飽きもせず、せっせと走っている。といっても、まだ一週間だが、早朝の冷たい空気を肺いっぱい吸って丘を走っていると、気分はロッキーなのである。
折り返し地点は高屋敷稲荷神社。石段を上り詰めると、賽銭箱が目に飛び込んでくるが、それは見ないようにして手水場に行き、口をゆすぎ、トトに水を飲ませる。体を清めたあとは、賽銭箱の前に立つが、それは見ないようにして参拝する。
偉いもので、毎日やっていると参拝の仕方も覚える。まず軽く一礼し、次に深く２回お辞儀をする。そして拍手を２回打つと、「払いたまえ、清めたまえ、守りたまえ、幸わいたまえ」とお祈りし、次に自分のお願いや感謝の気持ちを述べる。「今日も一日、楽しい一日が過ごせ、明日が迎えられますように」
半年前に買ったスニーカーは、走り始めるとすぐに駄目になった。そこで新しい靴を買いに行った。安いので良かったが、３５００円のちょっと高価なのにした。その辺をテレテレ走るだけなので、スリッパでもいいくらいだが、やはりランニングシューズだと足元が軽い。
今日も五時半に出発し、チャカチャーチャ、チャッチャチャーとロッキーのテーマで走り出すのだ。
７月、九州にいるときに歯医者に行った。歯がグラグラしてしっかり食事ができなかったからだが、あと２週間もしたら旅行に行きますと話すと、じゃあ、歯を抜くくらいしかできない。治療は歯茎が固まってからなので、最低でも２週間後だと言われた。仕方がないので、とりあえず抜いてもらい、あとは福島で治療することにした。
福島の歯医者でふた月くらいいますので、その間に抜いたところに新しい歯を入れてくださいとお願いした。ところが、歯周病で抜いた歯の両側も少しグラグラしているので、歯周病の治療をしましょうと言われた。こちらとしては言いなりになるしかない。良くなるなら、なんでもしてくださいという気分だったが、治療が始まると、ふた月の間に、悪いところはすべて治療してしまうことになり、昔ちょっと虫が食ったところとか、欠けてるところとか、３０年前に入れた歯だとか、徹底的にやることになってしまった。
というわけで、他の客より優先的に毎日せっせと歯医者通いをさせられている。ようやく今週になり、あとひと月なので、歯周病の治療をあと２回しましょうということになったが、歯を１本入れるだけのつもりが、短時間に口の中全部をいじられ、自分の口じゃないみたいな感触になってしまった。
このところ残暑が厳しく、大きな大工仕事も終わったことから、室内の作業が多い。なんだか体がだるいなあと思っていたら、少し太ってきた気がする。いや、体重計に乗ると確実に２～３キロは重くなっている。こりゃあいけない。トト、早朝の涼しいうちにジョギングするぞ、と、近くの稲荷神社まで往復４５分のジョギングを始めることにした。
始めて１週間しか経っていないが、信じられないくらいの汗をかくので、ずいぶん体は軽くなった気がする。トトも早朝に走り回れるので、夜が明けるとガウガウと催促する。
オッサン化が進むと、体にもあちこちガタが来る。トトも少しずつ老化が進む。ゴールはまだまだ先だ。お互い、体も脳みそも錆びないようにしような。
絵を描いていても、どこが完成というのはなく、いつまでもダラダラ描き続けることはできる。カフェ作りもそれと同じで、どこかでともかく「完成」させなければならない。
昨日、テーブルや椅子を移動したり、細かい修正をしたりで、とりあえず部屋の中はこれで完成というところまで漕ぎ着けた。家の周りの片付けや、部屋の中のインテリア、メニュー作りなど、まだまだ細かい仕事はたくさん残っているが、大きな仕事はほぼ終了した。あとはテラスにカウンターとトトのための犬小屋を作ろうと思っているが、それは後回しにしても開店はできる。
