読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

空威張りの中国―自国の首を絞めるだけの経済制裁

2012-09-30 08:41:31 | 政治
wsj日本版から 

中国は以前にも増してその経済力を戦略的な目的で振りかざしているようだ。直近の標的となっているのは尖閣諸島の領有権問題で関係が悪化している日本である。日本製品の通関手続きや日本人へのビザ発給に遅延が生じている。特に日本車などに対する不買運動を心配する声もある。日本企業がこうした経済制裁を不安視するのもわかるが、今のところは少しゆったりと構えていられそうだ。

と言われても、日本人からするとにわかには信じられない話かもしれない。中国は今や日本にとって最大の貿易相手国であり、シティ・リサーチによると2011年時点で、日本の輸出高の24%を占め、日本から中国への投資額は63億ドルに上っている。

 日中関係がここまで発展するのには長い年月がかかった。10年前、中国本土にある日本企業の子会社の売上高は、中国本土での売上高、日本への輸出高、第3国への輸出高でほぼ3等分されていたと調査会社キャピタル・エコノミクスは指摘する。それが今では、中国本土での売上高が円ベースで日本への輸出高の3倍、第3国への輸出高の6倍にまで急伸している。

 こうした数字は中国の不買運動が日本企業の収益に大きな打撃を与え得ることを示している。国内市場が停滞していることもあり、日本企業は債務返済、研究開発、国内での設備投資、株式配当のための資金源として海外市場の売上高にますます依存するようになっている。英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)によると、中国で事業を展開する日本企業は2010年に総額で4980億円の配当を支払ったという。

 だとしたら、中国政府による経済制裁に慌てふためくべきなのか。いや、必ずしもそうではない。日中間の経済競争においてキーワードとなるのは「相互依存」なのである。

 RBSによると、日中の経済関係は過去10年間に規模が拡大したばかりでなく、その内容も劇的に変化したという。日本企業はかつて、安い労働力を利用するためだけに中国に材料を送り、製造したものを他国で売っていた。ところが今日、中国本土にある日本企業の子会社は原材料の3分の2を中国で調達し、作られた製品の4分の3を現地で売っているのだ。

 こうした現状を踏まえると、中国本土にある日本の工場や小売店は本当に「日本企業」なのかという疑問さえ生じてくる。中国産の材料が使われた中国人消費者向けのシャツ、家電などが中国人従業員が働く工場で、中国メーカーのものよりも高い品質水準で製造されているのだ。

 日本の製造業者は今や中国のサプライチェーンにすっかり組み込まれている。RBSによると、中国における日本企業の売上高の約3分の1は「卸売り」だという。その広義のカテゴリーには部品のような企業間取引も含まれる。そして、売上高の25%を化学製品、電気機械、情報通信機器、鉄鋼といった包括的なカテゴリー「その他の製造業」が占めている。

 こうした製品の多くは、中国が自らの発展のために必要としている材料や資本財である。中国がまだ独自に製造できないハイテク機器の部品などについては、特にその傾向が強い。

 日本にとって中国は重要な市場であり続けるだろうが、唯一の市場というわけではない。日本企業の子会社による製造品と非製造品の両カテゴリーの売上高で中国は4位にランクされている。キャピタル・エコノミクスによると、北米地域、中国を除くアジア地域の売上高はそれぞれ円ベースで中国の2倍近くとなっており、それに続く3位は欧州だという。

 日本企業の中国での持続的な業績不振は、日本にとっても中国にとっても問題となる。それでも日本は、中国が分別を取り戻すまで待つことができるだろう。中国政府の一部が考えているよりも長く待てるかもしれないのだ。

 日本はもちろん、米国、中国に続く世界第3位の経済大国であり、先進国水準の1人当たりの国民所得と数十年に及ぶ工業化を成し遂げている。こうしたことは中国のかんしゃくを乗り切る上で強みとなるはずだ。しかし、中国に対してこうした強みを持っているのは日本だけではない。

 この春、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)に侵入した中国漁船に対して強気な対応をしたことで、フィリピン政府は中国の怒りを買ってしまった。中国政府はフィリピン産バナナの輸入を停止し、旅行者には同国への渡航を自粛するように促した。相対的な大きさからしてもこれは不公平なケンカに思える。

 とはいえ、直近の四半期におけるフィリピン経済の成長率は年率5.9%だった。この数字は期待を下回るものだったが、その原因は中国の対抗措置ではなく、農産物の不作にあった。中国の制裁で打撃を受けた産業もあるが、人気の大統領が外国投資や国内消費にさらに弾みをつける一連の改革を実行していることもあり、今のところ経済全般は好調である。中国政府はその経済的影響力を見せつけることに失敗したのである。

 一方のフィリピンには、中国政府が渇望する天然資源が豊富にあり、フィリピン政府はその開発にますます意欲を見せている。こうした状況で、中国がフィリピンに対する制裁を長く継続することなど果たしてできるだろうか。

 その戦略的な苛立ちを外国企業に向けることで、中国は他国と自国の経済に大きな打撃を与え得る。しかし、そうした影響力の行使には代償がつきものである。だからこそ、成熟した大国は、相応の事情がない限り、影響力の行使には出ない。軍事的にも経済的にも大国とは言えない中国にこのような不機嫌な態度を取る余裕などないはずだ。

(筆者のジョセフ・スターンバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル・アジアのコラム『ビジネス・アジア』のエディター)

アップルCEO、地図アプリの不具合を謝罪

2012-09-29 19:45:59 | パソコン
wsj日本版から

米アップル AAPL -2.09% のティム・クック最高経営責任者(CEO)は28日、同社の新しい地図アプリの品質に関しユーザーから多くの不満の声が上がっていることを認めて謝罪した。同社が謝罪するのは珍しい。

