暇にかまけてネット見てたら、とある一つの会社の解散の報に触れた。株式会社UEIと言う会社。会社の公式サイト行っても、その手のジャンルに詳しい人でないとまず何をやっているのかすら分からない会社ではあるがね。
んでこの会社、ぬたりにはちょっとした思い出がありまして、2013年に一つのタブレット端末を発売していて、当時、ぬたりはこれに少し興味を引かれた。その名を「enchantMOON」という。
このタブレット端末。少々変わったデバイスで、まずOSが独自のものになっている。Androidをベースにはしているが、電源を立ち上げても、みんながタブレットやスマホで馴染んでいるあの画面は出てこない。画面は真っ黒である。
ここに付属のタッチペンで命令を書き込むことによりプログラムが起動する。例えば写真を撮りたいなら「CAMERA」とペンで書いて、その周りを指でタッチして丸く囲めば写真のアプリが起動する、と言った具合。要するに、直感的に文字を書いて、それを活用するデバイスであって、今現在、タブレットのOSの代表格であるドロイドもiOSも、OSとしてはこんな動作は想定していない。そういった意味で独創的な観点に立って設計されたOSと言える。
これ書いている2020年には、20世紀の頃に比べれば信じられないくらいにデジタルデバイスが日常に浸透してきている。今や多くの人がスマホを手放せないほどにもなっているけど、それでもいまだにシステム手帳は売れ続けているように、完全なデジタル化というのも難しいものがある。物を書くという行為はそれ自体にも意味があるから、スマホの画面をポチポチするだけではピンとこない、と言う人も多い。そんな人にも、こうした書くこととデジタルとをシームレスにつないでくれるデバイスがあれば、それ自体はとても良いデバイスにもなり得るわけである。
・・・うまくいけばね。
残念ながら世の中そうはいかない。enchantMOONは発売までは盛んにネットや業界誌に取り上げられ、発売後はあっという間に廃れた。
最大の弱点は、機能とすると実はそんなに独創的でもなかったと言うこと。
確かに書くことに特化した「OS」はなく、この点は独特。ただ、では機械としては、アプリとしては、と考えた場合には、書くことに特化したものは他にもあった。書くことを求めるなら、そういうアプリや機械を導入するのが一番手っ取り早く、わざわざ新しいデバイスを高いお金払って(4万円くらいした)買う必要はなかったのね。
それから完成度の問題。小規模ベンチャーの製品のため、製品テストや製品の熟成は望むべくもなく、発売直後から購入者の「そもそも電源が入らない」レベルの不具合報告が複数寄せられることになった。また、書くことに特化したという割にペンや指の認識がうまくいかなかったり、値段相応に低い性能で処理落ちやフリーズも多発。これがネットを賑わすに及び、商品信頼度は早いうちに失墜した。
ただ、ベンチャーが扱う全く新しい端末、と言うことで、ある程度の不具合は実はやむを得なかったりもする。一種の投資にも似た感覚で、今後この会社のこの端末は伸びる、と思えばできるだけ早く買って、慣れておく&可能であれば自分の意見を会社にフィードバックする、ということもできるし、お金が有り余ってる人なら出資等の参考にするために買っておいても良いだろう。でもそれは一部の人の話であって、一般レベルのユーザーとは実は縁のない話でもある。
でも、そういう注釈が公式にあまりなされた感じはない。それどころか当時の社長は、雑誌で、業界のイベントで、会社発表で、それはそれは素晴らしい物ができたと喧伝した。もちろん売るためには大事なことで、今はまだちょっと動作が怪しくて・・・なんて馬鹿正直に発表する人間がいるわけないんだが、将来の構想と現況をもう少し分けて話ができれば良かったんだろうけどもね。その言ってみれば「大言壮語」に多くの人が完成品レベルの物なんだろうと勘違いしたことは、結果的には不幸なこととなった。
それでも発売当時、好意的な反応はなかったわけでもなく、実際新しいことやろうとしていることを評価する声はあったし、ベンチャーとすればこの程度は仕方ない、という声にも説得力はないではなかった。ただ、それにしても、将来性はあるかもしれないけど今は一般人が手を出せるレベルの物じゃない、という意見の一致はある程度見ていて、発売時に大きく膨らんだ風船は急にしぼむ形にはなった。
が、満足度は低かろうが、ベンチャーの作った新端末としてはそれなりな数の販売数を記録したことは事実。と言うことは会社にはそれなりのまとまった現金が入ったわけで、これはその後の開発のことを考えれば悪くない。初期ユーザーの満足度は低かろうが、アップデートや各種サービスでその後のサポートも可能なんだから、最初に結構な数が捌けたのは良いことではあるだろう。その資金を次につなげるのが継続した商売というものだ。
その後につながればね。
残念ながらこの端末に「その後」はなかった。一応1回バージョンアップはあったが、あくまでも不具合の是正くらいで、今後に明るい材料を振りまける改良でもなかった。そして発売2年後の2015年、正式に生産終了のアナウンスがあった。「手書き認識プログラムの利用期限となったため」という理由で。
ネットをちょっと叩くと、とにかくこの商品や社長に対する否定的な意見は多く出てくる。ぬたりとすれば、彼らの商売に関係したこともないので肯定も否定もする立場にないが、ぬたりの持つスマホやKindle fireあたりは、こうした多くの製品の屍の上に立ってるんだろうなあ、とは思いますね。こうして人知れず倒れていった商品って、実は多いんだろうなあ。
