人民元のIMF・SDR認定が決まりました。SDRへの新規採用には、「通貨を保有する国・地域の輸出規模」と「通貨を自由に利用できるか」の二つの条件を満たすことが必要ですが、為替変動値を中国中央銀行=共産党が管理する人民元であるにも関わらず新規採用認定がなされました。
IMF、中国の人民元基準値算出法の変更を歓迎 | Reuters
変動値の設定の改変がなされたことを評価し、今後更なる自由化を促すとされていますが、易綱副総裁は「市場で一定以上の変動が起きれば介入を行う」と述べ、厳重な市場管理を続ける姿勢も示しています(12/2 読売朝刊・スキャナー)。
欧州諸国が、対中輸出での媚中を競っている。ロンドンとニューヨークが世界の金融センターの地位を競い人民元の取り込みを進めているといった背景が語りつくされてきましたが、産経は、IMFを背後から突き動かしたのは国際金融界で、グローバル金融市場の巨大フロンティア中国に目をつけたからだと指摘しています。
人民元のSDR入り 悪貨が世界を脅かす 完全自由化へ監視不可欠 (12/2 産経)
「悪貨が良貨を駆逐する」とは、金本位制の時代に限らない。いつの世も似たような法則が働く。現代版悪貨とは人民元である。
元は中国共産党の支配下にある中国人民銀行が基準相場を設定し、変動を基準値の上下2%以内に限って許容している。元の金融・資本市場は制限だらけで、取引不自由だ。公正に開かれた金融市場を基盤とし、為替レートが自由に変動する先進国通貨とは対極にある。ところが、国際通貨基金(IMF)は円を押しのけて元にドル、ユーロに次ぐ特別引き出し権(SDR)シェア第3位のお墨付きを与えた。
IMFを背後から突き動かしたのは国際金融界である。2008年9月のリーマン・ショックでバブル崩壊、収益モデルが破綻した国際金融資本が目をつけたのはグローバル金融市場の巨大フロンティア中国である。その現預金総額をドル換算すると9月末で21兆ドル超、日米合計約20兆ドルを上回る。
中国の習近平党総書記・国家主席は元の国際通貨化工作に大号令をかけてきた。対外膨張戦略のためには国際通貨元が欠かせないからだ。ラガルドIMF専務理事は3月下旬に訪中して「元のSDR入りは時間の問題よ」と李克強首相らにささやいた。元決済機能誘致を北京に陳情してきた英国をはじめ、欧州主要国はこぞって支持に回った。
米オバマ政権の中枢はニューヨーク・ウォール街出身者が占める。同政権は当初こそ態度を留保したが、北京がこの夏、金融の部分自由化を約束した途端、「IMFの条件に合えばSDR入りを支持する」(ルー財務長官)と豹変(ひょうへん)した。ウォール街ではシティ、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど大手が中国の大手国有商業銀行と組んで元決済センター開設準備がたけなわだ。
今後、世界では何が起きるか。元は世界最大の通貨発行量を誇る。国際通貨になれば、元は国際市場でドルとの交換が保証される。経済面ばかりでなく、政治、軍事の分野で元の威力はさらに増すだろう。
北京は最近、元の国際通貨化をうたい文句に、国際的な元決済システム「CIPS」を構築した。ドル決済システムの代替で、米情報当局による監視から逃れたい「ならず者国家」は元を使えばよい。党支配下の企業はカネにモノを言わせて、日本を排除しては東南アジアのインフラを手中に収めている。日米欧のハイテク企業などを対象に「爆買い」攻勢をかけている。
悪貨の膨張を防ぐ手段はただ一つ。元の為替制度と金融市場を他のSDR通貨と同程度に完全自由化させることだ。党による支配は自由市場から嫌われ、資本の逃避や元の暴落を招く。
ところが肝心のIMFは「改革が進むか今後も監視していく」(ラガルド氏)と弱々しい。約束違反しても罰則はない。IMFへの資金の貢ぎぶりでは世界一の日本は、もういいかげん、口くらい出したらどうか。(編集委員 田村秀男)
「悪貨が良貨を駆逐する」とは、金本位制の時代に限らない。いつの世も似たような法則が働く。現代版悪貨とは人民元である。
元は中国共産党の支配下にある中国人民銀行が基準相場を設定し、変動を基準値の上下2%以内に限って許容している。元の金融・資本市場は制限だらけで、取引不自由だ。公正に開かれた金融市場を基盤とし、為替レートが自由に変動する先進国通貨とは対極にある。ところが、国際通貨基金(IMF)は円を押しのけて元にドル、ユーロに次ぐ特別引き出し権(SDR)シェア第3位のお墨付きを与えた。
IMFを背後から突き動かしたのは国際金融界である。2008年9月のリーマン・ショックでバブル崩壊、収益モデルが破綻した国際金融資本が目をつけたのはグローバル金融市場の巨大フロンティア中国である。その現預金総額をドル換算すると9月末で21兆ドル超、日米合計約20兆ドルを上回る。
中国の習近平党総書記・国家主席は元の国際通貨化工作に大号令をかけてきた。対外膨張戦略のためには国際通貨元が欠かせないからだ。ラガルドIMF専務理事は3月下旬に訪中して「元のSDR入りは時間の問題よ」と李克強首相らにささやいた。元決済機能誘致を北京に陳情してきた英国をはじめ、欧州主要国はこぞって支持に回った。