 同社ウェブサイトに掲載した声明の中でクックCEOは、自社の地図アプリが改良されるまで当面グーグルなどライバル会社のソフトウェアを使用することをユーザーに提案した。地図アプリをどのように改良するかや、その時期については明らかにしていない。

 同社は1週間前に発売したスマートフォン「iPhone(アイフォーン) 5」で、それまでのアイフォーンに標準装備していたグーグルの地図機能を、独自の地図アプリ「マップ」に置き換えた。最新の基本ソフト(OS)「iOS(アイオーエス) 6」はグーグルの地図機能に対応していない。

 だがアップルの地図アプリはユーザーから酷評されており、地名の間違いや奇妙な衛星画像などが揶揄(やゆ)されている。

 クックCEOは声明で「当社はユーザーに最高の体験を届けるため世界で最高レベルの製品を作ることに取り組み続けている」とした上で、「先週提供を開始した新しいマップは自分たちに課したその基準に達することができなかった」と認め、「迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪、改良に向けて最善を尽くしていると弁明した。

 また、「マップは多くのユーザーが使うほど改善され、ユーザーから寄せられたすべての意見に感謝している」とも述べた。

 さらに異例なことに、この声明ではヤフーなど他社のサービスの利用を提案し、グーグルの地図サービスもウェブサイトにアクセスすれば利用できるとしている。

 絶賛されることに慣れている同社が謝罪するのはここ近年で2回目だ。2010年にアイフォーン4を発売した当時も、特定の方法で持つと受信できなくなるとしてユーザーから苦情が相次いだ。当時のCEOだった故スティーブ・ジョブズ氏は最終的には謝罪したが、デザインの選択が間違っていたとは言わなかった。

 同社によれば、アイフォーン5は先週の発売開始から3日間で500万台が売れたという。それに加え、オンライン注文によるこれまでの販売台数も数百万台に上る。同社はこの日、先週発売した9カ国に加えてさらに22カ国でアイフォーン5の発売を開始、これまでで最も積極的な販売戦略を展開している。

 アップル株価は先週付けた過去最高値705.07ドルから下落しており、この日は前日比2.09%安の667.10ドルで引けている。

記者: IAN SHERR and AMIR EFRATI

中古アイフォーンの人気が高騰 米国では4Sが240ドルに

2012-09-29 08:36:58 | パソコン
wsj日本版から
アップルAAPL+2.43%の新型スマートフォン(高機能携帯電話)「アイフォーン5」は世界中で高い需要があるが、旧アイフォーンの人気も高く、その結果、中古端末の売買を手掛ける企業が急成長している。

 中古アイフォーンは大半は海外に販売されているが、その市場は拡大している。引き出しに眠っている旧機種を売れば、最新機種の購入費用を多少は相殺できることに気づいた所有者が増えているためだ。アイフォーンの世界的な人気の拡大にともなって再販価格も上昇し、中古アイフォーンの需要は非常に高まっている。

 「供給は逼迫(ひっぱく)している。この製品には強力な需要がある」と、買い取りサービスを手掛けるガゼルのイスラエル・ガノット最高経営責任者(CEO)は話す。卸売業者はどんなアイフォーンでも買い取ってくれるが、米国のアイフォーン所有者の多くはそうした需要があることに単に気づいていない。

 また、中古市場では旧機種に元の購入価格よりも高い値段がつく可能性があることも知らない人が多い。アイフォーンを扱う米国の主要通信会社は、顧客を2年契約で囲い込む代わりに、アイフォーン1台につき数百ドルの補助金を支払っているためだ。

 その結果、旧アイフォーンには驚くほど高額な値段がつく場合がある。例えば、昨年10月に発売された記憶容量16ギガバイトのアイフォーン4Sは、23日の時点でガゼロで240ドル(約1万8600円)で買い取られていた。アイフォーン4Sの本来の価格は199ドルだ。

 2010年6月に発売されたアイフォーン4の同様の機種でも145ドル程度で買い取ってもらえる。こうした状況はその他の人気のスマホにも影響している。例えば、韓国のサムスン電子KR:005930+0.98%が今年6月に発売したばかりのスマホ「ギャラクシーS3」の記憶容量16ギガのモデルは、ガゼロで229ドルで売却可能だ。ただし、新しいスマホを買って、それをすぐに中古市場で売って利益を得るのを防ぐため、スマホ購入時には2年契約の加入が必須になっている。

 壊れたアイフォーンでも、修理して再販したり、パーツを再利用できる可能性があるため、買い取ってもらえることもある。AT&TT-0.24%のアイフォーンは海外の通信ネットワークでも使用できることが多いため、AT&Tの機種には再販市場で高い値段がつく場合が多い。

 アイフォーン5が発売されてからは、買い取りサービスは一段と活況を呈している。ガゼロによると、アイフォーン5が発表された12日は、ネット経由で50万を超える見積もりを提供し、過去30日では250万を超える見積もりを出している。同社の取引相手はほぼ全て米国の顧客だ。

 ガゼロでは、アイフォーン5が発表された週の取引数は、アイフォーン4Sが発表された1年前と比較して5倍にまで増えている。

 中古アイフォーンの購入者は、それを卸売業者に売却し、卸売業者は主にそれを海外に販売する。海外では米国のように通信会社が補助金を支給していないことが多いため、中古アイフォーンでも価格が安ければ消費者にとっては十分魅力的だ。

