読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

日本の部活に異議あり! スポーツ「偏愛」の弊害

2013-02-25 18:34:19 | 教育
クォン・ヨンソクのTokyo Eye(NewsWeek)から



 スポーツ体罰問題が世間を騒がせている。問題が表面化したことはいいが、「体罰は悪い」の一点張りで、いつもながら根本的な問題には触れられていない。

 問題の背景には、日本独特の過剰な部活文化と、スポーツ選手が英雄視され商品化される「スポーテインメント」の存在、それらを支える日本人の「スポーツ依存症」(「スポーツ偏愛症」)がある。

 僕は日本の部活文化が羨ましかった。目標に向かって仲間が1つになる、汗と涙にまみれた歓喜の青春物語に憧れていた。韓国の青春に部活という2文字はない。進学希望者はひたすら勉強だけで、運動部に所属するのは「選手」を目指す学生だけだ。

 だけど日本の部活文化にも問題はあった。僕は新宿の中学校のサッカー部員だったが、部員の大半が不良という別世界だった。サッカーが好きで入部したのに、練習はひたすらランニングとうさぎ跳びと玉拾い。先輩の機嫌次第ではパンツ1丁でのしごきが待っていた。先輩が試合に負ければ、後輩も「五分刈り」の連帯責任は当然だった。

 戦後日本で部活が活性化したのは敗戦と関係がありそうだ。戦前までの日本人は長年、戦争と身近な生活を送ってきた。そこで醸成されたエネルギーと軍事文化が戦後に行き場を失い、スポーツへはけ口を求めて部活文化へ入り込んだのではないだろうか。

 科学に基づいた練習よりも、上下関係と大声と精神論が強調される背景だ。実際、日本での部活体験は韓国で兵役に就いた際にとても役に立った。上官の命令に絶対服従し、理不尽に耐えることを体が覚えていたからだ。

■体育会に寛容過ぎる日本社会

 もちろんこんな部活文化は昔の話で、今はもっとリベラルで合理的な指導が行われているだろう。しかし近年も、スポーツに熱心過ぎることの弊害は存在する。過剰な部活熱は子供の将来だけでなく、子供に付き合う親の貴重な週末をも奪っている。

 今の子供たちの将来の夢は、サッカー選手などアスリートが筆頭だ。そのせいか、皆が選手になれるはずがないのに、部活はあまりに本格的過ぎる。小学生からサッカーや野球のチームに入り、有資格のコーチから本格的な指導を受ける。週末は土日とも試合がセットされ、子供たちは結果が求められる緊張感の中でプレーをする。親も週末返上で試合に奉仕する。僕の友人は娘がサッカーにはまり、試合引率と審判などで週末は丸つぶれという。
 
 しかし一番許せないのは、大学の体育会の甘えの構図だ。いまだ部活と就活のために大学に来たと思える学生が結構いる。練習を理由に堂々と授業を休み、試合があるので報告の準備もできないという。試合でけがをして長期に大学を休んでも平気な顔だ。それでもOBのコネや、体育会出身の適性が買われて就職は問題ない。これで本当にいいのだろうか? 日本社会は学業とスポーツが本末転倒になっている部活文化に対して、あまりに「寛容」過ぎる。

 そして部活文化と同様におかしいのは、日本人のスポーツ偏愛症だ。その最たるものがあの世にも無駄なプロ野球の「キャンプリポート」だろう。

 選手が自主トレで「キャッチボールを始めた」「ブルペンに入った」「フリー打撃で打った」──。そんなの「あたりまえ体操」だろ! それならアイスホッケーのアジアリーグなど、面白い試みをしている競技をきちんと報じてはどうか。

 日本人はスポーツ選手や報道が好きなのに、実際にはスポーツを楽しめていない。部活は本格的過ぎるしスポーツは金がかかり過ぎる。気軽に楽しめるレジャーとしてのスポーツ振興こそ、日本を元気にするというアベノミクスのもう1つの矢に加えてほしい。

