映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

世界史を見直す出発点「蒼き狼」(1)

2010-12-26 15:06:37 | 舞台は中央アジア・インド

モンゴル建国800年記念作品「蒼き狼」

 

「蒼き狼」はもともとは昭和30年代に井上靖氏が書き、当時大ベストセラーになった小説。それを森村誠一氏が「地果て海尽きるまで小説チンギス汗」としてリメイクしたものを映画化。

 チンギス汗については、1992年にモンゴルが作った「チンギス・ハーン」という映画もあるが、チンギス汗を悩み多き人間として描こうという気持ちが強すぎて娯楽性に欠けていた。その点今回のものは、その悩みを超えて強くあろうとする汗を強調する。全体に現地ロケシーンを前面に出し、さすがに雄大。もう少しシナリオを丁寧に書いてリアリティを増して欲しかった。

 

1、 この映画を見てつくづく思うのは、遊牧騎馬民族の特性ということ。

彼らは農耕民族と違って「定住」ということを考えない。むしろ定住しての農耕は、青い土地(草原)を黄色(農地)に変え、馬を始めとする動物の飼育には良くない。そういう所では「領土」意識が希薄で西洋史が教える国家の観念など育たない(この辺は司馬遼太郎氏が「ロシアについて」で再三述べるところ)。

歴史学者がモンゴル諸国の領土、領域を呼ぶのに「ウルス」というモンゴル語をそのまま使う(例えばチンギス汗の長男ジュチが支配したところを「ジュチウルス」という)理由が分かる気がする。

 

2、 ところで、ソ連崩壊から18年、中国の台頭も著しい。

となって日本政府もようやく中央アジア(外交)の重要性に気がついて・・・小泉首相のカザフスタン訪問が実現したが、団塊の世代を始めとする古い歴史学習者も、西洋中心のものの見方を脱却し、視点を変えて北東アジアから中央アジアにいたる諸国の勉強をする必要がある。

 しかしそれは分かっても学生時代やってないから馴染めない。この苦手意識を克服し、興味を持つためにどうするか。一つの方法として、アジア史に起きるいろんな事象を、西洋史で知っていることと比較してみるとどうだろう。比較に拘り比定するのは良くないが、楽しむための便法として許されるのではなかろうか。

能書きはいいとして、

① 中国北方の「五胡」やウイグルなどのトルコ系民族の動きを「ゲルマン侵入」  と考えるとどうだろう

② またモンゴル民族の動きは「ノルマン人の侵入」と仮置きするとどうだろう

 

そこで「侵入」と捉えるのは、あくまで現在の大国、メジャーサイドからの捉え方で、侵入した方の立場に立てばどういうことになるのか。

 

 と考えてみると、世界史的にはチンギス汗一代のことは「蒼き狼」の内容でいいとしてその前後がどういうことなのか、チンギス汗は確かにモンゴルを統一したが、彼の後半生、「」や「ホラズム」へ攻め入っていった真の動機は何なのか知りたくなってくる。

 

 そして、匈奴鮮卑柔然突厥ウイグルキルギス遼(契丹)⇒モンゴルや金・・・と続く中東北部アジアの興亡が興味の的になってくる。

 

 


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