英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season17 元日スペシャル 第10話「ディーバ」

2019-01-03 22:39:21 | ドラマ・映画
「日本の皆さんは、政治に興味がないんじゃありませんか?
 国政を担う方々が、とんでもない失言をしても、お友だちに便宜を図っても、大して問題にならないんですか?
樹は敦盛家の血を引くたった一人の男子です
犯人は敦盛家の人間を苦しめたいんじゃないかしら?


 事件の本質を暗示していた上記の台詞……


 脚本家による先入観を持たないために、視聴前に担当脚本家についての情報はカットしているが、途中から太田愛氏の脚本という気がしてきた。
 太田愛氏は昨年の元日スペシャル「サクラ」を手掛けており、本作を含めると元日スペシャルは5作目。
 太田脚本の特徴は「サクラ」でも述べていて、読み返してみると、けっこう細かく分析していた。自分で書いておきながら、≪えっ、そうなの?≫という項目もあった。
 それはともかく、太田脚本の特徴としては
・巧みな“伏線⇒回収”がたくさんある。多くの謎(伏線)がラストで見事に収束していく。
・愛情をテーマにすることが多い
・レギュラー陣がいつもより少し優しい
などが挙げられる。

★今回もいろいろな伏線が貼られている。上記の台詞も伏線と言える。
①演歌歌手が意味深な笑顔で花束を瞳子(大地真央)に渡した
⇒過去に瞳子に塩酸を浴びせた女性だった。
 ちょっと分かりにくくてずるい伏線だったかも(太田氏なので許す・笑)

②別荘の管理人と「人が住んでいたことに周囲は気付かなかった」という聞き込み情報
⇒そもそも住んでいなかった。劉造(西岡德馬)もそう思っていただけ

③孫の命が懸かっているとはいえ、貴巳(河井青葉)は娘の槙(優希美青)のケガを心配しない
⇒劉造の犯罪を暴くための狂言誘拐だった

④“その子”と言わず“あの子”と表現した
⇒一面識もない少女の事を話すのであれば、普通は“あの子”ではなく“その子”と言う筈

⑤現場検証の際に劉造のDNAを採取
⇒槙の子・樹の父親が劉造だと証明するため
現場検証の際の痕跡分別の為なら、DNA鑑定よりは指紋の採取・提供なのでは?
【補足】(「尾幡の爪の間から犯人の皮膚片が採取されたから」と言うべきだったのでは?)

樹の誘拐での一連の細工と真相
①樹は同じマンションの別の部屋にいた。防犯カメラをうまく逆用していた。
②首謀者の瞳子(大地真央)は巻き込まれたと思わせると同時に、三雲生命の悪事を表沙汰にする
③貴巳(河井青葉)と瞳子(大地真央)は共犯だが、表向きは敵対

 これらは見事な筋書きで、瞳子たちの目的が劉造の2つの犯罪を暴くことだった。


★劉造の2つの犯罪とは?
Ⅰ.いわゆる“忖度”を強いて、政治家の都合のいいように事を運ばせる。
 しかも、不正な金は一切動いておらず、証拠が残らない案件=G案件
Ⅱ.槙に乱暴して妊娠させた
 “敦盛家の血”に拘る劉造らしい暴挙……真希の父は優(劉造の息子)ではなく、劉蔵は敦盛家の血を引く男子が欲しかった

★劉造の犯罪を暴く手段
・瞳子の記者会見中の不可解な告発
・劉造の暴言の隠し撮り動画のネットでの拡散
・死体発見現場に劉蔵を誘導し、現場検証の為に劉造のDNAを採取し、樹との親子関係を立証




劉造の犯罪を暴くための瞳子らの犯行と右京たちが推理・捜査して真相究明するストーリーは見事だった。
ただし、疑問点や不満点も多かった。


暴力団、フリーライターの尾幡関連はご都合主義的
・尾幡暴行時にハードディスクを奪い引き出しにしまったが、そのまま放置(三雲生命への切り札として保管するなら、もっと厳重にすべき)
・冠城が暴力団事務所に忍び込んだとき、若い女を監禁中に関わらず留守
・取材妨害の為に暴力団に暴行されたというかなりやばい状況のはずだが、彼らの手が届く範囲に留まる
・尾幡と市原幸雄(実行犯)との協力関係の描写が弱いし、ジャーナリストとしての使命感も感じられなかった

 なんだか取って付けたような暴力団の存在だった。
 冠城が彼らに囚われる経緯も冠城が迂闊過ぎるし、尊の冠城の救出劇も締まりがなかった。(尊の活躍シーンがあったのはうれしい)

 ただし、尾幡の存在(尾幡が殺されること)は必要不可欠(劉造のDNA採取)

【どうでもよい疑問】
劉蔵は爆弾が仕掛けてあるスーツケースから何故離れない?


