室生犀星文学碑
「抒情小曲集」より
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あんずよ
花着け
地ぞ早やに輝やけ
あんずよ花着け
あんずよ燃えよ
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出版された「抒情小曲集」には、この後に「ああ あんずよ花着け」の1行が続くのですが
犀星が亡くなる直前に「室生犀星全詩集」を出版するにあたり
犀星自身がこの最後の1行を削除しています。
この文学碑は「全詩集」に依っているわけです。
気取りのない純朴な字ですね。
自筆の手紙などを見ると、とても小さい字を書いたのだということが
よく分かります。
この字は、毛筆ではなく、万年筆で書かれた犀星の自筆原稿を彫ったものです。
自筆原稿は、これです。(もちろん複製ですが)
13歳で小学校を退学し、以後いっさい学歴のない犀星の生涯は
逆境に負けない強さと、努力の力を感じさせてくれます。
ぼくの大学卒業論文は「室生犀星の世界」という題でした。
お前みたいなボンボンが犀星の研究なんて合わない気がすると
大学の友人が言っていました。
ぼくは全然「ボンボン」なんかではなかったのですが
地方から出てきた友人には、
「都会育ちのボンボン」に見えたのでしょう。
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文学碑の全体はこういう感じで、犀星の愛した犀川のほとりに立っています。
この碑は、昭和39年にたてられました。
昭和43年の春、大学に合格してほっとした春休みに、ぼくはこの碑を訪れています。
今回は、それから45年後の「再訪」でした。
文学碑の脇には犀川が流れ、土手には桜が咲き誇っていました。
遠くには、犀星の愛した医王山(左側のほうに隠れています)などの山並みが
美しく見えています。