記者: Thomas Gryta


アップルの「グーグルマップ」不採用の理由

2012-09-28 08:26:15 | パソコン
wsj日本版から
米インターネット検索大手のグーグルのエリック・シュミット会長は、アップルが同社の最新携帯端末向け基本ソフト(OS)「iOS6」で、地図ソフトを評価の低い自社製ソフトに切り替えるよりも、グーグルの地図ソフト「グーグルマップ」を使い続けた方が良かったと言う。アップルの自社製ソフト「Maps」がひどい評価を受けているだけに、同会長は正しかったのかもしれない。

 しかし、アップルの事情に詳しい複数の関係者によると、両社は、運転時にターンバイターン方式で音声案内をする(交差点などで曲がる際に音声で知らせてくれる)という「Maps」の主要機能をめぐって対立した。このため、アップルはグーグルマップを自社製ソフトに切り替えるより仕方ないと考えたのだという。

 ターンバイターン方式の音声案内サービスは、グーグルのOS「アンドロイド」では数年前から無償で提供されている。しかしこの方式は、iOSにグーグルマップを提供したこれまでの契約の対象には入っていなかった。

 関係者によると、アップルはこのサービスを非常に欲しがっていた。アンドロイドユーザーが音声案内サービスを受けられるのに対し、アイフォーンユーザーは端末を直接見て方向を確認し、手動で操作する必要があるという状態は、アップルをモバイル分野で明らかに不利な立場にしていたからだ。またアップルは当初の地図パートナーとしてグーグルを選んでいたことから、最大のライバルであるグーグルがiOSの地図の機能群においても重要な部分を牛耳りかねない状況に直面した。

 関係筋によればこれが、製品を通常なら厳格に管理しているはずのアップルにとって、終わりなき「哲学的不快感(philosophical discomfort=自ら当然としている前提に対する自己満足が揺らぐこと)」の原因になった。そこでアップルは、iOSで音声案内を行うのに必要なデータの提供をグーグルに強く求めた。

 しかし、グーグルの事情に詳しい関係者によると、グーグルは、ライバルにそれを簡単に譲り渡す気にはならなかった。そのデータの作成に多額の資金を投じ、音声案内機能がアンドロイドの主要機能だと考えていたからだ。

 また、グーグルがひょっとしてのんだかもしれない条件をアップルは提示しようとしなかった。関係者がAllThingsDに語ったところによると、グーグルは例えば、iOSの機能群にもっと関与したいと思っていた。バックエンド・データを単に渡すのでは不満だったのだ。グーグルはアプリ内ブランディングを要求したが、アップルに拒否された。

 位置情報サービス「グーグル・ラティチュード」の追加も提案したが、これも拒否された。そして、こういったことが両社の主な対立点となっていった。両社の関係がその他のさまざまな理由で既に悪化していたためだ。それにはグーグルがアプリからあまりに多くのユーザーデータを収集しているとのアップルの懸念も含まれていた。

 アップルとグーグルの交渉に詳しい関係者の1人はAllThingsDに対し、「交渉の発火点となった問題はたくさんあったが、最大の問題は音声案内機能だった」と話し、「それが最終的に交渉を決裂させた」と付け加えた。

 この時点で既にひそかに地図サービス企業の買収を進めていたアップルは、音声案内付きの自社製地図アプリの開発を急ぎ、それをiOS6の目玉機能にすることを目指した。そして、アップルはそれを達成できたと感じたため、グーグルマップを完全に排除することを決めた。IT系ニュースサイトのThe Vergeが最初に報じたように、グーグルとの契約期間がまだだいぶ残っていたにもかかわらず、グーグル排除を決めたのだ。

 アップルは6月の世界開発者会議(WWDC)でMapsを発表した。これは一部にとっては驚きだったが、グーグルにとっては驚きでなかった。グーグルはこの時点で、両社の契約がずたずたになっていることをよく認識していた。アップルは9月、iOS6とともに自前の地図アプリの提供を正式に開始した。そしてアップルは今、その代償を払っている。必要だったが少し急ぎ過ぎた、と一部の関係者が指摘した動きに対する代償だ。

 アップルの戦略に詳しい関係者はAllThingsDに対し、「アップルは地図について多くの追い上げが必要なことを認識していた」と話し、「しかし、ここ数日の出来事(アップル地図アプリの不具合)をみると、アップルは実際の到達点よりもはるかに追い上げていると感じていたと思う」と付け加えた。

 かくしてPR上の大失態という現状に陥り、アップルはそれに苦しみ続けている。しかし、この地図ソフトのお粗末な切り替えから打撃を受けるのはアップルだけではない。グーグルはアップルの失敗を笑っているかもしれないが、グーグル自身もアップルとの既存契約解消で打撃を受けた。

 そして今、iOS向けのスタンドアロン型の地図アプリを出そうと必死になっている。グーグルマップはとりわけ米国では、かなりのアイフォーンユーザーに利用されていた。そのユーザー基盤、特にライバルのプラットフォーム上の基盤を突然失うのは痛い。ある位置情報サービス会社の幹部は「100万人のユーザーが端末をアップデートすると、グーグルにとって体落としのように大きな痛手となる」と話す。

 アップルはグーグルマップの排除につながった決断に関するコメントを拒否した。グーグルも同様だった。ただしグーグルはこの機会を自社の地図サービスの宣伝に使った。「われわれはグーグルマップが世界で最も包括的かつ正確で、使いやすい地図だと考えている。われわれの目標はグーグルマップを端末、ブラウザー、それにOSにかかわらず、使いたい人誰もが使えるようにすることだ」と述べた。

記者: John Paczkowski

日本人コレクター、お宝レコード求めて米国へ 希少化で競争が激化

2012-09-27 08:44:36 | 趣味

wsj日本版から
【サンフランシスコ】ある日曜の夜明け前、ダン・オッパーマンさん(65)は年配の日本人男性を連れてレコードフェアの会場に足早に入ってきた。男性は1週間で5000枚のレコードを購入するため、わざわざ東京からやって来た。