学校への銃持ち込みは日常茶飯事

2013-02-24 10:45:21 | 政治
wsj日本版から

規制議論の裏で変わらぬ米社会


ユタ州サンディで開かれた銃の展示会に参加する家族(2012年1月)
米国では、銃規制の議論が活発化している。12月に東部コネティカット州の小学校で子供20人を含む26人が殺害される銃乱射事件が起きたことを受けて、2期目に突入したオバマ大統領も銃規制の強化に向けて精力的に動いている。しかし、その裏では、銃が絡んだ事件が依然として後を絶たない 。特に、子供や若者が犠牲になる事件も引き続き相次いでおり、数週間前には南部アラバマ州で銃を持った男が小学生を乗せたスクールバスに乗り込み、運転手を射殺して5歳の男の子を人質として連れ去り、自宅の地下壕に約1週間立てこもった事件が連日話題となった。

そうしたなか、NBCニュースが米国の子供を取り巻く恐ろしい実態を示す調査結果を明らかにした。それは、生徒が銃を学校に持ち込む事件が日常的に起きているということだ。今年に入って公表されたものだけでも調査時点で48件、登校日で換算すると1日2件以上報告されていることになる。

未成年の犯罪は情報が伏せられる場合が多いことを考慮すれば、実際はこれを大幅に上回る数の銃が学校に持ち込まれていることは容易に想像できるだろう。

例えば、最近では東部バージニア州とペンシルバニア州で、どちらも小学2年生の男の子が弾丸の入った銃を学校に持ち込み、友人に見せびらかして停学処分を受けた。また先週には、西部ワシントン州で小学5年生の男の子2人がクラスメートの女の子を殺害する目的で銃とナイフを持って登校し、逮捕された。

小学生の場合は興味本位で持ち込む場合が多いようだが、年齢が上がるほど自己防衛や他人に危害を与える目的で銃をカバンなどに忍ばせるケースが増える。

米国では、「自己防衛=銃所有」という発想が極めて根強い。それは、武器保持を認める合衆国憲法修正第2条がもともと、先住民やヨーロッパ諸国の軍隊による攻撃などに対して一般市民が自ら防衛に当たれるために制定されたという歴史的背景もあるが、現在ではむしろ、犯罪の大半で銃が使用されるため、そうした脅威に対するには同様に銃を持つべきとの考えが根本にあると思われる。

2011年のギャラップ世論調査によると、米国成人の実に47%が世帯として銃を所有していると答えている。また、複数の銃を保持する人もいるため、米国内には3億丁以上、つまり1人1丁に相当する銃が出回っていると推計されている。特に、保守色の強い南部や中西部、そして共和党支持者の間で銃所有率が高い。

もちろん、法律に則った銃所有者が大半だが、これだけ銃が蔓延した社会では子供達が犠牲となる事件が頻発するのもある意味必至と言えよう。子供の権利擁護団体である児童保護基金が先月発表した調査によると、2010年に銃で殺害された19歳以下の子供は約2700人に上り、毎日7人、毎週52人の子供が銃で命を奪われている計算になるという。

フクシマは日本のロボット産業の追い風になるか

2013-02-23 10:35:29 | 科学
wsj日本版から
ウォール・ストリート・ジャーナルの開催したカンファレンス「イノベーションの未来」では20日、パネリストらがイノベータ―になるのに必要な能力や世界的に見た中国の役割、創造力の育成、経済減速時に生じる機会について討議した。以下はその抜粋。
福島原発事故は日本のロボット産業にとって追い風となるか?

福島第1原発の事故後に活躍した米国製ロボット(2011年4月17日)
ただ、競争は厳しくなるかもしれない。グリシン氏によると、急激なコスト減や製造の外注化によって、ロボット会社を立ち上げることはかつてないほど容易になったという。5年前には考えられなかったことだが、現在では、技術者5人程度と20~30万ドルの資金があれば会社立ち上げが可能だ。ロシアで最も成功した若手起業家の1人とされるグリシン氏は、自然災害でロボット産業への関心に火がついたことは過去にもあるという。1986年のチェルノブイリ原発事故後にロシアでロボット産業が発展しように、日本でもこの分野でのイノベーションが増えるかもしれない。

