チャイナセブン(中国共産党中央政治局常務委員)の改選が行われる18日の中国共産党第19回大会まで、2週間を切ってきました。
読売新聞が、「2017 共産党大会 習経済の行方」と題した特集記事を、4日から3日間に渡り連載していましたので備忘録としてアップさせていただきます。
腐敗政治追放の御旗で、江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団派の政敵を駆除し、専制化を成し遂げた習近平優位のチャイナセブン陣容となりそうですが、特集は、「習近平政権2期目の最大の課題は、減速する経済への対応だ」と指摘し、現状の低迷を論じています。
鄧小平が、毛沢東の専制政治がもたらした政治・経済の破綻から、集団指導体制(≒現チャイナセブン)と改革開放経済路線を導入し、今日の世界第二位のGDPと、そのおかげでの軍事大国となったのですが、その毛沢東時代に回帰を目指しているかに見える習近平の専制政治化(人民の人気を獲得していたライバルで失墜させた薄煕来の「唱紅打黒」運動の真似?)が進む状況に経済の側面からフォーカスして警鐘を鳴らしていると読める特集記事です。
社会主義政治体制の下での改革開放経済。中国独自に編み出された鄧小平・胡耀邦による経済体制は、共青団派によって引き継がれ、習政権では李克強首相があたり、成長率の低迷に伴うバブル崩壊対策に追われながら、硬直化した国有企業改革を民間企業の活力を活かして進めようとしました。
ところが、首相が担当する経済政策も習近平の専制化で剥奪され、国有企業重視側へと変化させられました。
記事では、新チャイナセブン体制でも、共青団派ではなく、習近平派によって経済政策が進められるとのこと。
北朝鮮へのガバナンスのロシアとの主導権争い。南シナ海での仲裁裁判所による「九段線」の否定と「航行の自由作戦」の継続と強化。G2構想の米国側の拒否姿勢強化。「一帯一路」政策での、日本とのインフラ投資受注競争。等々、習近平の外交失政とその挽回もある中で、「毛沢東回帰」を進める習近平。
18日開催の党大会でのチャイナセブンの陣容で、世界第二位のGDPと、軍事力を誇りながらも、悪化する病みを抱える大国・中国の行方が見えてくるのでしょうか。要注目です。
# 冒頭の画像は、「唱紅打黒」運動で人民の支持を増やしつつあった、薄煕来
↓よろしかったら、お願いします。
読売新聞が、「2017 共産党大会 習経済の行方」と題した特集記事を、4日から3日間に渡り連載していましたので備忘録としてアップさせていただきます。
腐敗政治追放の御旗で、江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団派の政敵を駆除し、専制化を成し遂げた習近平優位のチャイナセブン陣容となりそうですが、特集は、「習近平政権2期目の最大の課題は、減速する経済への対応だ」と指摘し、現状の低迷を論じています。
鄧小平が、毛沢東の専制政治がもたらした政治・経済の破綻から、集団指導体制(≒現チャイナセブン)と改革開放経済路線を導入し、今日の世界第二位のGDPと、そのおかげでの軍事大国となったのですが、その毛沢東時代に回帰を目指しているかに見える習近平の専制政治化(人民の人気を獲得していたライバルで失墜させた薄煕来の「唱紅打黒」運動の真似?)が進む状況に経済の側面からフォーカスして警鐘を鳴らしていると読める特集記事です。
2017 共産党大会 習経済の行方 上 (10/4 産経)
今月18日に開幕する中国共産党大会で発足する習近平政権2期目の最大の課題は、減速する経済への対応だ。1期目の5年間で「習経済学」ともてはやされるようになった経済政策はどこへ向かうのか。
国有企業統制を強化 定款変更「命令」日系にも 民間の成長停滞改革と逆行
党組織設置
この夏、中国内陸部に拠点を置く日系企業の合弁会社は、合弁相手で親会社にあたる中国の国有企業から届いた1通の文書によって、騒然となった。
タイトルは「党委員会設置のお願い」。会社定款を書き換えて共産党の末端組織である党委を社内に設置するよう、役員会で議題とすることを求め、①党委の設置②党委書記(トップ)を合弁相手の会長が務める③重要な経営判断は党委書記に事前に伝え、意見を聞く━━などとする定款の「模範文」も同封されていた。