 「(レコードの入手は)だんだん難しくなっている」とオッパーマンさんは述べ、「新しいコネや入手先を見つけよう皆必死だ」と話す。

 元政府職員で今は年金生活送っているオッパーマンさんは、コレクター仲間数人と日本のレコード店オーナー向けに買い付けツアーを主催している。その目的は、米国では廃れてしまったか、単に失敗作とみなされているものの、日本のどん欲な音楽ファンの間では需要のある古いLPやCDを発掘することだ。


 「われわれにとってはゴミのようなレコードが彼らにとってはお宝なんだ」と、レコードディーラーのマイク・ベイグさん(43)は話す。カリフォルニア州ロングビーチにあるベイグさんの自宅のガレージには20万枚のレコードが温度と湿度が管理された状態で保管されている。

 日本人コレクター、イマイズミ・タケシさんの掘り出し物の1つは、1986年発売のザ・ローリング・ストーンズのアルバム『ダーティ・ワーク』のプロモーション版だ。本作は、ミック・ジャガーとギタリストのキース・リチャーズとの関係が最も悪化していたとされる時期に製作された作品。イマイズミさんは、同アルバムは入手が非常に困難だが、わずか8ドルで手に入れたと話す。

 日本のレコード店では、国内コレクターの需要を満たすため、数十年前から海外でレコードの調達を行っている。日本の中古レコード店ディスクユニオンのスタッフは、日本のソフトロックやイージーリスニングファン向けの作品を中心にナッシュビルにある中古レコード店グレート・エスケープで1日に2万ドル(約156万円)使ったこともあるという。米国のレコード店の閉鎖が増えるにしたがって、お宝レコードの発掘は難しくなっており、ひそかな競争を呼んでいる。

 調査会社オールマイティー・ミュージック・マーケティングによると、米国内の独立経営のレコード店は1700店と、03年と比較して約半数にまで減っている。インターネットのおかげでレコードの売り手も買い手も価格にうるさくなっており、ディーラーの利益は減っている。レコードは米国でも再びブームになっており、新たな競争を生んでいる。

 日本レコード協会によると、日本のCD、レコード、カセットテープの売上高は世界の売上高の25.4%を占め、米国を抜いて世界一になっている。また、米国のタワーレコードは06年に店舗廃業に追い込まれたが、日本のタワーレコードは今も店舗経営を続けており、今月87店目をオープンする。

 だが、日本での古いレコードやニッチなレコードの需要は現在、これまでになく高まっている。

 ディスクユニオンの海外買い付け担当のワタセ・ユウジさんは、円高による購入価格の低下も手伝って、最近はここ数十年で最も頻繁に米国を訪れていると話す。どのようなレコードを購入するつもりなのか尋ねたが、それは企業秘密だからと教えてもらえなかった。

 このビジネスでは、掘り出し物を見つけるには、つての多さが物を言う。独立系のレコードバイヤー、ウエノ・オサムさんは、日本のあるバイヤーに代わって10%の手数料でサンフランシスコでCDの買い付けを行っていると話す。どのようなCDを探しているのかについては、価格の高騰を懸念して明かしてくれなかったが、通常米国では在庫一掃セールのセクションに99セントで販売されているような作品だとだけ教えてくれた。

 日本人バイヤーの買い求めるレコードの多くは日本で高い値段で売れている。日本のコレクターに人気のアーティストには、1950年代にシングル『(How Much Is) That Doggie in the Window』がヒットしたポップ歌手のパティ・ペイジや、80年代のアイドル歌手デビー・ギブソンなどの女性シンガーもいる。パティ・ペイジの同シングルは、米国では5ドルで販売されているが、日本では30ドルで販売されている。また、デビー・ギブソンのLPはネットオークションサイト、イーベイで200ドルで売れるという。日本人には「甘ったるいポップミュージックが好まれる」と、コレクターのアレック・パラオさんは話す。

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日本人バイヤーには希少で高額なレコードを求めている人もいれば、米国で3ドルで仕入れて日本で20ドルで売れるようなレコードを探している人もいる。日本人バイヤーは、たとえ安い商品であっても状態を入念にチェックすることで知られている。彼らの多くが商品の品質を顧客に保証しているためだ
 だが、ディーラーのベイグ氏は、自主製作の珍しい作品など、なかには「そもそも誰も欲しがらなかった」ために手に入りにくいレコードもあると話す。

 そのほか人気なのが、イエスやトラフィックなどの70年代の前衛的バンドや、ボンジョビやアイアンメイデン、ミスター・ビッグなどの80年代に人気を博したヘビーメタルバンドだ。それらアーティストのアルバムはKUSFフェアでは10~15ドルで販売されている。ディーラーによると、おおむね日本ではそれらレコードは米国の約3倍の値段で売れるという。

 「一体どこでそんなもの見つけたんだ、と思うことがときどきある」と、ミスター・ビッグのボーカリスト、エリック・マーティン氏は話す。ミスター・ビッグがかつてリリースした電気ドリルの形をしたレコードは日本のマニアの間でいまだに垂涎ものだ。(ミスター・ビッグが1991年にリリースしたシングルで、ギタリストのポール・ギルバート氏が先端にピックを取り付けたドリルを使ってギターを弾いているが、同シングルは現在ネットで13ドルで販売されている)

 マーティン氏は数年前、ソニー・ミュージックに話を持ちかけられ、日本の女性アーティストのバラード曲をカバーした『ミスター・ボーカリスト』というアルバムを発売した。08年に発売された同アルバムは売り上げ約20万枚を記録し、マーティン氏は日本でたちまち人気者になった。