んでこの会社、ぬたりにはちょっとした思い出がありまして、2013年に一つのタブレット端末を発売していて、当時、ぬたりはこれに少し興味を引かれた。その名を「enchantMOON」という。
このタブレット端末。少々変わったデバイスで、まずOSが独自のものになっている。Androidをベースにはしているが、電源を立ち上げても、みんながタブレットやスマホで馴染んでいるあの画面は出てこない。画面は真っ黒である。
ここに付属のタッチペンで命令を書き込むことによりプログラムが起動する。例えば写真を撮りたいなら「CAMERA」とペンで書いて、その周りを指でタッチして丸く囲めば写真のアプリが起動する、と言った具合。要するに、直感的に文字を書いて、それを活用するデバイスであって、今現在、タブレットのOSの代表格であるドロイドもiOSも、OSとしてはこんな動作は想定していない。そういった意味で独創的な観点に立って設計されたOSと言える。
これ書いている2020年には、20世紀の頃に比べれば信じられないくらいにデジタルデバイスが日常に浸透してきている。今や多くの人がスマホを手放せないほどにもなっているけど、それでもいまだにシステム手帳は売れ続けているように、完全なデジタル化というのも難しいものがある。物を書くという行為はそれ自体にも意味があるから、スマホの画面をポチポチするだけではピンとこない、と言う人も多い。そんな人にも、こうした書くこととデジタルとをシームレスにつないでくれるデバイスがあれば、それ自体はとても良いデバイスにもなり得るわけである。
・・・うまくいけばね。
残念ながら世の中そうはいかない。enchantMOONは発売までは盛んにネットや業界誌に取り上げられ、発売後はあっという間に廃れた。
最大の弱点は、機能とすると実はそんなに独創的でもなかったと言うこと。
確かに書くことに特化した「OS」はなく、この点は独特。ただ、では機械としては、アプリとしては、と考えた場合には、書くことに特化したものは他にもあった。書くことを求めるなら、そういうアプリや機械を導入するのが一番手っ取り早く、わざわざ新しいデバイスを高いお金払って(4万円くらいした)買う必要はなかったのね。
それから完成度の問題。小規模ベンチャーの製品のため、製品テストや製品の熟成は望むべくもなく、発売直後から購入者の「そもそも電源が入らない」レベルの不具合報告が複数寄せられることになった。また、書くことに特化したという割にペンや指の認識がうまくいかなかったり、値段相応に低い性能で処理落ちやフリーズも多発。これがネットを賑わすに及び、商品信頼度は早いうちに失墜した。
ただ、ベンチャーが扱う全く新しい端末、と言うことで、ある程度の不具合は実はやむを得なかったりもする。一種の投資にも似た感覚で、今後この会社のこの端末は伸びる、と思えばできるだけ早く買って、慣れておく&可能であれば自分の意見を会社にフィードバックする、ということもできるし、お金が有り余ってる人なら出資等の参考にするために買っておいても良いだろう。でもそれは一部の人の話であって、一般レベルのユーザーとは実は縁のない話でもある。
でも、そういう注釈が公式にあまりなされた感じはない。それどころか当時の社長は、雑誌で、業界のイベントで、会社発表で、それはそれは素晴らしい物ができたと喧伝した。もちろん売るためには大事なことで、今はまだちょっと動作が怪しくて・・・なんて馬鹿正直に発表する人間がいるわけないんだが、将来の構想と現況をもう少し分けて話ができれば良かったんだろうけどもね。その言ってみれば「大言壮語」に多くの人が完成品レベルの物なんだろうと勘違いしたことは、結果的には不幸なこととなった。
それでも発売当時、好意的な反応はなかったわけでもなく、実際新しいことやろうとしていることを評価する声はあったし、ベンチャーとすればこの程度は仕方ない、という声にも説得力はないではなかった。ただ、それにしても、将来性はあるかもしれないけど今は一般人が手を出せるレベルの物じゃない、という意見の一致はある程度見ていて、発売時に大きく膨らんだ風船は急にしぼむ形にはなった。
が、満足度は低かろうが、ベンチャーの作った新端末としてはそれなりな数の販売数を記録したことは事実。と言うことは会社にはそれなりのまとまった現金が入ったわけで、これはその後の開発のことを考えれば悪くない。初期ユーザーの満足度は低かろうが、アップデートや各種サービスでその後のサポートも可能なんだから、最初に結構な数が捌けたのは良いことではあるだろう。その資金を次につなげるのが継続した商売というものだ。
その後につながればね。
残念ながらこの端末に「その後」はなかった。一応1回バージョンアップはあったが、あくまでも不具合の是正くらいで、今後に明るい材料を振りまける改良でもなかった。そして発売2年後の2015年、正式に生産終了のアナウンスがあった。「手書き認識プログラムの利用期限となったため」という理由で。
ネットをちょっと叩くと、とにかくこの商品や社長に対する否定的な意見は多く出てくる。ぬたりとすれば、彼らの商売に関係したこともないので肯定も否定もする立場にないが、ぬたりの持つスマホやKindle fireあたりは、こうした多くの製品の屍の上に立ってるんだろうなあ、とは思いますね。こうして人知れず倒れていった商品って、実は多いんだろうなあ。