おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

宣伝文句

2020-01-09 11:09:31 | 日記

 昔、大企業を定年退職した人から、自費出版で本を出したいが、おかしなところはないか内容をチェックしてもらいたいという話が、回り回って僕のところに来たことがある。どうして僕のところなのかというと、普段ブログなんぞを書いているから、普通の人よりは少しは文章のことがわかるんじゃないかという、それだけの理由だった。

 断りたかった話だが、どうしてもと頼まれれば断りづらい。仕方なく分厚い原稿の山に目を通したが、内容は企業人として勤め上げたノウハウを書いたもので、会社でうまくやって行くには、遅刻をしないとかやれないことは引き受けないとか、当たり前のことがこれでもかと羅列してある原稿だった。本人は自分の人生を振り返って大真面目に書いたのだろうが、こんな本を送りつけられ、読まされる方はたまったものではない。

 アドバイスをお願いしたいというので、こう答えてあげた。人は当たり前のことを今更他人に教えてもらわなくても、自分でよくわかっているものだ。ただわかっていながらそれができないだけなのである。世の中でベストセラーになるような本のタイトルというのは、決して当たり前のことは言わない。例えば「バカほど出世する」とか、「遅刻もできないようでは大人物になれない」とか、「出世したければ敬語は使うな」とか、世間の意見とは正反対のことを言わなければ、誰も手に取ってみようという気は起きないのである。

 英会話なら、「聞き流すだけで喋れるようになる」とか、「1日たった5分で喋れる英会話」でなければ、面倒くさがり屋の食指は動かない。ダイエットなら「お腹いっぱい食べて痩せる」とか「好きなものだけ食べて続けるダイエット法」でなければならない。「英会話が話したいなら毎日数時間向き合え」とか「痩せたければ毎日の運動こそ大切」なんてことを言っても、世間は聞いてくれないのである。

 が、実際にはどんな物事でも手を抜いてできるようなものはなく、英会話なら結局集中して勉強した時間の積み重ねだし、ダイエットするなら消費カロリーが摂取カロリーを超えさえすれば良いということはわかりきった道理だ。

 ちまたでは投資詐欺が流行しているが、謳い文句は決まっている。「楽して儲かる」だ。しかしながらお金を稼ぎたいなら、方法はひとつしかない。地道に働くだけのことだ。宣伝文句とは詐欺と同じだと思っていれば、欲望をかき立てるような文句に、簡単に乗ることはない。

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