 10月には次回作『ミスター・ロック・ボーカリスト』のプロモーションで東京を訪れる予定だ。マーティン氏は日本には大きな恩を感じているとしながらも、仲間のロックシンガーに「ボーカリスト」のあだ名で呼ばれるたびに、いまだに気まずい思いがするとし、「格好のからかいのネタにされている」と話す。

 米国で人気がない一部アーティストに日本人が熱狂的な関心を示す背景には、日本の音楽業界の戦略が関係している。日本の音楽業界は長年、本国では全く売れていない、あるいは下火の欧米のロックバンドをプロモートしていた。これは、米音楽業界との競争を避けるための戦略だった。それがきっかけとなって、80年代のポップメタルのような酷評を受ける米音楽ジャンルにまでファンが急増した。

 さらに、日本の団塊の世代は米国のジャズやロックを聞いて育ったため、郷愁の念からキッスのような往年のバンドの人気にも火が付いている。また、オーストラリアのモナシュ大学教授で『Japanese Popular Music』の著者でもあるキャロライン・スティーブンス氏は、日本人のレコード収集癖は鑑識眼にこだわる日本特有の文化からきているとも話す。

 競争の激しい世界だけにバイヤーも慎重だ。オッパーマンさんによると、今月初めの買い付けツアーでは、日本人客をカリフォルニア州マリン郡のサクラメントとサンノゼに住むコレクターの自宅に案内したという。誰から何を買ったのかは教えてもらえなかった。その日本人客へのインタビューも断られた。

 サンノゼ在住のディーラー、バド・ネマイヤーさんによると、その時期に日本のあるバイヤーがネマイヤーさんからイージーリスニングや70年代ロックを中心に200枚ほどレコードを購入したという。「ピンクフロイドを探し当てていた」と、ネマイヤーさんは話す。

 サンフランシスコのレコードフェアでは、オッパーマンさんの日本人の友人が朝の5時半からほこりまみれのLPの束をかきわけていた。朝早くから訪れる客に備えてディーラーはまだ準備を始めたばかりだった。日本人男性のアシスタントで、ロックに詳しいメガネをかけた若い男性もLPの束を入念に調べていた。

 バイヤーの目は、わずか4ドルのアルバムであっても実に厳しい。「不動産業界ではとにかく立地が重要だと言うだろう?」とオッパーマンさんは述べ、「ここではとにかく状態が重要なんだ」と話す。

記者: Neil Shah

子どもを携帯ゲームで釣る米菓子メーカー

2012-09-26 08:28:02 | パソコン
wsj日本版から
米国の食品会社は、タッチスクリーンの携帯電話やタブレット端末向けのシンプルなゲームに自社商品を埋め込んで子どもの歓心を買おうとしている。こうした新しいメディアは、土曜の朝のテレビ広告よりもはるかに安いが同じぐらい効果的かもしれない。


 こうした携帯ゲームは、新しい技術が企業と若い消費者の距離を縮め、米国人の購買行動を変えようとしていることを示している。

 「アプリはもちろん子どもをターゲットにしている」と、J&Jスナックフーズのマーケティングを担当するメリンダ・チャンピオン氏は語る。同社はスナック菓子の「スーパープレツェル」や炭酸入りのシャーベット「ICEE(アイシー)」などのメーカーだ。「子どもが『おかあさん、スーパープレツェルが食べたいなあ』と言ったら、お母さんは買おうかと思うでしょう」と話す。

 同社のいくつかのアプリはすでに人気を博している。「SuperPretzel Factory」は、7月半ばのリリース以降、アップルのアップストアの無料子ども向けゲームの中でトップクラスの人気を誇っている。「Icee Maker」は昨年のリリース以来800万回以上ダウンロードされているという。



スマートフォンやタブレットを使っている子どもとパソコンを使っている子どもの年齢別比率
 スナックや清涼飲料のメーカーは、昔からテレビやインターネットへの広告について政府や世論の圧力を受けてきた。そうした業界にとって、携帯端末は商品への需要を喚起しブランドへの忠誠を固めることができる、まだ規制が及んでいない新しい媒体だ。

 感覚的に分かりやすいため、幼い子どもは字が読めるようになる前にタッチスクリーンの扱いを覚える。調査会社NPDグループの調査結果によると、4~5歳の米国の子どもの37%がスマートフォンやタブレット端末、アイポッドタッチなどを使っている。この年代でパソコンを使ったことがあるのは25%以下だ。

 食品業界のゲームは一般に、絵もシンプルでゲームのルールも簡単で小さな子どもでもすぐに遊べるものが多い。

 こうしたゲームの子どもへの影響について、責任を持つべきなのは両親か政府かについて議論が起きている。

 「子どもは、いつもコンピューターの前に座っているわけではないので、インターネット広告には限界がある。だが携帯電話を持っていれば実は広告そのものであるゲームを学校でもどこでも時間を選ばずに遊べる」とイエール大学のラッド食糧政策・肥満対策センターで広告の調査を手掛けるジェニファー・ハリス氏は話す。


 インターネットには、子どもに対する広告についての連邦政府の規制はない。消費者問題の運動家は、連邦通信委員会(FCC)が子どもへのテレビ広告を規制している以上、インターネット広告にも規制が必要だと主張する。

 子ども向けのテレビ広告の規制問題は1960年代にさかのぼる。土曜の朝のアニメ番組に菓子のコマーシャルが殺到したためだ。FCCは、子どもは広告に毒されやすいとして、広告の時間を1時間に10.5分に制限し、番組で商品を見せることを禁じた。