短期の猶予しか与えない、事実上の「命令」だ。日系企業側は、最終的には定款変更に応じざるをえない見通しだ。党委書記による「助言」などが制度化すれば、経済合理性を優先する経営陣の判断に、党という別系統の判断が入り込みかねない。定款変更の準備に追われる社員は「どんな影響が出るか見通せない」と漏らした。
明文化3000社超
関係者によると、自動車関連の日系合弁企業にも、同様の提案があったという。習政権が昨年秋以降、国有企業に対して進めてきた統制強化の動きを受けたものであるのは確実だ。
党最高規則の党規約は、企業や学校などで党員が3人以上となった場合、党の方針や政策を下達する「党支部委員会」などの設置を求めているが、外資企業などでは厳格に運用されてこなかった。しかし、習総書記(国家主席)が昨年10月、「一部の国有企業で党の指導が弱まっている」と指摘した直後から、定款に党組織設置を盛り込む動きが加速した。党による経営への関与を明文化したのはすでに、3000社以上に上る。
国有企業は、経済の効率化や公平性の阻害を排除するとの観点から、スリム化や民営化など「改革論」が叫ばれてきた。習氏は、党による統治強化を強調することで、国有企業対策に乗り出す姿勢を演出しようとしているようだ。
国策の先兵
北京から南に約100キロの河北省の「雄安新区」。習氏が鄧小平の広東省深圳、江沢民元総書記の上海浦東地区を意識したとされる新都市開発構想をぶち上げてから半年、繊維産業の衰退でシャッター街となっていた中心部は見違えるような活況を呈している。不動産投機防止で売買が禁止されていることから、国有企業はオフィスを高値で借り上げて続々と出先機関を開設。賃料は半年で4~5倍に高騰し、一部で疑問視する見方もあった構想の盛り上げに一役買っている。
この5年間で、国直属の中央国有企業は117社が98社に整理されながら、資産総額は5年前より80%増の50兆元(約850兆円)に膨らんだ。習政権は、「国策の先兵」の顔も持つ国有企業に対し、統治強化でプレーキをかける一方、同時にアクセルを踏むかのような「拡大路線」も掲げる。
今年8月、電力大手の中国国電集団と石炭大手の神華集団による資産総額計1.8兆元(約30兆円)に上る合併が成立した。インフラ(社会基盤)建設や重厚長大産業に強みを持つ大手に、先進国なら独占禁止法に触れかねない大型合併を推奨している。習氏の看板政策である巨大経済圏構想「一帯一路」に貢献させる狙いがある。
だが「政治」優先の経済政策は、民間企業の成長を妨げかねない。今年1~8月、国有製造企業の利益総額は前年同期比46%増だったのに対し、民間は14%増にとどまった。国有企業が得意なインフラ建設を中心とする投資依存の経済構造が、いまだに残る。
清華大学国家金融研究院の朱寧・副院長は、国有企業に民間企業が圧迫される「国進民退」が「5年間でむしろ進んだ」と警鐘を鳴らす。
今月18日に開幕する中国共産党大会で発足する習近平政権2期目の最大の課題は、減速する経済への対応だ。1期目の5年間で「習経済学」ともてはやされるようになった経済政策はどこへ向かうのか。
国有企業統制を強化 定款変更「命令」日系にも 民間の成長停滞改革と逆行
党組織設置
この夏、中国内陸部に拠点を置く日系企業の合弁会社は、合弁相手で親会社にあたる中国の国有企業から届いた1通の文書によって、騒然となった。
タイトルは「党委員会設置のお願い」。会社定款を書き換えて共産党の末端組織である党委を社内に設置するよう、役員会で議題とすることを求め、①党委の設置②党委書記(トップ)を合弁相手の会長が務める③重要な経営判断は党委書記に事前に伝え、意見を聞く━━などとする定款の「模範文」も同封されていた。
短期の猶予しか与えない、事実上の「命令」だ。日系企業側は、最終的には定款変更に応じざるをえない見通しだ。党委書記による「助言」などが制度化すれば、経済合理性を優先する経営陣の判断に、党という別系統の判断が入り込みかねない。定款変更の準備に追われる社員は「どんな影響が出るか見通せない」と漏らした。
明文化3000社超
関係者によると、自動車関連の日系合弁企業にも、同様の提案があったという。習政権が昨年秋以降、国有企業に対して進めてきた統制強化の動きを受けたものであるのは確実だ。