米オバマ政権の中枢はニューヨーク・ウォール街出身者が占める。同政権は当初こそ態度を留保したが、北京がこの夏、金融の部分自由化を約束した途端、「IMFの条件に合えばSDR入りを支持する」(ルー財務長官)と豹変(ひょうへん)した。ウォール街ではシティ、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど大手が中国の大手国有商業銀行と組んで元決済センター開設準備がたけなわだ。
今後、世界では何が起きるか。元は世界最大の通貨発行量を誇る。国際通貨になれば、元は国際市場でドルとの交換が保証される。経済面ばかりでなく、政治、軍事の分野で元の威力はさらに増すだろう。
北京は最近、元の国際通貨化をうたい文句に、国際的な元決済システム「CIPS」を構築した。ドル決済システムの代替で、米情報当局による監視から逃れたい「ならず者国家」は元を使えばよい。党支配下の企業はカネにモノを言わせて、日本を排除しては東南アジアのインフラを手中に収めている。日米欧のハイテク企業などを対象に「爆買い」攻勢をかけている。
悪貨の膨張を防ぐ手段はただ一つ。元の為替制度と金融市場を他のSDR通貨と同程度に完全自由化させることだ。党による支配は自由市場から嫌われ、資本の逃避や元の暴落を招く。
ところが肝心のIMFは「改革が進むか今後も監視していく」(ラガルド氏)と弱々しい。約束違反しても罰則はない。IMFへの資金の貢ぎぶりでは世界一の日本は、もういいかげん、口くらい出したらどうか。(編集委員 田村秀男)
記事の赤色強調は、遊爺の主観で色付けさせていただいていますが、全面赤だらけになってしまうほど、物言いをつけたいところだらけの記事に賛同する状況です。
ラガルド専務理事は、人民元の採用について「中国経済の世界の金融システムへの統合に向けた重要な一里塚だ」とし、「中国が多大な努力を重ねてきたことは明らかだ」とも述べたうえで、改革を継続することが重要だとの見解を示し、「通貨を自由に利用できるか」の条件を中国が今後満たすことを期待しています。
IMF、人民元の採用を正式決定 国際通貨へ「一里塚」 - 産経ニュース
日経や読売の社説も、認定された事実は覆せないので、今後の為替の自由化に期待する論調ですね。
中国は国際通貨にふさわしい改革を急げ :日本経済新聞
人民元の国際化 自由な取引へ金融改革を図れ : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
しかし、中国は冒頭で触れたとおり、易綱副総裁が「市場で一定以上の変動が起きれば介入を行う」と述べ、厳重な市場管理を続ける姿勢を表明しています。
人民元 国際通貨に 中国の金融改革必須 変動制限、市場介入も頻発 (12/2 読売朝刊 [スキャナー])
<前略>
経済成長の鈍化が続く中国では政府内に「改革を急ぎすぎだ」との慎重論も存在する。易綱副総裁は「改革開放を続けてこそ、人民元の地位が安定する」とする一方、「市場で一定以上の変動が起きれば介入を行う」と述べ、厳重な市場管理を続ける姿勢も示した。
中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など世界経済における存在感を高めようとしてきた。「人民元をドルやユーロと同レベルの通貨に育てようとする」(国際金融筋)狙いもあるようだ。人民元が、名実ともに「主要通貨」となるには、地道に改革を続けることが必要となる。
<前略>
経済成長の鈍化が続く中国では政府内に「改革を急ぎすぎだ」との慎重論も存在する。易綱副総裁は「改革開放を続けてこそ、人民元の地位が安定する」とする一方、「市場で一定以上の変動が起きれば介入を行う」と述べ、厳重な市場管理を続ける姿勢も示した。
中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など世界経済における存在感を高めようとしてきた。「人民元をドルやユーロと同レベルの通貨に育てようとする」(国際金融筋)狙いもあるようだ。人民元が、名実ともに「主要通貨」となるには、地道に改革を続けることが必要となる。
国内経済の行きづまりで、日本と同様に海外市場に活路を求める中国。自国の財政も赤字の中、資金調達の一環でAIIBを設立しましたが、日米の参加がなく、調達コスト高が泣き所となっていますが、人民元のSDR入りで難問が解消されることになります。AIIBに参加した欧州勢も安堵したことでしょう。
為替について、中国の今後の自由化に期待すると欧米各国は述べて、中国に与えたハンディの言い訳をしていますが、既得権として勝ち取った有利な特権を、中国が手放すはずはないことは、諸兄がご承知の通りです。
GDPで世界第二位となり、軍事力でもいまや米国に次ぐ地位を確保する勢いの中国。やがて、米国を凌ぐ勢いとの声が圧倒的です。これに、世界金融でも制覇する門を開けました。しかも、管理可能という特権ハンディ付。更に、出資比率第二位の日本の声は無視。今後どう展開するのか。中国が世界金融を制覇できるのか、したたかな欧米が、為替の自由化に誘導し、中国の日米を合算した値を凌ぐ21兆ドルと言われる中国の現預金を取り込めるのか、注目ですね。
IMF出資比率、中国が3位浮上 日本は2位維持 :日本経済新聞
# 冒頭の画像は、中国人民銀行副総裁易綱副総裁氏
マダケの竹の子
↓よろしかったら、お願いします。