この一年、里山探検隊と題して里山の草花や虫や鳥の絵を描いてきた。今はその次の段階として、それぞれの絵に短い文章で説明を付け加えている。
絵は本来絵だけで勝負するべきで、説明文をくっつけるなどというのは蛇足以外の何物でもなく、邪道だという人もいるだろうが、多くの人がヘクソカズラの花やひっつき虫と呼ばれている種の名前を知らないので、最小限の説明が必要だと考えたのである。でなければ、「何の花かわからないけど、花の絵が描いてある。雑草がたくさん描いてある」と思われた瞬間、絵の価値はなくなってしまうからだ。
で、毎日少しずつ図鑑やネットで調べながら説明文を考えていると、自然界に存在する生きものが、いかに巧妙で繊細で、信じられないくらい精巧な仕組みになっているかに感心する。
動けない植物が、動物の力を借りたり、風の力を利用したり、自らの力で飛ばしたりしながら種をばらまく。花は受粉させるために、虫の好みに合わせて花を咲かせる。地面を這っている虫に対しては、花を下向きに咲かせ、小さな虫に対しては小さな花を咲かせる。黄色を好む虫には黄色い花をつける。
どこに脳みそがあるのか知らないが、すべての生物には知恵があり、思考する能力があり、変化する力がある。
今更ながら、本当にこの世は不思議に満ちている。おまけに、その巧妙で繊細で精巧にできているこの世界は、人間の都合に合わせてできあがっているわけでも、人間の生活のために存在しているわけでもない、ということを思い出させてくれる。
僕らは普段、日常生活と自然界というものを重ねて意識はしていないどころか、まるで宇宙ステーションで暮らしているかのように、すべてが人間のために管理されている空間で生活していると無意識に感じている。不思議な世界の一員であることをやめても、生きていけると盲目的に信じているかのようだ。