 だが、1980年代の連邦議会は、広告業界を監督する連邦取引委員会(FTC)が子ども向けの食品に関する広告に新たな規制を設けることを禁じた。

 FTCと3つの規制当局は昨年、全ての媒体で、子どもたちへの広告を健康的な食品に限るとするガイドラインのドラフトを作成した。だが、メーカーが反発した。

 FTCで宣伝広告を担当するメアリー・イングル氏は、「議会が政府の提案した自主規制さえ後押ししようとしないのは明らかだと思う」という。

 食品大手のクラフト・フーズなどは、1997年に立ち上げられたインターネットの「キャンディースタンド・ドットコム」に、率先してゲームを提供してきた。

 だが、米国の2~19歳のの5人に1人が肥満というショッキングな数字が明らかになり、子どもの肥満問題が深刻さを増してきたことで広告規制があらためて議論になっている。 


4~14歳で携帯電話、アイポッドタッチ、タブレット端末を使っている子どもの比率
 大手食品メーカーは2006年に、消費者と企業が消費者の信頼を高めることを目的とした活動を行っている非営利団体の商事改善協会の下に子どもの飲食料広告を改善するための自主規制組織を設立した。

 それから1年でマクドナルド、バーガーキング、クラフトを含む12社が、子どもの健康を増進する食品の広告を推進する運動を開始した。シリアルのブランドを多数展開するポスト・ホールディングスとチェリオスなどのブランドで有名な食品大手ジェネラル・ミルズは、ゲームや甘い食品を宣伝するウェブサイトを閉鎖した。08年にはこの運動に参加したメーカーは大きな効果を上げていると宣言した。

 しかし、その頃、スマートフォンやタブレット端末が消費者の行動を変化させ始めた。今、こうしたメーカーは子供受けのする携帯端末ゲームへの取り組みを強化している。

 ガムやキャンディーのブランド、リグレーはこの夏、新しいスマートフォンのアプリ「Candy Sports」をリリースした。同社のキャンディーのブランド、スキットルのロゴを狙ってボールを打ったり、スターバーストのマークを狙ってサッカーボールを蹴ったりするゲームだ。リングリーの広報担当者のジェニファー・ジャクソン=ルツ氏によると、このアプリは十代の若者と大人をターゲットにしているという。

 食品大手クラフト・フーズは最近、「Dinner, Not Art.」というアイパッド用のアプリをリリースした。同社もターゲットは十代の若者だとしている。だがこのアプリのテレビ広告には2人の小学生のような子どもが出演している。

記者: Anton Troianovski

東欧のハッカー、アジアよりも洗練されている

2012-09-23 09:56:12 | パソコン
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サイバーセキュリティー会社が発表した新しいリポートは、東欧のハッカーはアジアのハッカーより洗練された方法で米国の企業などに攻撃をしかけていると結論づけた。

 東京に本拠を置くトレンドマイクロ JP:4704 +2.12% は世界的規模で発生した2件のコンピューター攻撃を比較し、際立った違いを発見した。東欧のハッカーらは金銭を盗むために「プロの殺し屋」になることが多いが、東アジアのハッカーは企業や政府の機密事項を盗むことを目的とする大きな組織の一部であることが多いという違いだ。

 トレンドマイクロのサイバーセキュリティー担当トム・ケラーマン氏は、東欧が「ハッキングという窃盗の親方が集まる真の重心になった」と指摘する。

 ケラーマン氏は東欧のハッカーとそれ以外のハッカーを区別する3つの歴史的要因があると言う。数学とチェスに長らく重点を置いた教育的文化、堅固な地下経済、インターネット時代に適応した犯罪活動で巧みに開発された“取引技能”がそれだ。

 同社のリポートは、トルコの複数の銀行を最近攻撃した「タイニー・バンカー」と呼ばれる小さなプログラムに言及し、「東欧のマルウェアは、マルウェア界の『インペリアル・イースター・エッグ』のように非常に優雅に作られている」としている。

 こういったタイプの脅威と戦うためには、企業はより多くの時間をかけて脅威を検知し、ファイルの保全性をモニターする必要があるとケラーマン氏は主張する。

 東欧のサイバー「奇襲隊」に比べ、東アジアのハッカーは「歩兵」のように振る舞う。大胆さにやや欠け、攻撃を仕掛ける際には出所を隠すことをあまり気にしない。

 マルウェアを1年間分析した結果に基づくリポートの結論は、米連邦政府のコンピューターセキュリティー担当者らの分析と同様で、旧ソ連圏のハッカーは金融機関に主に焦点を絞り、金融システムから金銭を吸い上げる新しい方法を編み出している一方、アジア圏のハッカーは米政府や政府と取引している軍需企業を繰り返しターゲットにしてきたということだ。

記者: Devlin Barrett

アップルの地図アプリに数々の欠陥

2012-09-22 08:43:52 | パソコン
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米アップルは、自社の携帯端末からグーグルの地図ソフト機能をはずそうとしているが、それがユーザーからの反発を呼んでいる。同社には珍しい戦略的な失策だ。 

 アップルは、最新基本ソフト(OS)「iOS(アイオーエス)6」の一部として19日に発表したアップル独自の地図ソフト機能をめぐり、ユーザーから不満の声を多数受けている。2007年のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」発売以降、グーグル地図データ機能はアイフォーンの一部だったが、アップルは、iOS6に独自の地図アプリを盛り込んだ。 


 しかし世界中のアイフォーンやタブレット端末「iPad(アイパッド)」のユーザーは、アップルの新しい地図アプリを使ってみて欠陥に気づき、多数の苦情を寄せた。例えば、企業や歴史的建造物の名称が間違っていたり、あるべき道路がなかったり、ミシガン州アンアーバーの川が寸断されていたり、特定の名称、例えば「Haneda Airport(羽田空港)という言葉で検索しても何も出てこなかったり、という状態だ。 