党最高規則の党規約は、企業や学校などで党員が3人以上となった場合、党の方針や政策を下達する「党支部委員会」などの設置を求めているが、外資企業などでは厳格に運用されてこなかった。しかし、習総書記(国家主席)が昨年10月、「一部の国有企業で党の指導が弱まっている」と指摘した直後から、定款に党組織設置を盛り込む動きが加速した。党による経営への関与を明文化したのはすでに、3000社以上に上る。
国有企業は、経済の効率化や公平性の阻害を排除するとの観点から、スリム化や民営化など「改革論」が叫ばれてきた。習氏は、党による統治強化を強調することで、国有企業対策に乗り出す姿勢を演出しようとしているようだ。
国策の先兵
北京から南に約100キロの河北省の「雄安新区」。習氏が鄧小平の広東省深圳、江沢民元総書記の上海浦東地区を意識したとされる新都市開発構想をぶち上げてから半年、繊維産業の衰退でシャッター街となっていた中心部は見違えるような活況を呈している。不動産投機防止で売買が禁止されていることから、国有企業はオフィスを高値で借り上げて続々と出先機関を開設。賃料は半年で4~5倍に高騰し、一部で疑問視する見方もあった構想の盛り上げに一役買っている。
この5年間で、国直属の中央国有企業は117社が98社に整理されながら、資産総額は5年前より80%増の50兆元(約850兆円)に膨らんだ。習政権は、「国策の先兵」の顔も持つ国有企業に対し、統治強化でプレーキをかける一方、同時にアクセルを踏むかのような「拡大路線」も掲げる。
今年8月、電力大手の中国国電集団と石炭大手の神華集団による資産総額計1.8兆元(約30兆円)に上る合併が成立した。インフラ(社会基盤)建設や重厚長大産業に強みを持つ大手に、先進国なら独占禁止法に触れかねない大型合併を推奨している。習氏の看板政策である巨大経済圏構想「一帯一路」に貢献させる狙いがある。
だが「政治」優先の経済政策は、民間企業の成長を妨げかねない。今年1~8月、国有製造企業の利益総額は前年同期比46%増だったのに対し、民間は14%増にとどまった。国有企業が得意なインフラ建設を中心とする投資依存の経済構造が、いまだに残る。
清華大学国家金融研究院の朱寧・副院長は、国有企業に民間企業が圧迫される「国進民退」が「5年間でむしろ進んだ」と警鐘を鳴らす。
2017 共産党大会 習経済の行方 中 (10/5 産経)
人民元高で党勢演出 「当局操作」国際化遠のく
仮想通貨の代表格ビットコインの世界の取引で、一時は9割を占めた中国の取引市場が一瞬にして「消滅」した。先月15日夜に、金融業界を駆けめぐった「中国ビットコイン3大取引所の閉鎖決定」のニュース。中国政府から突き放されたビットコインの相場はその後、乱高下を続けている。
10月18日に共産党大会開幕を控える習近平政権は、国内経済の安定を確保するため、「金融の安全」を最優先課題に掲げている。ビットコインを悪用した犯罪が頻発し、海外への資金逃避での利用も指摘される中、世界を席巻する仮想通貨は、あっさりとスケープゴートとされてしまった。
元売り抑制
いかなる経済活動も、党に奉仕するために存在する。そんな解釈さえ可能に思える習政権の経済政策に対する姿勢は、人民元の為替政策において、なお顕著だ。
今年5月末、中国人民銀行(中央銀行)は突如、毎日のレートの目安となる「基準値」の算出方法を、「元安」になりにくい仕組みに変更した。人民元は、昨年11月のトランプ大統領当選に伴うドル高の流れで急落を続け、今年1月には、中国側の心理的な節目とされる1ドル=7元直前まで元安が進んでいた。
中国当局は同時に、企業、個人に対するドル両替規制を強化し、元売りの動きを抑制。海外への資本流出が元安につながるとの見方から、海外で合併・買収(M&A)を繰り広げる大手企業の監視も強化した。
一連の「防衛戦」の結果、人民元は年初から9月上旬までに対ドルで約7%も上昇、その後は下落傾向にあるものの、昨年の下落分は取り戻した。昇り竜の印象さえ感じさせた一時期の急激な元高は、党大会で自らの権威を確立させようとする習氏の姿とも重なり、「相場防衛というより党大会前の演出」(エコノミスト)とも指摘される。
