ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

初恋の予感に満ちたジュブナイル!

2007-01-27 | 映画
HINOKIO(ヒノキオ)

突然の事故で、母サユリ(原田美枝子)を亡くした少年・岩本サトル(本多奏多)は、ショックからリハビリを拒否し、車椅子で部屋に引きこもる生活をしていた。サトルの父で技術者の薫(中村雅俊)は、そんな息子を心配し、自ら開発したロボット<H-603>を与える。遠隔操作で自由自在に動くロボットを操作し、サトルは1年ぶりに学校に通い始める。

……ここまでは、そのまま、あらすじを引用した。設定は、まったくそのとおりだ。しかし、この作品の肝はこの枠には納まらぬ。

最もわかりやすく、かつ大切なキイとなるのは作品内のコンピュータゲーム「パーガトリー」。高層ビルから落ちても路面がヒトガタに陥没するだけのアニメ・キャラクター。しかし、彼はあっさり死んで、「煉獄」に至る。(そう、ダンテの「神曲」でも知られる幽明の端境にある世界である。そこで、死んだ者の魂は「天国」か「地獄」のいずれかに行くまでを過ごすのだ)。

小学生であるサトルは母の魂の在り処と、その現在が安息であるかにこだわっているのだ。母が事故にあった朝、仕事ばかりで家庭を顧みない父が、母と喧嘩して怒らせていた事実に、サトルはこだわり、そこから抜け出せないでいたのである。

「パーガトリー」において「煉獄の塔」に至ったプレイヤーは、その願いをかなえられるという。そう、「パーガトリー」は現実に影響するゲームだと噂されているのだ。

ガキ大将(ボーイッシュな、実は女の子)のジュン(多部未華子)に惹かれるサトル。しかし、実際のところ男の子のように気風のいいジュンに従っているように見え、子分の丈一(村上雄太)、健太(加藤諒)は存外ジュンの娘らしい部分を見抜いて惹かれていたのじゃないだろうか。ジュンだけがそれに気付いていないで。まあ、サトルは、間違いなくそうだろう、ジュンの娘らしさに惹かれたのに違いない。ジュンは、父の死によって、やはり死とは何かという思いを抱えていた。その触れ合いに慰謝を望んだサトルはHINOKIOに感覚フィードバックプログラムをインストールする。

ジュンへのあらぬ思慕から、嫉妬を抱いた級友のスミレにより、<H-603>が戦闘兵器(死をもたらすもの)である可能性を指摘されたサトルは、HINOKIOの<自殺>を選ぶ。

感覚の強烈な逆流(バックファイア)に見舞われたサトルの魂は、その体を離れ、煉獄に向かう。

サトルの危急を知ったジュンは、現実の「お化け煙突」、「パーガトリー」の「煉獄の塔」へと昇る。ジュンの魂を現界に呼び戻そうと……。

まあ、あらすじ再録でもあるのだが、わたしの観点からのフィルタもかかっている。

本当に魅力的なジュブナイルだ。


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