落ちた栗で、秋のご馳走が食べられるとはなんと贅沢なんだろうと考えているうちに、ふと落ち栗の連想で井上井月の名前が頭に浮かんだ。
「落栗の座を定めるや窪溜り」
井月は漂泊の俳人などと呼ばれているが、最後はほとんど乞食として放浪していたような人で、僕が初めてその名前を知ったのは、つげ義治の漫画「無能の人」である。無能の人である主人公が、乞食俳人である井月に自分を重ねるという筋立てだった。ちなみに「無能の人」を竹中直人が監督をして映画を撮り、ヴェネチア国際映画祭で賞を獲った。
井月に影響を受けたのは、つげ義治のほかにも、芥川龍之介や種田山頭火も挙げられる。山頭火は長野県伊那谷にある井月の墓参りも果たしている。その時に詠んだ句のひとつ「お墓撫でさすりつゝ、はるばるまゐりました」
さて、昨日途中まで描きかけていた鴉の絵を描き終えた。タイトルは山頭火の句から取って「風の中からかあかあ鴉」