 ソーシャルネットワークなどネット上では、ユーザーたちが「グーグル地図を返せ」などとしてオンライン抗議団体を直ちに結成し、アップルの新地図アプリ「Maps(マップス)」では期待された機能が欠如している上、不正確な情報が盛り込まれていると批判した。一部のブロガーは、アップルの地図とグーグルの提供する地図のイメージを比較し、アップルの地図は不正確で古いと指摘している。 

 これに対しアップルの広報担当者は、同社の地図サービスは大掛かりな取り組みだと強調、これを利用する人々が増えるにつれて、サービスも良くなるように設計されていると弁明。同担当者は「われわれは顧客からのあらゆるフィードバックを尊重し、顧客の使用体験が改善するように努力している」と述べた。 

 アップルの地図アプリをめぐる論争は、同社とライバルであるグーグルとの間の大きな戦いの一環だ。グーグルは急拡大する携帯ソフト・端末市場で主導権を握ろうと懸命だからだ。地図ないし位置情報に関連した携帯広告も大きなビジネスだ。調査会社オーパス・リサーチによれば、この種の広告は、2012年の携帯広告市場規模25億ドル(約1950億円)の約25%を占め、2010年実績の10%からシェアが倍増すると推定されるという。このシェアは、位置情報を利用したアプリの数が増加するにつれて、拡大すると予想されている。

記者: Ian Sherr

理解に苦しむ中国デモ隊の反日過激行動、wsj日本版から

2012-09-20 08:50:42 | 新聞
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中国の多くの都市で過去数日間、デモ参加者が日本企業を襲撃したり、放火したりしているが、理解に苦しむ行動だ。「平和的」なデモ参加者でさえ、激烈な文言を記した横断幕を掲げ、中には日本せん滅を求める横断幕もあった。一体何のためか? 

日中両国は現在、中国で釣魚島、日本で尖閣諸島と呼ばれる東シナ海に浮かぶいくつかの無人島をめぐってもめている。これらの島々は米国が1972年に(沖縄と一緒に)日本に主権を返還したものだ。米国のパネッタ国防長官でさえ、18日に北京の米大使館の外で小規模な抗議活動に見舞われた。米国の同盟国である日本に軍事支援を行っている罪で抗議を受けたのだ。支援の中には米国がミサイル防衛のため、日本に2つ目の高性能「Xバンド・レーダー」を配備するとの発表も含まれている。 

 前回、中国各地で大規模な反日運動が起こったのは2005年だった。当時も、今回と同じような疑問が提起された。北京(中国政府)がどの程度、抗議活動の指揮をとったかだ。その答えは完全には明らかでない。中国国営メディアは当初、憎しみの炎をあおっていたが、その後沈静化を試みている。警察はデモ参加者に行動の自由を与えたが、怒りをはき出したら帰宅するよう命じた。 

 この二重のアプローチは中国政府の対応の典型である。同国共産党は反日感情をくすぶらせ続けることによって恩恵を受ける。それは共産党の歴史的正統性が日本の侵略者を駆逐し(あるいは駆逐したと思われており)、中国を世界における適正な地位に復帰させたところに由来しているからだ。しかし中国政府は、日本政府に対する態度が生ぬるいとデモ参加者に非難されないようにしながら、日本に対する怒りが度を越さないようにしなければならない。

 一方、日本のナショナリストも過去の戦争の遺産への対応を難しくしている。05年当時の論争は主として、第2次世界大戦中の日本の残虐行為を言いつくろった日本の教科書の是非だった。今回は石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島を民間地主から購入すると提案した。石原氏は極端なナショナリストで、彼がトラブルを引き起こしかねないと懸念した日本政府が介入して尖閣諸島を購入した。 

 野田佳彦首相はこうすることによって、北京との摩擦を最小限にするため責任ある行動をしたといえる。ところが中国はこれに飛びつき、日本の挑発行為だと主張した。北京が尖閣諸島の領有権を主張し続けるには、恐らく何らかの形の外交上の抗議が必要だったのだろう。しかし、同国は軍事的な小競り合いのリスクを高める措置を講じた。14日には何隻かの沿岸警備船と漁船が日本の沿岸警備船とにらみ合い、17日には中国メディアは漁船の大群が尖閣諸島に向かっていると報じた。 

 これらは全て中国政府が自国経済の悪いニュースや当惑せざるをえない政治スキャンダルから自国民の目をそらそうとしていることを示唆している。だが中国のナショナリズムの深さを過小評価したり、共産党の行動を純粋にシニカルにみようとするのは誤りだろう。 

 学者Guo Yingjie氏が書いたように、現代中国には2種類のナショナリズムがある。文化的ナショナリズムと政治的ナショナリズムだ。文化的ナショナリズムは伝統の温存と、中国人であることの本質とみなされる価値を強調する。政治的なナショナリズムは主権を防衛できる強力な国家の建設に集中し、伝統文化を発展の障害とみなす。 

 こうした2つの見方の衝突は、外国文化との愛憎関係を生み出すとともに、アイデンティティの危機を生み出したとGuo氏は考える。近年、共産党はこれらを一緒にしようとして、儒教的価値観を統合した「中国モデル」を称賛してきた。

 しかし、ネイティビズム(排外主義)への復帰は、外国思想の採用と、イノベーション(技術革新)に基づく経済への次の歩みに必要な改革を阻害しかねない。これまで中国は、ソ連がかつてそうしたように、国際的な現状を覆そうとまではしていないが、このような新たな超ナショナリズム(国家主義)は現状を変化させる恐れがある。

 究極的に中国は、外国貿易や投資を育んで安定的で理性的で信頼できる大国としての評判を得るという国益よりも、ナショナリスト的な衝動を優先したことによって、代償を支払うだろう。

