本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

シベリヤ物語

2016-10-28 09:34:10 | Weblog
 遅まきながら、長谷川四郎の「シベリヤ物語」を読んだ。
 この何年、文学落ち穂拾いと名付けて、あまり馴染みのない作家の作品を読むことにしている。
 たとえば八木義徳、金井恵美子、寒川光太郎、金達寿、小谷剛、多田裕計等々挙げれば切りがない。ざっと、三、四十人はいる。
 
 さて、「シベリヤ物語」は、抑留生活を記した言わば体験文学とでも称する作品である。年譜によれば作者は終戦時の昭和20年8月36歳で捕虜となり、25年2月に帰還している。

 これまでシベリヤ抑留は苛酷であったと読んだり、聞いたりしていたのだが、この作品にはその悲惨さはあまりない。
 それどころか、柵に囲まれた収容所には、食堂、便所、理髪所、浴場、医務室、食糧庫、被服庫などとにかく何でもあったと書かれている。収容された場所によって捕虜のあつかいは違ったのだろう。
 異質なシベリヤ捕虜物語ではないか。
 
 ついでながら、作者の兄長谷川海太郎も作家である。ペンネームは牧逸馬、林不忘、谷譲次と三つに使い分けている。なかでも有名なのは丹下作膳でしょう。どのペンネームであるかは年配者はご存知だと思う。