その日、我が家の犬の「マル」は散歩に気乗り薄だった。
いつもならば、リードをぐいぐい引っ張って1時間は歩くのに、この日は勝手に家路に向かう。帰ると、朝飯も喰わず横になった。
家の中にはマル用のベッドが三か所にある。ダイニング、リビング、仏間前の廊下だ。ダイニングはエサ皿が近い、また勝手口から散歩に行くときに便利だから利用頻度が高い。リビングはテレビを観るかみさんの傍にいられるので夜のひとときいる。仏間前の廊下はひんやりして夏向きだが、今は暖房がない場所になる。ただ、人にもネコにも邪魔されず過ごせる。
マルはその邪魔の入らない廊下で1週間も寝込んでいる。たまに生理現象で裏庭に出るくらいだ。食い意地を張って残ったネコのエサもがつがつ喰うのだが、この時はミルクを飲むか、鶏レバーか缶詰のペットエサを少し口にするだけ。
「ガン」があると動物病院で診断されていたので、いよいよダメかと思った。
ところが昨日から元気がでてきた。散歩に連れていけと泣く。ワンワンと吠えるのではない。悲しそうな声を出すのだ。食欲も旺盛である。
人間は具合が悪いときは寝る。それと同じように犬も寝ることにより自然治癒力がでてくるのだろう。
医者の診断が本当ならば、爆弾を抱えているわけだが、今のこの元気が続けてほしいものだ。
明日から師走だ。