂坦道「愛」の衝撃(北見市留辺蘂町)

2020年10月27日 20時36分27秒 | 街角と道端のアート
 すみません。9月下旬と10月初めに札幌で見た展覧会を紹介する文章に手こずっているので、北見市留辺蘂町の野外彫刻を紹介する記事を先に出すことにします。

 北見ブックレット第13号「北見の彫刻・彫像MAP」には、留辺蘂 る べ しべの野外彫刻として10点がリストアップされており、そのうち2点については紹介済みです。
 残る8点のうち、石北峠だとか、山のてっぺんだとか、何かと行きづらい場所が多いので、2020年にとりあえず留辺蘂の市街地にある彫刻4点を見てきたので、順次紹介してゆきます。

 この「愛」は、かつて札幌彫刻美術館がまとめた「北海道の野外彫刻」には挙がっていますが、2019年に刊行された「北見の彫刻・彫像MAP」には記載がありません。
 なぜだろうと思って、行ってみて、愕然としました。

 台座しか残っていないのです。

 場所は、留辺蘂支所の真ん前。
 要するに旧留辺蘂町役場前です。
 合併前は1万人を擁したマチの顔ともいうべき位置にあった作品が、跡形も無い状態です。
 作者は「丘の上のクラーク像」などで、道内の美術関係者なら知らない人のない坂坦道(故人)。それがなくなっているとは…。

 いろいろなことを考えさせられました。
 ふだんは、なんとなく
「野外彫刻の寿命は作者よりはるかに長い」
と思いがちで、そのことがある種の慰藉になってもいたのですが、実にあっけなく消滅してしまうんですね。


 裏側から見た図。
 おそらく銘板があったであろう場所は空白になっています。
 背後の建物が旧留辺蘂町役場です。

※2021年1月追記。作品の画像が「札幌彫刻美術館友の会」のサイトの「北海道デジタル彫刻美術館」にありました



 なお、前述の「北海道の野外彫刻」には、同じく留辺蘂町役場前に

シランバ・カムイ(木村敏弘)

という作品があることになっています。

 1994年3月8日付北海道新聞北見面に「モニュメント小話」という小さな連載のコーナーがあり、次のような文章が載っています。

 「森の神」と呼ばれる留辺蘂町役場前の木像は、一九七一年八月、夏休みに道内を旅していた当時、東京芸大大学院生だった木村敏弘(旧姓松永)さんが作った。

 木村さんは当時、同町在住の知人、遠藤金利さんに「木が豊富な留辺蘂で、ぜひ木像を彫りたい」と頼み込み、遠藤さん方の車庫内で制作を始めた。寝食を忘れて取り組む姿に「無精ひげは伸び放題で鬼気迫るものがあった」と遠藤さん。

 像は十日で完成。枯れたオンコの木から、新しく森の神が誕生してはばたく姿を表現した。現在、埼玉県浦和市で木目込み人形製作会社の専務を務める木村さんは当時を振り返り、「木の精霊のインスピレーションが心に浮かんで、一気に制作が進んだ」と語る。(以下略)


 この作品も、少なくてもいまはこの場所にはないようです。


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参考
□坂家三代の芸術家 http://saka-tandou.com/index.html






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