自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

モモとサクランボ

2012年06月19日 | 絵と文


行儀よく品よく育てたはずの息子が、小学生になって母親のことをババァと言ったとき、私はハナの30台にもまだなっていなかったのです。
実の年齢よりも少なく見えるらしく、それでいいこと悪いこといろいろあったけど、概して得したつもりでいたときのこと。

鏡の前で見る限り、ちっとも崩れたとは思えない体の線
食べても太らず、反り返っても目は回らず、
ちゃんと出るべきところは出ているし、特にこの胸と両脇の曲線ときたら。

自信は失うまいと、無視してすごしたある日、ひとまわり下の姪っ子Yちゃんが遊びに来ました。
さんざんおしゃべりしてさてお風呂へ入る段になったとき、チラリと見た彼女の裸

輝く白桃と、愛らしいさくらんぼ、を一瞬に見たのです
思わずゴクンと鳴りました。
なんとまぁ!初々しく爽やかなこのふくらみ、これがほんとの若さなんだ!
そして神様が与えた処女のしるしなのだとこの上なく神聖に思えました。

しばらくの間、Yちゃんが尊いものの母体として愛しく誇らしく
あのみずみずしく胸に輝いた果実の形と色が脳裏から離れません。
当然、まだまだいける、ように見えた我が数々の曲線も比べれば歴然、
なので・・・、・・・昔のままと思っていたのはおめでたくも自分だけ、だったのだ・・・

幸いなことにときの力が、自分にもYちゃんにも等しく流れる自然の姿、と半ば厚かましく考えなおさせたようでした。
そして今年も桃とサクランボの季節になりました。



息子はのうのうと言うのです。
「ふ~ん、いくつだろうが関係なく、ボクには全然ババァに見えたんだよね」
わんぱく時代の話に及んでふたり笑い合ってしまったときは、息子はまだ新婚だった頃

「あのときはまだ、あんたのお嫁ちゃんより若かったんだから」  
とは、かなり恨みがましく聞こえたかしら  ( ̄□ ̄;)




会議は踊る

2012年06月12日 | 絵と文

 
幼馴染のさっちゃんから久しぶりの電話です。
懐旧談に花が咲いて、当時唯一の娯楽だった映画に話が及ぶと、一挙に10代の少女の気分にタイムスリップ、
どこまでいっても夢見心地が覚めません。


さびしい田舎の映画館で、乾ききった少女たちの心を砂漠の中のオアシスのごとく潤してくれたもの
映画「会議は踊る」~ といってももう知っている人はいないかも、
無声映画からトーキーになりがけのころ、私の生まれる前に制作されたミュージカル映画で
当時の同盟国だったドイツの作品は敵性文化として排除されなかったのは幸いでした。


まばゆいばかりの舞踏会におとぎの国を駆け抜けるシンデレラ・・・
貧しかった日本の娘たちにとっては、文字通り白昼みたゆめだったのです。
胸底深く残る名画のシーンは数々あるにしても
理屈抜きで、そのときめきに勝るものはないでしょう。


18世紀初め、「会議は踊る、されど進まず」と評されたウィーン会議
華々しさがないだけで何やら現代にも当てはまりそう。
ナポレオンがヘレナ島に幽閉された後、各国の首脳が一堂に会したものの、それぞれの思惑が絡んで会議は一向に進まない
主催者のメッテルニッヒ外相とロシア皇太子の駆け引きと、
そんな背景よりも皇太子と町娘クリステルのひとときの恋物語に、
見るものすべて余韻を胸にかき抱いたまま、声もなく家路についたものでした。

  

街中の人々に祝福されて迎えの馬車で歌うヒロイン
紳士淑女がキラ星のように群れて踊る舞踏会
無人の椅子だけが揺れている大会議場
今、見たらどんな感想が湧くでしょう?
大体は想像もつきますが、あのときめきだけは鮮やかによみがえって、いやでも時の流れを痛感することになりそうです。

二度とない、ただ一度
皇帝の使者が迎えに来たときの喜びと、ナポレオン脱出の報に帰国する皇帝を見送る悲しみに歌う同じ主題歌が、
まるで異なる歌のように聞いた15歳の頃、そして今の私 …うーん象徴的です ( ̄▽ ̄)。o0



電話口で時計の時報が聞こえてきました。

  あ~ぁ、よくおしゃべりしたねぇ
  今度会うまでお達者で・・・
からりと気分転換できたようで、私とさっちゃん、中身はともかく年齢だけはしっかりba~ちゃんでした。( ´△`)アァ- 
 
 
 

ほどほど

2012年06月09日 | ひとりごと

Aさんはパネルの組み立てや痲紙の裏打ち、水貼り、ドーサ引きはもちろん、作品に似合った額縁まで自分で作ってしまう器用な絵描き仲間。ただし他人の依頼は殆ど引き受けない。
絵具代に四苦八苦、少しでも経済的になどとみみっちく考えてお願いしようものなら、画材屋さんと同額の報酬をばっちり要求してくる。

おしゃべり同志B子さんとはいつも滑らかに会話がはずんでいた。
   「何もかも自分で作ったらば、かなりお安く上がるんでしょ。
    うちの主人ときたら家に帰ればでんと鎮座してるだけ、1銭(円じゃない)だって私を助けてくれはしないもの」
散々相手をほめたたえたあとで裕福なのにしまり屋のB子さん、
でんと腰を据えたご主人は資産家で地方の名士だから、亭主自慢の匂いがしないでもない。

   「子供のころは勉強もろくすっぽせず、先生も親の言うこともきかんどうしようもないガキ大将だったけど、
    まぁ世の中へ出たらそれなりに何とかなるもんですちゃ」
昔がき大将、今はプロ並みのキンジを持てる生き方はそれだけで素晴らしいのに、お口の脂がまわり過ぎ
T大出の元級長なんぞは、そっくりかえっているばかりでなーんもできん。奴らときたら…

ほっといたらエスカレートしそうな気配に、A子さんは複雑な笑を浮かべて口を挟む
あのぅ、うちの主人、そのT大出身なんで・・・

ほら、言わんこっちゃない
生まれつきとはいえ口も重ければ腰も重い、でもそれでかなりのトラブルを未然に防たのはいいことだ。




しかし世の中はままならない。
日頃出無精を口実の在宅オタクに、先日連盟の新会長から突然の電話で泰平の夢は破られた。
会合に出席しないのは非常識であると大上段にばっさり
お茶でも飲んで楽しく語り合いましょうよとやんわり、大手搦め手から攻めて来る。
それは価値観の相違、楽しいとは思えない人種もいるから厄介なのよ
確か20年ほど昔、会合でお酌に回ってきたとき、
「あらゆる機会をとらえて自己宣伝をしなければ」と熱っぽく語る野心満々の新人だったのを思い出した。 
息子くらいの若いひと、それなりに苦労しているとおばさん((^┰^))同情はするけれど。


口八丁手八丁のAさんも、陽気なおしゃべりB子さんも今はもういない
残り時間の少なさにやっと気付いて、あたふた身辺整理始めなければと考え始めた矢先
これを機会にすっぱりこの世界とおさらばするのもひとつの選択肢だし。

―― なのに
その迷いは、時間とともに急速に薄れてきている。
自分にとって気にかけるほどの重い問題ではなかったらしい
権威主義に染まったあの方には少々気の毒だけど、そのうち忘れてしまいそうな気がする…



口は災いのもと。(出無精も?)

だけどそれが過ぎるのもまた災いのもと。

どっちだっていいじゃん なるように、なれば? (@^∇゜)/