 問題は、中国の指導者たちがその最悪の衝動を抑えようとしないならば、その代償が高価にならざるを得ず、その代償を支払わなければならないのは中国以外の何者でもない、ということだ。


米大統領の椅子に子供を座らせる方法―「デービッド」と名付けないこと

2012-09-19 08:16:51 | 新聞
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チャールズ、デービッド、ジョセフ、マイケル、ロバート。これらは米国で最も多い男性の名前トップ10のうちの5つだ。だが、43人の歴代米大統領の名前はいずれもその5つの名前ではない(ただし、ドワイト・アイゼンハワー大統領のミドルネームはデービッド)。

 それよりも、ウォーレン、ザカリー、チェスター、リンドンなどあまり一般的ではない名前だ。ミラードやラザフォードといったかなり珍しい名前の大統領もいた。フランクリンという一般的でない名前の大統領は2人いたが、はるかに一般的なフランクという名前の大統領は1人もいない。ハリーという名前の大統領は1人いたが、ハリーは愛称としては一般的だが、名前としてはそうでもない。

 バラクにしろ、ミットにしろ11月の選挙でどちらの候補が選ばれても、変わった名前の大統領という伝統は続くことになる。ミット・ロムニー氏が選ばれた場合、ファーストネームの代わりにミドルネームを使用する4人目の大統領になる。ロムニー氏のファーストネームは、「ウィラード」という一般的でない名前だ。過去にはスティーブン・グローバー・クリーブランド大統領、トーマス・ウッドロウ・ウィルソン大統領、ジョン・カルバン・クーリッジ大統領がファーストネームの代わりにミドルネームを使用していた。

 もちろん、一般的な名前の大統領も誕生している。ジェームズという名前の大統領は6人いる(マジソン、モンロー、ポーク、ブキャナン、ガーフィールド、カーター)。ウィリアムという名前の大統領は4人いる(ハリソン、マッキンリー、タフト、クリントン)し、ジョンという名前の大統領も4人いる(アダムズ父子、タイラー、ケネディ)。さらにジョージは3人いる(ワシントン、ブッシュ父子)し、アンドリューは2人いる(ジャクソン、ジョンソン)。

 だが、半分以上(22人)がユニークな名前を持っている。英国やオランダ系でない大統領(アイゼンハワー、ケネディ、オバマ)が誕生したのは第2次大戦後であることを考えると不思議だ。

珍しい名前を1つどころか、2つも持っていた大統領も2人いる。グラント大統領の生まれたときの名前はハイラム・ユリシーズ・グラントだった。だが、陸軍士官学校に入学したとき、手続き上のミスで、ユリシーズ・S・グラントと登録されてしまった。Sは母の旧姓であるシンプソンから取ったものだったが、結局グラント氏本人もその間違いを正さなかった(一説によると、グラント氏は『U.S.グラント』という響きが非常に気に入っていたという。また、その名前からグラント氏は士官学校では、米国政府を意味するUncle Samから取って『サム』と呼ばれていた)。ジェラルド・フォード大統領は、生まれた当時は父の名前を取ってレスリー・キングと名付けられたが、3歳のときに母親が再婚したため、継父の名前にちなんで改名された。 

 米大統領に非凡な名前の人物が多いことは何を意味するのか。君主と比較しようかとも思ったが、歴代君主は通常血族関係にあることが多く、そのような場合同じような名前が用いられることが多いため、比較対象にならない。ノルマン人の征服以降、イングランドではスティーブン(1135~54年)とジョン(1199~1216年)の2人の王(いずれも最悪の君主であった)を除いて、同じ名前の君主が2人以上存在している。

 では、副大統領はどうか。過去47人の副大統領のうち、ジョンが5人、トーマスが3人、ジョージが3人、ダニエルが2人、リチャードが3人、ウィリアムが2人、ヘンリーが2人、チャールズが3人いる。ジョセフは1人いるが(現職)、やはりデービッドやマイケル、ロバートは1人もいない。1984にジェラルディン(フェラーロ)という名の副大統領候補がいたが、ジェラルディンという名の米国人政治家は同氏が初めてだ。大統領と同じく、歴代副大統領の半分以上(24人)が変わった名前を持っており、中にはエルブリッジやアドレー、ヒューバート、ギャレットという珍しい名前もある。その他のユニークな名前にはハンニバル、スカイラ―、リーバイ、アルベンがある。

 では、候補にはなったものの大統領にならなかった人たちはどうだろうか。現代の2大政党制が誕生した1856年以降、大統領選で敗れた主要政党の候補者は30人いる。ジョンは4人、アルフレッドは2人(いずれもアル・スミスとアルフ・ランドンという愛称で常に呼ばれていた)、ウィリアムは2人、ジェームズは2人いる。マイケル(デュカキス)とロバート(ドール)もそれぞれ1人いる。だが、ホレイショやホレイス、アルトン、ウェンデル、バリーという珍しい名前もある(バリーはハリーと同じく、愛称としては一般的だが名前としては珍しい)。

 こうした考察から筆者が導き出した唯一の結論は、変わった名前の人の方が米政界で名を成す可能性が高いということだ。恐らく名前を覚えてもらいやすいためだろう。したがって、自分の息子や娘に米政界でトップに立ってもらいたい、あるいはトップに近づいてもらいたかったら、変わった名前をつけた方がいい。間違っても「デービッド」とつけてはいけない。デービッドは米国で6番目に多い名前だが、歴代の米大統領にも副大統領にもデービッドという名の人は1人もいない。それよりも、ビュフォードやクレメンタインと名付けた方がいいだろう。

記者: John Steele Gordon