同氏は起業家志望に対して、ロボットの機能がどんなに素晴らしくても、見かけをよくすることも怠ってはならないとアドバイスする。醜いロボットは誰も買わないという。

無人機メーカー、米国内市場に照準

2013-02-22 09:12:57 | 経済
By DION NISSENBAUM

wsj日本版から 

【ワシントン】無人機の技術をめぐる論争が絶えないなか、無人機を製造する米国企業は、新たな開拓地として米国市場に照準を合わせている。

プライバシーに対する懸念から犯罪の監視目的とする無人機2機の使用をキャンセルしたシアトル市
 防衛費の削減によって、海外の戦場での偵察や敵兵士への攻撃のために主に利用される無人機への歳出抑制が見込まれている。このため、メーカー側は大学や警察、国境警備機関、さらには民間企業といった国内の最前線で商機を見いだそうと努めている。

 米連邦航空局(FAA)はそれに応じる形で、米国内で6カ所設ける試験飛行空域の候補地を探し始めた。この空域では米国の混雑した商業空域で無人機を安全に飛行させられるかどうかが試されることになる。この動きは先週、予定より遅れて始まったものだが、試験飛行空域を提供したい州からは強い要請もきている。

 FAAは2015年に無人機の使用を拡大する計画だ。FAAで共同計画開発の責任者を務めるカーリン・トナー氏は15日に連邦議会で行われた公聴会で、FAAが重点を置くのは「安全な(商業空域との)統合」だと述べた。

 メーカー側は無人機の需要の伸びを見込んでおり、特に国内での使用が急増するとみている。

 カリフォルニア州で各種無人機を製造するエアロバイロンメントでIR(投資家向け情報)部門担当のバイスプレジデント、スティーブン・ギトリン氏は 「米国はとても大きく、極端に細分化された市場機会だ」と話す。同社の無人機のなかには、小さな鳥のように見えるものもある。

 アエロバイロンメントが警察など米法執行機関を対象に最も重点を置いているのは「キューブ」と呼ばれる監視用の無人機だ。重量が5ポンド(約2.3キログラム)で、価格は5万ドル(約467万円)。危険な状況になっている場所の真上からの画像を素早く得る一助となるものだ。

 ギトリン氏は「大きなシステムのために果たせる役割は明確にある」としたうえで、「だが、リュックサックに収まるような小さなシステムのために果たせる、かなり価値のある役割もある」と述べた。

 無人機の使用は米軍が先鞭(せんべん)をつけた。米軍は昨年、無人機プログラムに約30億ドルを費やした。しかし、防衛費の削減によって無人機への支出が削られると予想されることから、他の市場を開拓するための新たな試みが始まった。

 バージニア州にある業界団体、国際無人機協会(AUVSI)で代表を務めるマイケル・トスカノ氏は「商業用としての利用は天文学的に大きくなる可能性がある」と話す。

 米国で無人機は多様な目的のために利用されてきた。ウィスコンシン州では川の復旧プロジェクトの地図作製に、またカリフォルニア州では無人ヘリコプターによる作物への噴霧機として利用された。直ちに大きな需要が見込める市場としては、推定1万8000を数える法執行機関だ。こういった機関であれば、山岳地帯のハイキングコースなどで行方不明になった人の捜索や、都市部での容疑者の追跡に至るまであらゆることに利用可能だ。

 社会の最大の懸念は、無人機が他の飛行機を探知できず、混雑した空域での安全の問題を生じさせていることだ。また、飛行の最中にハッカーが無人機の操縦を奪ってしまったり、法執行機関が違法に米国人を監視したりするのではないか、との懸念も出ている。

米政府、脳地図作成プロジェクトを計画

2013-02-21 09:25:31 | 健康
wsj日本版から

米政府はこれまでで最も包括的な脳地図の作成に向け、大型プロジェクト「ブレイン・アクティビティ・マップ」を計画している。プロジェクトに関わる科学者らが明らかにした。

 それによると、このプロジェクトは「ヒトゲノム・プロジェクト」に例えられる大規模なものだという。米政府主導のヒトゲノム・プロジェクトは人間の遺伝情報の解読を助け、遺伝子産業に大きく貢献した。

 今回のプロジェクトに関与するブラウン大学の脳神経学者、ジョン・ドノヒュー氏によると、狙いは脳が深いレベルでどう機能しているかという「問題を解決するための国家的な取り組みを組織する」こと。さまざまな脳神経疾近年、官民で脳の基本的な配線を文書化する試みが始まっている。自閉症、統合失調症、パーキンソン病といった神経疾患の裏のメカニズムについて理解を深められるとみられる。

