あるエッセイストが九州の弥生式遺跡に見学に行った。そこに土製のお棺が展示されている場所があって、彼はその展示品を見ていた。そこへ親子の二人連れが来て七、八歳くらいの子供が父親に尋ねた。
子「お父さん、この人たちなぜ死んだと。」
父「病気やら怪我やらで死んだとやろ。」
子「お父さん、人はなぜ死ぬと。」
父「みな、順番に死ぬとよ。お父さんもいつか死ぬようになっとるたい。」
子「じゃあ、僕もいつか死ぬと。」
父「いいや、お前は死なん。ずっと生きとる。大丈夫たい。お前だけは死なんようになっ とる。」
これを聞いていたエッセイストは涙ぐむまでに感動した。そして自分も九州弁で
「大丈夫たい。二人ともずっと死ぬこたぁなか。」とエールを送ったと言う。
立派な父親だが、普通、親はこう言うときどのように答えるのだろう。
自分ならどう答えるのか、今は判らないままでいる。