自然はともだち ひともすき

おもいつくままきのむくままの 絵&文

花残月

2009年04月21日 | 写真と文

 夜半突然吹きだした南風に安眠の夢を破られ、たまらず起きだして家じゅうの戸締りを確かめました。
 これですっかり桜は終わるでしょう。今を盛りのレンギョウ、雪柳、黄と白の山吹など黒いひとむらが身を寄せ合い揺れてざわめくのを見ると、眠れぬ夜の心にひとつ哀愁が湧いてきます。


 陽気に誘われてようやく重い腰があがり、近くの美容院へ足を向ける気になったのは数日前のこと。
 10時過ぎてもどうかすると玄関をロックしたままののんびりパーマ屋さんに、電話で在宅と待ち時間などないのを確かめてから、しばらくぶりで戸外の空気を腹いっぱい吸って、新鮮な気分と気力を貯え出陣しました。
 伸びきった髪をカットし、ロットに巻いて薬をかけて、
 美容院行きは女性にとったら普通楽しいものだと思うのですが、私は苦手で覚悟が決まるまでつい一日延ばしにしてしまうのです。

 さて、どうにか長いコースを終え、洗髪を済ました軽やかな姿が映し出されるはずの鏡面を見て驚きました。
 どう見てもあまりきれいとは言えない銀髪の
 見たこともないヘンな人が。

 最近、手を加えず自然な形に戻そうと、というよりヘアダイの煩わしさから逃れようと、一大決心のつもりで髪の毛は伸びるにまかせてみたのですが、 
 ときどきこれじゃあんまりと、自分の目に映る部分だけ気まぐれに色をつけてみたりで、これがいけない。
 あらゆる成長は止まるどころか逆現象を起こすことになって何年か、もう忘れてしまいました。
 「髪の毛、自然に任せる?
 うーん。もう少し待ちなよ」
 「なんで?」
 「白髪頭じゃ、ババァだか、コドモだか」
 口の悪い息子は一足先にグレイの頭です。

 それならばと、お風呂のとき、手のひらにぐいと絞り出して、髪に塗りたくって、洗い流して、それでだんだん艶を増してゆくという、めんどくさがりには便利なヘアダイ見つけました。
 でもそれがパーマ液で脱色してしまうヘアマニキュアだとは知らなかった…

 銀髪。年に不足はないけれど、夜中起きだして硝子戸に映る姿は、そうね、ちょいと間抜け面の山姥とでもいいましょうか。 
 季節もちょうど花残月。
 たとえるには少し心痛むし、厚かましくもあるけれど。

安泰な午後

2009年04月12日 | 絵と文
 このところ一週間以上も続いているメチャ陽気。 
 誘われて遠く青空の果てまで思いをはせて心躍らせ、近くは我が家の庭へと視線がゆき着いて吐息を漏らす。
 小さなくせに妙に目立つ無数の異物が、見ようとしなくても勝手に視界にとびこんでくる。
 剪定の名残の古枝や裏返ったわくらばやら、年ごとに増えて敷き詰められた青い苔の中から、ツクンと顔を覗かせる名も知らぬ雑草やらがそれだ。
 薄青く色づく新芽や花のつぼみ、空気が柔らかな層を作って、ときにはつがいの小鳥も戯れるせっかくの美的構図も、ここにきて台無しになってしまう。

 
 枯葉の散り敷いた山道でも、サザンカやツバキの花首に埋まった古庭でも、ため息が出るほど郷愁を感じるのに、これはどうだ。
 雑草にも生命があると思えばあまり抜く気はしないのに。
 整然、でなくてランダムというやつが曲者なのかしら?
 気軽に庭へ出てちょっと異物を取り除けば済むものを、なんでうつうつ思い悩むのかナンセンス。分かっているけど気軽に実行できないのが私の業。

 早朝起きだすには少し早く、布団にくるまりながらふっと思い立った。
 今だ!あれほど日々心惑わせている庭の清掃、まだスイッチが入らないこんなときにこそ。
 朝飯前にひと仕事済ませたら、今日の予定に障りはないし。
 気が変わらないうちにと慌ただしく準備して外へ出る。そこまでは神様も温容でいらしたと有難かったのに、ちょいと、なんて片づくものではない。
 草むしりのときは、土中の小動物に遭遇するショックをやわらげるためメガネをはずすのだが、目の届く限りこんなに?と驚くほどの異物が際限なく続いているかのようだった。
 それはそうでしょう、ひと冬越して草木も伸びる春たけなわ、初めて立ち向かったお掃除なんだから。
 そして、案の定。
 あーあ夢中になってしまう性格が腹立たしい。
 
 何とか折り合いをつけて作業を終えたときは3時間あまりはたっていた。
 朝飯前に軽く、のつもりが午前の予定に食い込んで、おあとも体のあちこちに詰め込まれた鉛はあまりに重く、今日一日、で足りるかどうかの臨時休みと相成ってしまった。
 ちょっとやせ我慢していえば、日程は狂ったが、多少の満足感がないでもない。
 中身は4割の美的満足感と6割の対外安ど感。ともに10割に満たないのは、残念ながら時間の経過とともにすぐ旧態に戻ってしまうから。


 諦めて普段目を通さないところまでゆっくりと新聞を読みふけることに決めた。すると片隅にこんな記事がのっていた。

 「安」という漢字を解体すれば。
 「ウかんむり」は建物の屋根のこと。その下に「女」が座っている姿。
 つまり女性は家の中にいて安泰である、を表し、そこから「安らか」の意味が生まれたとか。

 ふーん。