 国立衛生研究所(NIH)は、神経細胞とシナプスのつながりを研究する、5年間、4000万ドル(約37億円)規模の「ヒト・コネクトーム・プロジェクト」に資金を拠出している。また、民間のアレン脳科学研究所は、神経の行動を解読するためのコンピューターツールを開発中。マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレン氏は3億ドルを寄付した。

 やはりプロジェクトに関わるハーバード大学の生物学者ジョージ・チャーチ氏は、米政府や民間機関が年間合わせて約5億ドルを神経科学に支出していると述べた。

 新たなプロジェクトの狙いは、理論家、実験主義者、データストレージ専門家が集まり、リソースを持ち寄り、データを共有し、脳研究ツールの開発を加速させることだ。

 オバマ大統領は一般教書演説でこの計画に言及。「最良のアイデアに投資」したいと述べた。政府の関与が不可欠と考える分野を示すことで、小さな政府を求める共和党への反論を試みた形だ。ただ、政府がこのプロジェクトにいくら拠出しようとしているのかは不明。

 コロンビア大学の脳神経学者、ラファエル・ユステ氏によると、プロジェクトのアイデアが形になったのは2011年9月。以来、少人数の科学者グループが3回ワークショップを開き、ホワイトハウスの当局者らと会合を持った。プロジェクトは少なくとも15年を要するという。患の治療の向上も目指す。

年齢とともに失われていく嗅覚、阻止する方法も

2013-02-20 09:18:14 | 健康
人間の嗅覚は年齢とともに衰える。多くの人は30代になるまでに、それとわかるほど嗅覚が落ちる。食品の異臭やガス漏れにも気付かないほどにまで、徐々に衰えることもある。

 一方で朗報もある。嗅覚を守り、さらにはより鋭くするために家庭でできることがあるのだ。シカゴにある嗅覚味覚療法研究財団のアラン・ハーシュ氏は「色覚障害の場合、赤と緑を一日中ながめていても色がわかるようにはならない」としたうえで、「だが匂いのことに関しては、実際に神経のつながりを活発にし、おそらく以前はわからなかった匂いがわかるようになる場合もある」と話す。

 嗅覚はそれを失うまで、完全にはそのありがたみがわからないものの1つだ。シカゴの元警察官でウィスコンシン州シャロン在住のパトリック・コリンズさん(62)は4年前にひどい風邪を患ったとき以来、香りのない生活に慣れようとしてきた。風邪が治った際、コリンズさんは嗅覚も一緒に消えたことに気づいた。これは比較的珍しいケースだ。医師らは風邪のウイルスが神経にダメージを与えたとコリンズさんに伝えた。

 コリンズさんはガス漏れ警報器を設置し、残り物を食べる前には妻に聞くようにしている。生後4カ月の孫娘と過ごす時間さえもその影響を受けている。「赤ん坊の匂いを嗅ぐことができないんだ」とコリンズさんは話す。

 嗅覚を失うと、たいがい味覚の一部も失われることになる。嗅覚と味覚の両方があって味がわかるのだ。ペンシルベニア大学の嗅覚味覚センターで責任者を務めるリチャード・ドティ氏は「口で噛んで飲み込むときに、食品から出る揮発性の分子が鼻腔の奥を通って鼻蓋にある嗅覚のレセプターに届く」としたうえで、「鼻をつまんでチョコレートを口に入れても、チョコの味がしないだろう」と指摘する。

 上気道の感染症、汚染、頭部外傷、それに糖尿病を含む病気はすべて嗅覚を悪化させる可能性を持っている。たばこの煙や化学的な煙霧といったもので一時的に起こる場合もある。

 だが、もっと油断ならないのは時間だ。専門家によると、視力や聴力が年齢とともに衰えるのとちょうど同じように、嗅覚も衰えるという。60歳になるまでに、約半数の人は嗅覚の衰えを感じ、80歳になるまでにはその数は4分の3に増える、とハーシュ氏は指摘する。嗅覚味覚療法研究財団は設立25年を迎える財団で、患者の診察のほか、製薬会社や民生製品を製造している業界向けの調査に加え、独自調査も行っている。