では、ちょっとだけ完成した部屋を案内すると、玄関を入って最初に目に入るのがギャラリーで、絵葉書も置いてある。
そして目を店内に向けると、全体像はこんな感じだ。
席は二人がけがふたつ、四人がけがひとつ、二人がけのカウンターがひとつの、全１０席だ。おまけにくつろぐためのソファがひとつある。
そしてトイレがこちら。
トイレの内側は写真をベタベタ張ってあるので、用を足しながら、写真鑑賞ができるのだ。
で、肝心の店名だが、手作りの看板ができたので、紹介しておく。なぜ、この名前になったのか、という質問については、いちいち答えられない。
もうすっかり秋だなあと思っていると、昼間びっくりするくらいに気温が上昇し、何もする気がしないほど暑くなる。多分お盆前より今のほうが暑いだろう。夕方になると気温は最高潮になり、近頃は毎日のように積乱雲が発生し、安達太良山の上空あたりで稲光が点滅している。
それに引き換え、朝はびっくりするほど涼しくなった。日中になると温度も上がり、ミンミンゼミが鳴いているが、朝早いうちは、コオロギたちが足元の草むらでチロチロ鳴いているくらいで、静かなもんだ。
空は秋の雲が薄く広がり、コスモスの花が満開を迎えようとしている。早く涼しくならないかなあと思っているが、もう少しして肌寒い季節になったら、この暑さが懐かしくなってくるんだろう。
夜、レンタルビデオ屋にＣＤを借りに行く。自分が聞きたい曲というよりも、環境音楽として邪魔にならない音楽を探すためだ。今まで九州と福島を往復する間、何枚もＣＤを持ってきたが、なかなかイメージ通りの音楽は見つからない。流れる曲で、ずいぶん店内の様子も変わるものだ。
ボサノバやクラシック、ジャズやポップスといろいろ聞いてみて、気持ちがいいものをダビングするつもりだが、そうそう簡単に思うような曲にはめぐり合えない。
昨日借りたのは、ウクレレでポップスを演奏したもの、ハワイアン、フランスっぽさたっぷりの現代のシャンソン。ハワイアンなんかは今の時期、まったりするには打ってつけだが、これから涼しくなっていくとどうかと思う。
ジャズなんかだと、いかにもカフェですみたいな感じになるし、癒し系の音は意外とつまらない。案外おっと思ったのは、初期のビートルズナンバーなどは新鮮だった。カザルスのチェロも何度聞いても感動できる。
ああでもない、こうでもないと耳を傾けていると、あっという間に時間が経ってしまう。有線やラジオでは、あまりに安易だ。コーヒー豆を自家焙煎しようと思っているので、音楽も自分でじっくりと選曲したいものだ。
コートや帽子をかけるポールハンガーを買いに出かける。自分ではそんなものは使わないが、西洋の映画なんかを観ていると、必ず訪問してきたお客は、玄関に入るなり帽子やコートを脇にあるポールに掛ける。カフェをやるからには、そういう小道具も欲しい。
他にも揃っていない食器やグラスも買い足して置かないといけないので、ホームセンター巡りをすることにした。郡山市内にあるホームセンター２軒と家具屋を１軒はしごする。途中で食器などを買い足すが、肝心のポールハンガーは２軒目に見たのに決める。というわけで、再び２軒目に取って返すが、結局郡山市内を端から端まで走る格好になった。
今までは面倒くさい時や、目的地が全然反対方向にあるときなどは、次の機会に回していたが、さすがに準備も大詰めになってくると、次の機会に回してばかりも行かなくなった。おまけに、切羽詰れば詰まるほど、いろんな必要なものが増えてくる。
猛暑の中、ガンガンにクーラーを効かせて、車で行ったり来たりの毎日である。
