映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

さすがアカデミー作品賞「アルゴ」

2013-03-16 23:11:56 | 舞台は中央アジア・インド
本年度第85回のアカデミー賞「作品賞」受賞作品だけあって文句なく素晴らしい。

何故だろう・・・アカデミー賞の中でも最も権威ある作品賞、いろんな観点から
「素晴らしい」とされたのは当然なのだが、最大の理由は作品を貫くテンポ感ではないだろうか。

基本的には歴史的事実に基くシナリオで、それも相当「重い」、現在も影を引きずる、
1979年の「イランのアメリカ大使館人質事件」を描くのだから、ついいろいろ事件の背景や特殊性を強調し、
国際政治の複雑さを考えさせる映画ではなかろうかと思って臨んだのだが・・・予想に反した。


冒頭の背景説明からしてとても簡潔で、人質救出作戦の立案、採りあげ、決行、躊躇、最終実行
・・・その間の切迫感、危機の盛上げなどテンポが素晴らしく、
そのことによってエンターテイン性を確保し、後味もすっきりした素晴らしい映画に出来上がった。

(但し、少し真面目ぶって言うと・・・この事件は現代国際政治上、とてつもなく重要で
・・・アメリカの資源戦略、イラン革命、対イスラム政策などを記述するに欠かすことのできない事件で
長く歴史教科書に残るものだと思う。この映画によって、そこが軽く考えられるなどということなしにしたいと思う)


内容に関して一言・・・この事件におけるカナダ政府、カナダ人の果たした役割をもう少し丁寧に描いて欲しかった。

例えば、イランのカナダ大使夫妻が、アメリカ大使館を出てしまって
行き場のなくなったアメリカ人達6人を収容し「客人」として扱った行為、

彼らを救出するために彼らをカナダ人として偽パスポートを発行することに協力した行為など、

カナダ人も相当のリスクを背負ってアメリカに協力した。

そしてこの事件は国際社会に「アメリカ・カナダ」の結びつきの強さをPRすることに貢献した
・・・映画の時間をもう5-10分延長してでも、その辺のところを描いて欲しかった。

ともあれ、近年にない秀作であること間違いなし。


コメントを投稿