 米国では300万から400万人が嗅覚障害や完全な無嗅覚症、もしくは嗅覚の能力減退と診断されている、とハーシュ氏は予想する。ベビーブーマー世代が高齢になると、この数字は飛躍的に上昇するのではないかとみられている。

 嗅覚の能力が減退しつつあるベビーブーマー世代を対象にした、際立って香りの強い製品を販売することは企業にとって商機であろう。ただ、製品の差別化を図るため珍しい植物の香りを製品に使う企業も一部にはあるが、製品数はあまり増えていない。

 コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーで小売り部門の戦略責任者を務めるトム・ブリショク氏は「今、とてつもなく大きな商機があるのに、彼らは取り逃がしている」したうえで、「民生用の製品を作っているもっと多くのメーカーが、高齢になりつつある消費者が製品の風味や香りを楽しめる方法を見つける必要がある」と述べた。

 香りの違いを嗅ぎわけるために脳を鍛える方法としてハーシュ氏が勧めるのは「スニフ(匂いを嗅ぐ)セラピー」だ。自分の好きな香りのタイプを3種類から4種類――例えばシャンプーやせっけんに使われる花の香り、ベリー類やバナナなどの溌剌としたフルーツの香り、さらに別の種類、例えばコーヒーの香りなど――を選ぶ。たまねぎやアンモニアといった刺激性の香りは避ける。これらは嗅覚の能力を阻害するためだ。

 それから選んだ香りを1日に4回から6回頻繁に嗅ぐ。そうすると、最終的にさまざまな鼻のレセプターが活性化されるのだ。

 食べ物の香りを嗅ぐことはもはや生き残るために必要なスキルではないが、生物学的な目的をまだ果たしている。「危険を最初に警告するシステムだ」と指摘するのはモネル化学感覚センターの教職員パメラ・ダルトン氏だ。同氏はまた、「実際、香りにはより効果的に食物の消化と代謝を促す作用があるかもしれない」と話す。

天才の遺伝子コードは存在するか

2013-02-19 09:42:52 | 科学
By GAUTAM NAIK
wsj日本版から
 香港の元印刷工場の跡地で、趙柏聞(20)という名の神童が、厄介で物議を醸す可能性のある研究に着手した。それは天才の遺伝的特徴を発見することだ。

 趙氏は高校を中退し、中国のビル・ゲイツと称されている人物だ。彼は中国政府などから資金援助を受けている民間企業のBGIの認知ゲノミクス研究所のトップを務めている。


Alex Nabaum
研究によると、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている

 この香港の施設では、100台を超える強力な遺伝子解析装置が約2200のDNAサンプルを解析、一度に32億の塩基配列を解読している。これらは普通のDNAサンプルではない。大半は米国で最も賢い人々、つまり、知能という点で並外れた部類に属す人々のサンプルだ。

 大半のDNAサンプルは、知能指数(IQ)が160、あるいはそれ以上の人々から採取された。ちなみにある集団におけるIQの平均は100に設定される。ノーベル賞受賞者のIQの平均は145前後だ。この香港プロジェクトのサンプル参加者と同等の賢さを持つのは3万人に1人だ。そのため、サンプルを探すこと自体、困難を伴った作業だった。

 趙氏は「人々は長い間、知能の遺伝的特徴を無視することを選んできた」と述べた。同氏はチーム初の研究結果を今夏公表できることを望んでいる。同氏は 「とりわけ西側諸国では、これが物議を醸す話題だと信じられているが、中国では違う」と指摘した。中国ではIQの研究がより科学的な問題だと捉えられるため、資金を集めるのが比較的容易なのだという。

 知能のルーツは謎だ。これまでの研究では、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている。しかし、科学者らはIQを著しく低下させる可能性のある遺伝子の一部、例えば知的障害に悩む人々に存在する遺伝子を特定しているものの、通常のIQに影響を与える重要な遺伝子はまだ特定できていない。 

 香港の研究者たちは、極めて高い水準のIQの持ち主の遺伝子と、一般人から抽出した人々の遺伝子を比較してこの問題を解決しようと希望している。2つのグループの遺伝子要因を研究することによって、彼らはIQの背後に存在する遺伝的要素の一部を抽出しようと期待しているのだ。 