人民元はもともと、習政権が進める大国外交の小道具としても存在してきた。2016年10月には国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に加わり、米ドルや日本円などと並ぶ「5大通貨」の一角に入る念願を果たした。メンツを保った形の習氏は、今年7月の全国金融工作会議で、自らの1期5年で「中国の金融改革は、新たな業績を成し遂げた」と強調し、その成果の一つとして「人民元の国際化」を挙げた。
失速も
「人民銀には(市場で)絶対に勝てない。彼らはルールメーカーであり、負けそうになればルールを変えてしまう」。海外の金融関係者の嘆きからは、当局の都合次第で自在に操作されるという人民元の「実像」が浮き彫りとなってくる。
だが、通貨はやはり生き物だ。SDR加入から1年、なりふり構わぬ規制があだとなり、国際決済で元の利用比率は落ち込みつつある。国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、ピークの15年8月に2.8%に達し日本円を初めて抜いたが、今年8月には1.9%に沈んだ。40%近い米ドルの足元にも及ばない。
銀行関係者は「世界第2位の経済力を誇りながらも、相応のプレゼンス(存在感)が出せていない」と、金融市場へのいびつな対応の弊害を指摘する。かつて、円の国際化に失敗した日本経済はその後、いばらの道をたどった。党に管理されながら、人民元は真の「国際化」へ向かうことができるのか。今のところ聞こえてくるのは、悲観的な見方ばかりだ。
人民元高で党勢演出 「当局操作」国際化遠のく
仮想通貨の代表格ビットコインの世界の取引で、一時は9割を占めた中国の取引市場が一瞬にして「消滅」した。先月15日夜に、金融業界を駆けめぐった「中国ビットコイン3大取引所の閉鎖決定」のニュース。中国政府から突き放されたビットコインの相場はその後、乱高下を続けている。
10月18日に共産党大会開幕を控える習近平政権は、国内経済の安定を確保するため、「金融の安全」を最優先課題に掲げている。ビットコインを悪用した犯罪が頻発し、海外への資金逃避での利用も指摘される中、世界を席巻する仮想通貨は、あっさりとスケープゴートとされてしまった。
元売り抑制
いかなる経済活動も、党に奉仕するために存在する。そんな解釈さえ可能に思える習政権の経済政策に対する姿勢は、人民元の為替政策において、なお顕著だ。
今年5月末、中国人民銀行(中央銀行)は突如、毎日のレートの目安となる「基準値」の算出方法を、「元安」になりにくい仕組みに変更した。人民元は、昨年11月のトランプ大統領当選に伴うドル高の流れで急落を続け、今年1月には、中国側の心理的な節目とされる1ドル=7元直前まで元安が進んでいた。
中国当局は同時に、企業、個人に対するドル両替規制を強化し、元売りの動きを抑制。海外への資本流出が元安につながるとの見方から、海外で合併・買収(M&A)を繰り広げる大手企業の監視も強化した。
一連の「防衛戦」の結果、人民元は年初から9月上旬までに対ドルで約7%も上昇、その後は下落傾向にあるものの、昨年の下落分は取り戻した。昇り竜の印象さえ感じさせた一時期の急激な元高は、党大会で自らの権威を確立させようとする習氏の姿とも重なり、「相場防衛というより党大会前の演出」(エコノミスト)とも指摘される。
人民元はもともと、習政権が進める大国外交の小道具としても存在してきた。2016年10月には国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に加わり、米ドルや日本円などと並ぶ「5大通貨」の一角に入る念願を果たした。メンツを保った形の習氏は、今年7月の全国金融工作会議で、自らの1期5年で「中国の金融改革は、新たな業績を成し遂げた」と強調し、その成果の一つとして「人民元の国際化」を挙げた。
失速も
「人民銀には(市場で)絶対に勝てない。彼らはルールメーカーであり、負けそうになればルールを変えてしまう」。海外の金融関係者の嘆きからは、当局の都合次第で自在に操作されるという人民元の「実像」が浮き彫りとなってくる。