 満足できる内容だったが、塩酸ぶっ掛けシーンや、敦盛家の真の血縁関係が分かりにくかった。
 そもそも、ほとんどフランスにいたらしいのに、貴巳や槙や幸雄らと家族のような感情や一体感を持つのは不思議
 それに、尾幡や暴力団絡みのエピソードは不出来だった。
 美彌子(仲間由紀恵)、神戸尊(及川光博)たちの登場は嬉しかったが、美彌子はほんの顔見せだった。
 ゲストの大地真央さんには気を使い過ぎの脚本だったが、西岡德馬さんの役に対しては容赦ない扱いだった(笑)

 

 


第1話「ボディ」第2話「ボディ ~二重の罠」第3話「辞書の神様」第4話「バクハン」第5話「計算違いな男」第6話「ブラックパールの女」第7話「うさぎとかめ」第8話「微笑みの研究」第9話「刑事一人」

【ストーリー】番組サイトより
凱旋帰国した世界的歌姫を巻き込む誘拐事件が発生!!
さらに、世間を震撼させる“殺人の告発”が…
右京は元特命係・尊に協力要請!! 前代未聞の難事件に挑む!!


 年末の朝、110番通報が発信されたマンションに駆けつけた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、室内で血を流して倒れている少女・槙(優希美青)を発見。彼女の幼い息子が誘拐されたと分かり、槙の母親・貴巳(河井青葉)は亡き夫の父親である衆議院議員の敦盛劉造(西岡德馬)の元に向かう。身代金目的であれば、劉造に連絡してくるはずだと考えたらしい。
 その後、槙は意識を取り戻したものの、息子の父親については黙秘。偽装誘拐の可能性も浮上し、捜査は難航する。そんな中、犯人から連絡があり、意外な要求がなされる。それは、来日中の大物シャンソン歌手・神崎瞳子(大地真央)に、マスコミの前で告発文を読ませろという奇妙なものだった。内容は、「三雲生命の社員・天野弘は自殺ではなく殺された」という告発。犯人はなぜ瞳子を巻き込み、こんな手の込んだことをするのか?

 天野弘について調べ始めた亘は、急速に業績を伸ばしている三雲生命について不穏な情報を入手する。そして、右京に相談しないまま単身、暴力団事務所に乗り込むが、それから消息を絶ってしまう。いっぽう、瞳子と誘拐事件の関係を探っていた右京は、貴巳と瞳子の過去にある接点があったことに気づき、劉造と三雲生命が浅からぬ関係にあることも指摘。
 そして、亘と連絡が取れないことから、元特命係の神戸尊(及川光博)に協力を依頼する!!そんな中、犯人から劉造に再び連絡があり、事態はついに殺人事件にまで発展してしまう…!!

誘拐と殺人、2つの事件に意外な繋がりが!?
世界的歌姫と一連の出来事の関係とは…?
そして、亘の捜索のため、尊が大胆な行動に!
特命係の命を懸けた戦いが始まる!


出演:水谷豊 反町隆史 鈴木杏樹 芦名星 及川光博 榎木孝明 杉本哲太 仲間由紀恵 石坂浩二
ゲスト:大地真央 河井青葉 優希美青 西岡德馬

脚本:太田愛
監督:権野元

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太田愛マジックの真骨頂 (marumori)
2019-01-05 12:02:33
 英さん、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 今回の『ディーバ』ですが、大物ゲストにレギュラーオールキャスト(大河内監察官がいませんでしたが)と、元日スペシャルにふさわしい豪華さでした。神戸尊については、無理やりストーリーに絡ませた感がありましたが。