 彼らの研究で結論が出れば、それは人の遺伝的な認識能力を予測する遺伝子テストの基礎を築くかもしれない。こうしたツールができれば、利用価値はあるが、同時に賛否両論の議論が生じるかもしれない。

 英国ロンドンにあるキングズ・カレッジのロバート・プロミン教授(行動遺伝学)は「もし学習に困難のある見通しの子どもを特定できれば」、その子どもの人生の早い時期に特別の学校教育やその他のプログラムを通じて「介入できる」と言う。 

 しかし、これに批判的な人々は、IQに関連した遺伝子データは誤って解釈されるか、あるいは誤って利用されやすいと懸念する。マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置く監視団体「責任ある遺伝学協議会」のジェレミー・グラバー会長は、知能科学の研究は過去において「特定の人種グループないし個人を標的にし、彼らを非合法化する」のに使われてきたとし、「遺伝学の世界で還元主義(生物学的な作用を物理・化学で説明しようとする主義。過度に単純化しようとする主義)的で決定論的な傾向が依然として極めて色濃く存在しており、このようなプロジェクトではそれが前面に押し出されるだろう」と警告した。

 趙氏自身、生まれつき非凡な人だ。遺伝学上の業績に加え、同氏は完璧に近い英語を独力で学んだと言う。遺伝学者としてのキャリアはキュウリの遺伝子研究から始まった。2007年、同氏は北京の学校の午後のクラスを抜け出し、中国農業化学アカデミーでインターンとしてスタートした。

 キュウリの遺伝子研究が09年に専門誌ネイチャー・ジェネティックスで公表された際、同氏は15歳で、共同執筆者として登場した。 

 遺伝学に魅了された趙氏は高校を中退して、世界最大級の遺伝子研究センターであるBGIでフルタイムで働き始めた。BGIは深�祁に本部がある。翌年、BGIは認識遺伝学センターを香港に設置し、同氏を所長に任命した。

 香港プロジェクトの大半のサンプルはこれまで、中国以外から来ている。主たる供給源は前出のプロミン博士のキングズ・カレッジだ。同博士は自らの研究のためにIQがチャートからかけ離れた約1600人からDNAサンプルを収集していた。

隕石ロシアを襲う

2013-02-16 09:25:47 | 事件
作業員が今回の隕石によって被害を受けた地元の亜鉛工場の壁の近くの傷んだ電源線を修復している。
約270の建物が被害を受けた - 主にガラスが壊された。 爆発によって引き起こされた衝撃波が原因である。
ロシア内務省での緊急事態のためのナショナルセンターのウラジミールステパノフは言った。

高級ブランドの販売、中国を抜いて米国が再びトップに

2013-02-15 10:06:59 | 経済
wsj日本版から

【パリ】中国の成長著しい高級品市場に世界はずっと注目してきたが、中国以外でも人知れず高級品市場がにぎわってきたところがある。米国だ。

シルクのスカーフで知られるフランスの高級ブランド、エルメス・インターナショナルは12日、米国での販売が第4四半期に21%増加し、1億8460万ユーロ(約231億4800万円)を計上したと発表した。これは同じく米国での販売が好調だったライバルのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンやカルティエの親会社リシュモンの業績を上回っている。グッチを傘下に持つPPRは15日に2013年度の通期決算を発表する。

これだけの成長を経験した後でさえ、エルメスのパトリック・トーマス最高経営責任者(CEO)は米国にまだ「大きな成長の可能性」を見ているという。

米国経済は強い兆候を見せてきた。経済はリセッション(景気後退)から回復基調にあり、失業率は下落し、株式市場は記録的な高値をつけ、住宅価格も改善してきた。その結果、米国の富裕層は高級な衣服や装飾品、宝飾品、美容関連製品などに惜しげなくお金を注ぎ込んでいる。

仏化粧品大手のロレアルで米国部門を率いるフレデリック・ロゼ氏は「高級品部門の勢いは経済成長とかなり関連している」としたうえで、「米国はロレアルにとって成長の主な動力源だ」と話す。