だが、通貨はやはり生き物だ。SDR加入から1年、なりふり構わぬ規制があだとなり、国際決済で元の利用比率は落ち込みつつある。国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、ピークの15年8月に2.8%に達し日本円を初めて抜いたが、今年8月には1.9%に沈んだ。40%近い米ドルの足元にも及ばない。
銀行関係者は「世界第2位の経済力を誇りながらも、相応のプレゼンス(存在感)が出せていない」と、金融市場へのいびつな対応の弊害を指摘する。かつて、円の国際化に失敗した日本経済はその後、いばらの道をたどった。党に管理されながら、人民元は真の「国際化」へ向かうことができるのか。今のところ聞こえてくるのは、悲観的な見方ばかりだ。
2017 共産党大会 習経済の行方 下 (10/6 産経)
環境浄化へ大号令 焼き肉店「営業停止」・EV生産にノルマ
巻き添え
「巡察隊が来る。1か月間、営業停止しろ」
8月上旬、四川省の省都・成都のマンションー階で焼き肉店を営む男性(38)は、地域の管理者から突然、こう通知された。
1か月6000元(約10万円)の賃料を支払いながら個人営業の店を維持してきた男性にとって、突然の休業は死活間題だ。だが、通知の背後には、この夏、大気汚染など環境対策を徹底させるため、各地に査察人員を送り込んだ中央政府の存在がある。成都などの一部の地方政府は零細企業への対策が行き届いていないなどと追及されるのを免れるため、煙を吐き出す工場などを閉鎖させる措置を取っており、男性の店も、その巻き添えとなったのだ。
成都では、自動車修理工場や洗車場も水質汚染対策とみられる措置で休業を余儀なくされた。タクシー運転手(48)は「環境問題と何の関係があるというのか。上の決定で影響を受けるのは、いつも庶民なんだ」と吐き捨てた。
国民受け重視
「(大気汚染のない)好天を一日一日積み重ね、微小粒子状物質(PM2.5)については1マイクロ・グラムでも細かくこだわり、削減せよ」
習近平総書記の側近で北京市トップの蔡奇(ツァイチー)・市共産党委員会書記は9月、市の対策会議でゲキを飛ばした。具体策として、暖房などの燃料源となってきた石炭について、市中心部では「使用ゼロ」の実現を求めた上で、汚染対策が不十分な14地区を名指しで批判した。
「急速な経済発展の中で、多くの環境問題が蓄積されてきた。環境を犠牲にしたその場しのぎの成長は排除する」(習氏)。汚職摘発、貧困撲滅など、国民受けする政策を重視する習政権にとって、大都市の環境対策は喫緊の優先課題となる。
経済に影
大気汚染が深刻化する冬季を含む半年間、北京と天津、河北省の3地域では、PM2.5濃度を前年比で15%改善する目標を立てた。ただ、達成のために、周辺の工場など「約18万社が生産中止に追い込まれる」(エコノミスト)見込みで、割を食うのは経済活動だ。
8年連続の新車販売台数世界一を誇る自動車市場にも混乱が及んだ。政府は6月、自動車メーカーに電気自動車(EV)など新工ネルギー車の生産ノルマを課す新規制を来年から導入する方針を示した。日系メーカーの大半は、中国ではEVを生産していない。半年後に規制が導入されれば、「対応しきれず、ペナルティーを覚悟するしかない」(業界団体)状態だった。
海外のメーカーや業界団体に加え、EVで先行する国内メーカーからも反発が広がり、中国の自動車業界団体は「大多数の企業が困難に陥る」と泣きついた。事態を重く見た政府は9月末、新規制実施の1年先送りを発表。「目的は正しくても、実行は容易でない」(外交筋)という現実も浮き彫りになった。
それでも、ある経済学者は、習政権が10月の党大会後、環境対策のような急進的な「改革」をさらに進めることで「国内の動揺は避けられないだろう」と見る。
党大会人事を通じ、2期目の習政権は、経済政策を担う重要ブレーンが習派で固められるとの見方もある。周囲に集められた子飼いたちが、「1強」体制を強める習氏におもねらずに専門的識見を示すことができるのか。1期目のキーワードが「反腐敗」なら、2期目は「経済」━━。中国の複数の識者は危機感を込めて、こう口をそろえる。(中国共産党大会取材班が担当しました)
環境浄化へ大号令 焼き肉店「営業停止」・EV生産にノルマ
巻き添え
「巡察隊が来る。1か月間、営業停止しろ」
8月上旬、四川省の省都・成都のマンションー階で焼き肉店を営む男性(38)は、地域の管理者から突然、こう通知された。