 ストーリーについても、暴力団との絡みの描写が手抜きに見えてしまったのが残念でしたが、絶妙に張り巡らされた伏線が終盤で回収されていく様は、実に鮮やかでした。

 個人的には、瞳子(大地真央)が動画を撮影するまでが丁寧に描写されているのに感心しました。
①敦盛家に滞在することとなった瞳子が、秘密保持のために警察にスマホを取り上げられる。
②瞳子が部屋のピアノに隠された連絡用のスマホを発見(貴巳(河合青葉)が隠しておいたもの)。
③槙(優希美青)の見舞いから帰ってきた貴巳が、青いバッグを廊下の物置台に置く。
④この時置いたバッグのポケットにスマホが入れてあるのが確認できる。
⑤その後バッグに入れたスマホの着信音が鳴り、貴巳が出ようとするが、その前に発作を起こして倒れ、救急車で運ばれる。
⑥幸雄からの電話を受けた後、瞳子が、誰も見ていないことを確かめてバッグから貴巳のスマホを抜き取る。
⑦この貴巳のスマホを使って、敦盛(西岡徳馬)の暴言を撮影(敦盛と言い争うとき、瞳子がスマホを抱えているのが確認できる)。
⑧連絡用のスマホを使い、タクシーの中で動画を公開。

 この置きっぱなしの貴巳の青いバッグが、さりげなく画面に何度も映り込んでいるのですよね。貴巳が初めて画面に出てきた時にすでにこの青いバッグを持っていました。実によく計算されています。これぞ太田愛マジックの真骨頂だと思いました。

 個人的感覚では、『バベルの塔』(Season5)、『ピエロ』(Season10)、『ボマー』(Season12)や『サクラ』(Season16)には及びませんが、元日スペシャルの中ではかなりの良作といってよいかと思います。
太田氏らしい脚本でしたが ()
2019-01-05 16:44:57
marumoriさん、あけましておめでとうございます。

> ストーリーについても、暴力団との絡みの描写が手抜きに見えてしまったのが残念でしたが、絶妙に張り巡らされた伏線が終盤で回収されていく様は、実に鮮やかでした。

 おっしゃる通りだと思いますが、私の方がmarumoriさんより少し不満が大きいようです(主に本文で書いたフリーライターの尾幡や暴力団関連について)。

>瞳子(大地真央)が動画を撮影するまでが丁寧に描写されているのに感心しました。

 私が感心したのは①②です。
 大地さんの格やサブタイトルの「ディーバ」から最初から瞳子は主犯、影の協力者の香り(匂い)が
しましたが、シャンソン歌手である瞳子がふとピアノを開くのは自然であり、無理やり巻き込まれた可能性を残しました。

>この置きっぱなしの貴巳の青いバッグが、さりげなく画面に何度も映り込んでいるのですよね。貴巳が初めて画面に出てきた時にすでにこの青いバッグを持っていました。実によく計算されています。これぞ太田愛マジックの真骨頂だと思いました。

 青いバッグの細かな描写については私は見逃していました。さすがですね。

 さすが太田氏と思う点は多かったのですが、憶測ですが、尊と美彌子の登場を強いられ、ストーリーに齟齬あるいは、全体的な練り込み不足に陥ってしまった気がしました。

 あと、よく分からなかったのは、
①樹の偽装誘拐ですが、連れ出したと見せかけて、同じマンションにかくまったのが市原澄江ですが、別荘の管理人のふりもしていました(捜一コンビの聞き込みの際)。
 マンション→別荘→マンションと移動したことになりますが、移動も大変ですし、いつ聞き込みに来るか分からない状況なので、時間的制約も大きいはずです。また、その間、樹の世話を市原幸雄がするのも大変そう(いろいろ実行しなければならないし)。ここら辺り、右京が多少言及していた気がしますが…

②ルポライターの尾幡が殺害されて計画変更したと言いますが、元の計画はどんなものだったのでしょう。
 大きな目的の劉造のDNA採取ですが、尾幡が殺害された際に抵抗し、爪に犯人の皮膚片が残留しDNA採取という運びになったのですから、もともとはどうやってDNA採取に持ち込むつもりだったのでしょう。
(劉造と瞳子のDNA採取に関する、この記事本文が少し誤りがあったので、このコメント後に訂正します。でも、あの鑑識の「二人があちこち現場を動いたから、DNA採取をしたい」という台詞は不十分ですよね)

 面白かったですが、完熟していなかった感が残りました。
あらためて見ると疑問の点が (marumori)
2019-01-05 22:45:12
英さん、コメントレスありがとうございます。

 おそらく太田氏は、当初は神戸や美彌子を登場させるつもりはなかったのだと思います。制作側の要望で登場させることになり、急遽ストーリーを追加したのではないかと推測しています。
 最初から美彌子を登場させる予定だったとしたら、太田氏なら記者会見の場面を設定し、石川(林泰文)を登場させると思います。