残暑と呼ぶにはあまりに暑い日が続く。ニュースでは北海道の女満別で３５度を記録し、熱中症で死者まで出ている。沖縄が３０度だっというから、北と南が逆転している。
大気が不安定なのか、昨日の夕方散歩に出ると、安達太良山の上に大きな雲が発達していた。真ん中にぽっかり開いた穴から、今にも地平線に消えていこうとする残照が漏れている。
雲間から地上に注ぐ光の帯のことを、「ヤコブのハシゴ」と言うが、この場合、さながら逆ヤコブのハシゴというところか。
朝も、涼しいと思っていると、あっという間に気温が上がり何もしたくなくなる。涼しいうちに体を動かそうと、今日も５時過ぎからトトを連れてジョギングに出る。二日目になると、ふくらはぎがオニのようにパンパンになり、ジョギングというより、ヨチヨチ歩きになっている。
暑い毎日が続き、少し動いても汗が噴き出すので、どうしても体を動かすのが億劫になる。ずっと続けていたジョギングからも山歩きからも遠ざかっているので、体がなまくらになってくる。そうなると余計に動くのが億劫になる。
これじゃあいけない。トト、体を鍛え直すぞ。
とばかりに、今朝は早起きをし、トトを連れてジョギングに出た。東北の朝は早く、５時には明るくなる。５時半に家を出て、近くのお宮を目指す。ここはアップダウンが激しいので、距離は短くてもふくらはぎにはつらいコースばかりだ。
ウォーキングをするお年寄りや、庭先で話し込むお年寄り、畑で精を出すお年寄り、早朝から元気なのは年寄りばかりだ。というより、若者はどこにいる。
お宮で拍手を打ち、「どうぞ、今日も一日楽しく過ごせますように」とお願いし、トトに水を飲ませると、再び家路につく。
一日走ったくらいじゃ、なまくらな体は変わらないが、滝のような汗をかいたあとは、少しだけ体が軽くなったようで、気分も軽い。トトもキラキラした目で、寝そべっている。
トトはドッグランに連れて行っても、まったくと言っていいほど喜ばない。こんな場所で何が楽しいんだというような態度で、フェンスにオシッコをかけている。子供や若い女性に対しては、シッポを振って擦り寄るところを見ると、自分を人間だと思っているのは間違いない。
が、ごくまれに、お気に入りのメス犬がいる。多くのメス犬に対しては、むこうが興味を示していても無視することが多いトトが、どうしたわけかほんの一部のメス犬には愛想がいい。
そんなメス犬の一匹が福島にいる。ときどき散歩で通りかかる家の玄関先につながれているモモちゃんだ。モモちゃんの家の前を通る散歩コースの時には、遠くからでもトトの歩く速度が早くなる。モモちゃんも遠くからトトを見かけて出迎えてくれる。
「よっ、久しぶり」
「最近姿を見せなかったけど、どこほっつき歩いてたのよ」
「オレがいない間、浮気はしなかっただろうな」
「キャッ、なにすんの」
「また遊びに来てね」
田んぼの穂は実り、ヒマワリは咲き誇る。今年も柿の実がびっしりとついている。秋は目の前だ。
朝、６時に散歩に出ると、なんだかびっくりするほど静かだ。草むらからはコオロギのリーンリーンという鳴き声は聞こえてくるが、昨日まで騒々しかった蝉の鳴き声がまったく聞こえない。蝉たちにとって今日は八日目なのか。
どこかで蝉が鳴いているんじゃないだろうかと耳を澄ませて歩いてみるが、カラスやウグイスののんびりした声が遠くから聞こえてくるだけだ。ときどきセンダイムシクイが、高らかに歌い上げる。
まだ八月だというのに、早くも蝉がいなくなってしまったのか、さすが九州と東北は違うなあと思っていたら、７時になり気温が上がってくると、あちこちでミンミンゼミが大声で鳴き始めた。ああ、良かった。まだ夏は終わってなかったんだな。
昨日の夕暮れに散歩をしていて、今年初めてとなるツクツクボウシの声を聞いた。