1か月6000元(約10万円)の賃料を支払いながら個人営業の店を維持してきた男性にとって、突然の休業は死活間題だ。だが、通知の背後には、この夏、大気汚染など環境対策を徹底させるため、各地に査察人員を送り込んだ中央政府の存在がある。成都などの一部の地方政府は零細企業への対策が行き届いていないなどと追及されるのを免れるため、煙を吐き出す工場などを閉鎖させる措置を取っており、男性の店も、その巻き添えとなったのだ。
成都では、自動車修理工場や洗車場も水質汚染対策とみられる措置で休業を余儀なくされた。タクシー運転手(48)は「環境問題と何の関係があるというのか。上の決定で影響を受けるのは、いつも庶民なんだ」と吐き捨てた。
国民受け重視
「(大気汚染のない)好天を一日一日積み重ね、微小粒子状物質(PM2.5)については1マイクロ・グラムでも細かくこだわり、削減せよ」
習近平総書記の側近で北京市トップの蔡奇(ツァイチー)・市共産党委員会書記は9月、市の対策会議でゲキを飛ばした。具体策として、暖房などの燃料源となってきた石炭について、市中心部では「使用ゼロ」の実現を求めた上で、汚染対策が不十分な14地区を名指しで批判した。
「急速な経済発展の中で、多くの環境問題が蓄積されてきた。環境を犠牲にしたその場しのぎの成長は排除する」(習氏)。汚職摘発、貧困撲滅など、国民受けする政策を重視する習政権にとって、大都市の環境対策は喫緊の優先課題となる。
経済に影
大気汚染が深刻化する冬季を含む半年間、北京と天津、河北省の3地域では、PM2.5濃度を前年比で15%改善する目標を立てた。ただ、達成のために、周辺の工場など「約18万社が生産中止に追い込まれる」(エコノミスト)見込みで、割を食うのは経済活動だ。
8年連続の新車販売台数世界一を誇る自動車市場にも混乱が及んだ。政府は6月、自動車メーカーに電気自動車(EV)など新工ネルギー車の生産ノルマを課す新規制を来年から導入する方針を示した。日系メーカーの大半は、中国ではEVを生産していない。半年後に規制が導入されれば、「対応しきれず、ペナルティーを覚悟するしかない」(業界団体)状態だった。
海外のメーカーや業界団体に加え、EVで先行する国内メーカーからも反発が広がり、中国の自動車業界団体は「大多数の企業が困難に陥る」と泣きついた。事態を重く見た政府は9月末、新規制実施の1年先送りを発表。「目的は正しくても、実行は容易でない」(外交筋)という現実も浮き彫りになった。
それでも、ある経済学者は、習政権が10月の党大会後、環境対策のような急進的な「改革」をさらに進めることで「国内の動揺は避けられないだろう」と見る。
党大会人事を通じ、2期目の習政権は、経済政策を担う重要ブレーンが習派で固められるとの見方もある。周囲に集められた子飼いたちが、「1強」体制を強める習氏におもねらずに専門的識見を示すことができるのか。1期目のキーワードが「反腐敗」なら、2期目は「経済」━━。中国の複数の識者は危機感を込めて、こう口をそろえる。(中国共産党大会取材班が担当しました)
社会主義政治体制の下での改革開放経済。中国独自に編み出された鄧小平・胡耀邦による経済体制は、共青団派によって引き継がれ、習政権では李克強首相があたり、成長率の低迷に伴うバブル崩壊対策に追われながら、硬直化した国有企業改革を民間企業の活力を活かして進めようとしました。
ところが、首相が担当する経済政策も習近平の専制化で剥奪され、国有企業重視側へと変化させられました。
記事では、新チャイナセブン体制でも、共青団派ではなく、習近平派によって経済政策が進められるとのこと。
北朝鮮へのガバナンスのロシアとの主導権争い。南シナ海での仲裁裁判所による「九段線」の否定と「航行の自由作戦」の継続と強化。G2構想の米国側の拒否姿勢強化。「一帯一路」政策での、日本とのインフラ投資受注競争。等々、習近平の外交失政とその挽回もある中で、「毛沢東回帰」を進める習近平。
18日開催の党大会でのチャイナセブンの陣容で、世界第二位のGDPと、軍事力を誇りながらも、悪化する病みを抱える大国・中国の行方が見えてくるのでしょうか。要注目です。
# 冒頭の画像は、「唱紅打黒」運動で人民の支持を増やしつつあった、薄煕来
↓よろしかったら、お願いします。