大みそかの長寿番組が映し出す日本の両極

2013-02-14 10:20:12 | 文化
マイケル・プロンコ氏の「TOKYOEYE」NewsWeek日本版から


 大みそかの晩になると、毎年「しまった」と思う。商店もレストランも早じまいするのを、すっかり忘れているからだ。大みそかの東京は、SF映画で大災害に襲われた町のように人っ子一人いなくなる。となると行き場は2つ。神社で震えながら初詣の列に並ぶか、暖房の効いた部屋でぬくぬくとテレビの前に座るかだ。

 私が日本で過ごした最初の年の大みそかは、衝撃体験だった。どうして店が全部閉まってるんだろう。みんなどこでパーティーをしてるんだろう。新年の花火の音を聞いて銀座を歩きながら、私は首をひねった。日本の人々が初詣の参拝先かテレビの前に集まっていることを、そのときの私は知らなかった。

 昨年の大みそかは家で食事をした。家族が初詣に行こうとしないので、テレビの前に集まりNHKにチャンネルを合わせた。大みそかの特別番組を見たことがなかったわけではない。だがいつもパーティーで飲んだりしゃべったりしながらだったので、毎年恒例の2つの番組がこれほど対照的だとは気付いていなかった。

『紅白歌合戦』に続き『ゆく年くる年』を見ていると、日頃から日本に対して抱いている戸惑いが頭をもたげた。私が暮らす日本はギラギラしたポップカルチャーの国なのか、それとも伝統と精神性を重んじる国なのか。

『紅白』は派手な演出や作り込まれた振り付け、ディズニーランドめいた雰囲気が、どうもいただけない。衣装は人形みたいだし、司会は退屈、肝心の歌はまるでカラオケだ。

■初詣で分かる「本当の日本」

 だが白組優勝が決まって『紅白』が終わると、私はぐっとテレビに引き込まれた。日本各地の初詣の様子を中継する長寿番組『ゆく年くる年』が始まったのだ。

 雪や森、山々や海を背景に、除夜の鐘を突こうと行列をつくる人々。重厚な造りの神社や寺は色鮮やかな幕や提灯、しめ縄で飾られている。カメラに向かって盛んに手を振る参拝客もいるが、ほとんどの人はひっそりと祈りをささげ、おさい銭を入れ、巨大な丸太で鐘を突こうと静かに待っている。

 これこそ本当の日本だ!と、私は毎年快哉を叫ぶ。

 だが本当にそうなのか。『紅白』も本当の日本ではないのか。古式ゆかしい聖地と最新のポップカルチャーほど懸け離れたものはない。神社を見れば反射的に「行ってみたい」と興味を引かれるが、万人受けを狙い、目にも耳にもけばけばしい『紅白』は、私にとっては興ざめだ。

『ゆく年くる年』が好きなのは、人も場所もありのままに映してくれるから。初詣もある意味、パフォーマンスなのかもしれないが、それは精神と伝統文化を大切にする真心に根差している。私に言わせれば、お寺でこうべを垂れてお経を唱える人の姿は、YouTubeのビデオを派手に化粧直ししたような『紅白』よりずっと素晴らしい。

 象徴的にも美しさの面でも、2つの番組は対極にある。片方はファンタジーで、もう一方はドキュメンタリー。『紅白』が予定調和であるのに対し、『ゆく年くる年』はこれまで見たこともないものを見せてくれる。不変の美、深い精神性、そしてミステリアスな時の流れ。

 私には、商売っ気たっぷりに有名歌手を出演させる『紅白』が日本の「建前」に、『ゆく年くる年』が「本音」──日本の心と魂──に思える。

 両方とも私が抱く日本の印象に重なるが、どちらがより日本的なのだろうか。

 決める必要はないのかもしれない。テレビのリモコンを手にして、スタンバイすればいいだけだ。毎年大みそかになれば『紅白』の日本も『ゆく年くる年』の日本も、必ず見られる。ただし今年の大みそかは、『紅白』の勝敗が決まってからテレビをつけることにしよう。

マイケル・プロンコ

[2月5日号掲載]

 大みそかの晩になると、毎年「しまった」と思う。商店もレストランも早じまいするのを、すっかり忘れているからだ。大みそかの東京は、SF映画で大災害に襲われた町のように人っ子一人いなくなる。となると行き場は2つ。神社で震えながら初詣の列に並ぶか、暖房の効いた部屋でぬくぬくとテレビの前に座るかだ。

