1948年から

文句たらたらどうでも日記

持って生まれる

2021-12-28 21:39:35 | 読書

隅田川を渡る屋形船、向こうは永代橋

以前、新聞に連載された小説
吉田修一『国宝 上下』
宮尾登美子『序の舞』を文庫版で読み直しました。

新聞連載一日分は文庫で約1ページ半です。
毎日とぎれとぎれに読むのと、通して読むのとでは
印象がかなり違ってきます。
新聞で読んだとき、とても印象に残った場面が
そうでもなくて、通り過ぎてしまったり、
あったはずの文章が文庫ではなかったりします。
私の記憶違いもあるし、作者も連載後、見直しをして
かなり書き換える場合もあるようです。

どちらの小説も生まれ持った天分、資質、才能で生涯を貫いた人物の
話です。
『国宝』は歌舞伎役者の話でフィクションですが、
『序の舞』は日本画家の上村松園の伝記小説です。
同じ作者の新聞連載小説『きのね』も十一代目市川團十郎の
伝記小説でした。

こういう本を読むと、人の行く末は生まれ持ったものによる、
と強く思います。
上にあげた人物のように小説になるほどでなくても、
また一流といわれるほどではなくても、
身近にそのような人は存在します。
遺伝的要素もあるかもしれませんが、
芸術、スポーツ、頭脳、容姿、家柄、資産など。
優れたもの、才能をもって生まれ、
しかもそれを伸ばし育てられる環境に生まれた人は
本人の努力はもちろんだけど、普通の人からみれば、
なんともうらやましい。
どうにもならないうらやましさです。

持って生まれる、何もない、もしかしたらあるかもしれない、
あってもそれを育てる環境にない、
そんなこともあるでしょう。
なんにもない自分、若いころ親しい人に言われたことが
いまだに耳から離れません。