疑問点①について
 あらためて映像を確認すると、防犯カメラの時刻から考えて、幸雄は赤ん坊の人形を抱いてマンションを出た後すぐにマンションへ戻り、澄江と入れ替わったようです。しかし、この後幸雄は敦盛劉造にメールで樹の動画を送り、脅迫電話をかけ、ホテルのロビーに茶封筒をおくなど超多忙(?)だったわけで、樹の面倒をみていられたとは思えません。もう一人くらい共犯者を設定したほうがよかったような気がします。

疑問点②について
 瞳子の告白によれば、当初は「空き家に犯人と樹がいた痕跡を偽装して樹の解放場所を知らせるメモを残すはずだった」ということでしたから、その空き家で敦盛に樹の姿を探させ、現場を踏み荒らさせるつもりだったのだと思われます。おそらく、当初の計画でも、犯人と区別するためにDNAが採取されることを想定していたのでしょう。ですから、鑑識・益子の「現場を踏み荒らしたから、あんたたちのDNAは採取させてもらう」というセリフは、ストーリー上は間違っていないと思います(実際の現場ではどうなのか、はおいておきます)。
 尾幡の爪の間の皮膚片はあくまで暴力団逮捕の決め手だったのではないでしょうか。

 見直してみて、あらためて思ったことなどを追記します。
〇貴巳は心臓を移植するしかないほどの容体なのに、誘拐時間発生時に敦盛邸に「駆け込む」などかなり無茶をしています。
〇伊丹と芹沢が、槙の本当の父親の消息をつかむのが早すぎるように思いました(ストーリー上はさして重要なポイントではないので、端折ったのだと思いますが)。
〇結局、暴力団事務所に監禁されていた女性は誰だったのでしょうか?
〇敦盛劉造のような地位の人間が、血の繋がりがないとはいえ自分の孫を凌辱し妊娠させるなどという暴挙に走るものでしょうか。自分の血筋を残したいのなら、優が死んだときに、血の繋がりのない貴巳と槙を敦盛家から追い出し、後妻をもらって子どもを作ればいいだけの話で、このような鬼畜の所業は、バレたときに失うものが大きすぎると思うのですが。
〇幸雄の兄の自殺の件の描写が希薄で、今一つ幸雄の怒りが伝わってきませんでした。神戸を無理やり絡めるよりは、この件をもう少し丁寧に描いてほしかったです。
〇優は結構重要人物だった割には、写真でしか登場しませんでした。有名どころの俳優を起用して回想シーンでもいいから登場させたほうがよかったように思いました。
丁寧なレスのレスありがとうございます ()
2019-01-06 19:54:08
marumoriさん、こんばんは。
レスが遅くなり、ごめんなさい。

詳細な解説ありがとうございました。

>おそらく太田氏は、当初は神戸や美彌子を登場させるつもりはなかったのだと思います。制作側の要望で登場させることになり、急遽ストーリーを追加したのではないかと推測しています。

 ええ、私もコメントレスで書いたように、同感です。でも、流石に石川(林泰文)さんは思いつきませんでした。

 私の疑問①に対するご意見は、全く同感です。
 疑問②については…
>瞳子の告白によれば、当初は「空き家に犯人と樹がいた痕跡を偽装して樹の解放場所を知らせるメモを残すはずだった」ということでしたから、その空き家で敦盛に樹の姿を探させ、現場を踏み荒らさせるつもりだったのだと思われます。おそらく、当初の計画でも、犯人と区別するためにDNAが採取されることを想定していたのでしょう。

 ええ、確かにそのような解説を右京さんが言っていました。
 ただ、劉造が現場を探索し回っても、必要になるのは指紋や下足痕で、鑑識の言葉はやはり疑問を感じます。
 小幡が殺害され、犯人の皮膚片が爪の間に残されていたのは怪我の功名で、DNA採取が自然な流れになりました。

 再視聴によるmarumoriさんの新たな疑問ですが、1、2点目は同感です。
 3点目の女性は、冠城が囚われる為の言い訳で、忍び込んでそのまま捉えられるのは格好悪いからでしょう。(誰でもよかった)
 4点目の劉造の悪行ですが、再婚すればよかったというのは、まさにそうですが、だとすると、今回の話が成り立たないので、劉造がロリコンなのか槙が好みだったと考えることにしましょう。

 5、6点目も仰る通りで、残念な点ですね。
 

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