 私が日本で過ごした最初の年の大みそかは、衝撃体験だった。どうして店が全部閉まってるんだろう。みんなどこでパーティーをしてるんだろう。新年の花火の音を聞いて銀座を歩きながら、私は首をひねった。日本の人々が初詣の参拝先かテレビの前に集まっていることを、そのときの私は知らなかった。

 昨年の大みそかは家で食事をした。家族が初詣に行こうとしないので、テレビの前に集まりNHKにチャンネルを合わせた。大みそかの特別番組を見たことがなかったわけではない。だがいつもパーティーで飲んだりしゃべったりしながらだったので、毎年恒例の2つの番組がこれほど対照的だとは気付いていなかった。

『紅白歌合戦』に続き『ゆく年くる年』を見ていると、日頃から日本に対して抱いている戸惑いが頭をもたげた。私が暮らす日本はギラギラしたポップカルチャーの国なのか、それとも伝統と精神性を重んじる国なのか。

『紅白』は派手な演出や作り込まれた振り付け、ディズニーランドめいた雰囲気が、どうもいただけない。衣装は人形みたいだし、司会は退屈、肝心の歌はまるでカラオケだ。

■初詣で分かる「本当の日本」

 だが白組優勝が決まって『紅白』が終わると、私はぐっとテレビに引き込まれた。日本各地の初詣の様子を中継する長寿番組『ゆく年くる年』が始まったのだ。

 雪や森、山々や海を背景に、除夜の鐘を突こうと行列をつくる人々。重厚な造りの神社や寺は色鮮やかな幕や提灯、しめ縄で飾られている。カメラに向かって盛んに手を振る参拝客もいるが、ほとんどの人はひっそりと祈りをささげ、おさい銭を入れ、巨大な丸太で鐘を突こうと静かに待っている。

 これこそ本当の日本だ!と、私は毎年快哉を叫ぶ。

 だが本当にそうなのか。『紅白』も本当の日本ではないのか。古式ゆかしい聖地と最新のポップカルチャーほど懸け離れたものはない。神社を見れば反射的に「行ってみたい」と興味を引かれるが、万人受けを狙い、目にも耳にもけばけばしい『紅白』は、私にとっては興ざめだ。

『ゆく年くる年』が好きなのは、人も場所もありのままに映してくれるから。初詣もある意味、パフォーマンスなのかもしれないが、それは精神と伝統文化を大切にする真心に根差している。私に言わせれば、お寺でこうべを垂れてお経を唱える人の姿は、YouTubeのビデオを派手に化粧直ししたような『紅白』よりずっと素晴らしい。

 象徴的にも美しさの面でも、2つの番組は対極にある。片方はファンタジーで、もう一方はドキュメンタリー。『紅白』が予定調和であるのに対し、『ゆく年くる年』はこれまで見たこともないものを見せてくれる。不変の美、深い精神性、そしてミステリアスな時の流れ。

 私には、商売っ気たっぷりに有名歌手を出演させる『紅白』が日本の「建前」に、『ゆく年くる年』が「本音」──日本の心と魂──に思える。

 両方とも私が抱く日本の印象に重なるが、どちらがより日本的なのだろうか。

 決める必要はないのかもしれない。テレビのリモコンを手にして、スタンバイすればいいだけだ。毎年大みそかになれば『紅白』の日本も『ゆく年くる年』の日本も、必ず見られる。ただし今年の大みそかは、『紅白』の勝敗が決まってからテレビをつけることにしよう。


「Michael Pronko マイケル・プロンコ氏紹介」
60年、米カンザスシティー生まれ。明治学院大学教授。専門はアメリカ文学と文化。先頃、本欄「Tokyo Eye」の連載をまとめた『トーキョーの謎は今日も深まる』が刊行された。その他の著作に『僕、トーキョーの味方です』『僕、ニッポンの味方です』(すべてメディアファクトリー)。長年英語を教えてきた経験から、英語と日本人の関係を考えるエッセーをサイトで公開。http://www.essayengjp.com/ ジャズに対する造詣が深く、ジャズに関するサイト「Jazz in Japan」も運営している。