フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

ライディング・ロケット

2020年08月03日 19時25分19秒 | 日記
先日暇つぶしにYouTube見てたら、スペースシャトルの動画を視聴しましてね。曰く「失敗した計画」として。
ぬたりは元宇宙飛行士の本を読んだもので、スペースシャトルが失敗作というのは実感として持っている訳なのだが、太平洋の向こうの話で、しかも何人もの日本人を宇宙飛行士にしてくれた機械に対しては、割と「スペースシャトルを失敗作は言い過ぎ」という弁護の意見もあってな。
もちろんその意欲的なな設計から宇宙開発に大きな貢献をしたことは間違いないし、スペースシャトルがなくては今の国際宇宙ステーションなんかが今の形で実現できなかったことは間違いない。ただ、総合的に見れば失敗作だと見て間違いない。なにしろ当のNASAの長官が「欠陥のあるシステム」と認めているくらいだ。どうしても印象が強く、動画の印象も引っ張られるので「2回事故を起こしただけで失敗作は言い過ぎ」という意見もあったのだが、事故はスペースシャトル計画の問題のほんの表層でしかない。他にも問題点は山積みだったんだから。シャトルの失敗を眺めてみると、マスコミあたりがよく言う「アメリカは責任者の所在がはっきりしていて、日本のような組織体質がない」なんて言うのが単なる幻想だという事がよく分かるよ。大きな組織というのは、洋の東西問わず中枢は腐りやすいのさ。
ともかくスペースシャトルがなぜ失敗作と呼ばれるかをちょっと語ってみたい。

失敗点そのいち 予算かかりすぎ
シャトルはその要求性能をクリアするために、開発に関しては苦難の道で当初からかなりな予算が使われた。このため費やされた予算自体がかなりな額に上る。有人宇宙飛行自体は単純に比較できるもんでもないが、こと人工衛星打ち上げであれば普通に無人のロケットで打ち上げた場合とのコスト比較をすると、頭抱えたくなるほど高くついた。

失敗点そのに システムが複雑すぎ
まず性能を満たす、という形で開発が進み、とりあえず満たすとこまで行ったら開発改良はほぼストップしていたから、操作やシステムの簡素化はほとんどなされなかった。このため操作一つとってもかなり複雑であり、また整備に関しても作業量が膨大になるだけでなく、単純な、例えばネジ一つ締めるにも報告書書かなきゃいけないような感じになっていて、結果メンテナンスコストの大幅な増大にも繋がっていた。

失敗点そのさん 人命軽視しすぎ
トラブルが発生した際の乗員の救命システムがほとんどなかった。例えばロシアのソユーズの場合、トラブルが発生したら乗員のいるブロックだけ切り離してパラシュートで降りるシステムがあったが(実際使って乗員が助かったこともある)、こういうシステムはシャトルには皆無。チャレンジャー事故後、一応設置はされたが、大気圏内で滑空しているときしか使えないシロモノで、実際コロンビア号の事故の時には使えなかったし、チャレンジャー号事故の時に既にあったとしても使えたかどうかは期待薄らしい。
要は何かあったら乗員は死ね、というシステムだったわけ。で、そういう感じだったことをNASAの幹部は認識すらしてなかったらしい。

失敗点そのよん そして実際に事故が起きて多くの人命が失われた
しかも2回の事故の直接原因をNASAの現場は既に認識していたという事実。どちらの事故も防げる可能性はあったが、NASAにその予算と能力がなかった。そのことは1回事故を起こしただけではなくて再度2回目の事故を起こしたことも示している。思いもよらぬ事態だったら弁護の余地もあるが、どちらの事故の調査報告書も原因が「NASAの組織文化が原因」と共通したことを言っており、弁解の余地はない。

失敗点そのご NASAの能力不足
システムが複雑であってもきちんと運営できれば問題はない。人命軽視も事故が一切起こらなければ問題ない。お金がかかってもそれだけの予算があれば問題ない。とまあ、机上の空論ではあるけれども、NASAにはこれらがすべて不足していた。実際に問題なく運用するに足る予算も、不具合を認識してそれを解決する能力も、NASAにはなかった。当時の話を聞けば、NASA職員一人一人は休みもほとんどなく懸命に働き、それなりに優秀な仕事をしていたのだが、それは目の前の仕事をこなすだけの話。今やっている仕事の問題点を解決する余力はないし、それを行う人材もいなかった。また、やろうとしても予算がなかった。そして問題点を上層部は認識していなかった。これじゃどうにもならんわね。

簡単に言ってしまえば「人類には早すぎた」システムだった、と言うことですな。それをなんとかするために無理を通しすぎた。実績がたとえあったとしても、全体を見れば失敗だったのは間違いないわけ。実際、次世代スペースシャトルはアメリカは勿論、他の国ですら研究をもうやめている。
今はもう宇宙開発についても無茶が通せる時代でもなく、アメリカでも民間のロケットを活用するなど、計画は結構現実的な話になっているし、開発も慎重。シャトルのように人体実験でいきなり人乗せて宇宙に飛ばすような無茶なことをせずに堅実に開発が続けられている。やっと人を乗せることもできたしね。

繰り返しになるけど、スペースシャトル自体の宇宙開発の貢献は計り知れないものがある。スペースシャトルがなければ今が無いのは確か。ただ、そこに至るための犠牲があまりにも大きいので「総合的に見れば失敗」となるわけで、要は今後に生かせればまだいいと言える。それに、主に費やされたのはアメリカ国民の税金ではあるし、日本人がどうこう言っても仕方ないね(まあ、日本だって乗せてもらうためにそれ相応の負担はしたろうが)。
でもまあ、そろそろ何か新しい形でわくわくさせて欲しいなあ、とは思いますね。子供の頃に飛行機の形のロケットが初飛行するのを見たり、日本人が宇宙飛行士になったりした世代とすると、何か新しいことがあって欲しいなあ、とは思うんですけどね。
とりあえずは軌道エレベーターの建設に期待しちゃったりしますね。まあ、軌道から地面を繋ぐのに必要なケーブルが、まだ技術的に数十センチしか作れないみたいで、先は長そうだけどもね。
コメント
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