キキ便り

アメリカ便り、教員・研究者生活、シンプルライフ、自閉症児子育てなど

フェローシップ

2006-10-06 04:56:20 | 博士課程で学んで
アメリカの大学のリサーチユニバーシティで教職を志望する場合は、研究能力と同様、どれだけ研究助成金を獲得する能力があるかという点が評価の対象となる。そういうこともあって、去年の夏より民間の研究助成金フェローシップに幾つか応募してきた。私の場合、日本の研究助成金を獲得するのは非常に難しい。まず私のような院生を対象としたものは、若手研究者を対象とした研究公募ということで、年齢で対象外にされてしまう。これは、日本の就職の募集要項を見てもわかることで、2分の3くらいは対象年齢が記述されている。アメリカで、これをやったら、差別だと確実に訴えられてしまう。
 自分の実力の足りなさが一番の原因だと思うが、こういうことでいまだかつて自分の力で研究資金をもらったことはなかったが、今回初めて、吉報が入った。大学内部のフェローシップであるが、大学全体で1人又は2人に限定して与えられる博士論文のための国外調査研究のフェローシップがもらえることになった。日本円に換算すると15万円あまりで、日本に渡っていろいろ調査する旅費を全てカバーしてもらえることになった。簡単な研究目的をまとめたアブストラクト、履歴書、訪問先からの研究受け入れ許可を証明する手紙、などが審査の書類であった。絶対もらえないと諦めていただけに、こういう風に展開してすごく嬉しかった。何よりも、審査をしてくれたgraduate schoolの委員会から、今取り掛かり始めたばかりの博士論文に期待を掛けてもらったようで、自信につながったような気がする。すぐ自信をなくしてしまう日本人的?な私は、このことをきっかけに前向きに自分の将来を考えていこう、と今考えている。
 
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博士課程で学んで

2006-08-23 04:55:33 | 博士課程で学んで
 アメリカの大学は、研究重視のユニバーシティと教育重視のユニバーシティとに大きく分かれている。現在私が所属するのは、前者のリサーチユニバーシティ。ということで、個人への評価も、論文の数や質によって大きく左右されてくる。

 博士課程の学生への研究手ほどきのためにResearch Practicumというコースが設けられている。2コース必修で、教授のもとでその研究に加担しながら、パブリケーションを増やそうというのが最終目的であるが、それに至らないことも多い。私の最初のResearch Practicumは、新米の教員の指導の下で行ったこともあり、莫大な時間をかけた割には、その苦労が実らなかった。主な作業は、親子のパズル問題解決場面を録画したビデオをもとに、育児態度を評価するものであったが、4人の評定者の得点が度重なる訓練を通してもなかなか一致せず、断念せざるを得なかった。

 次のResearch Practicumは、全米規模で行われたEarly Head Start Programの縦断研究データーを使わせてもらったこともあって、当初から研究のスケールと枠組みがしっかりしていたことが幸いしたらしい。私の所属する学部の分野ではトップジャーナルに投稿し、数回校正を重ねた上,昨日採択されたというメールをもらった。文献研究を始めてから、採択されるまで2年間であった。当初の予定と違って、私は第三著者になってしまったが 、考えてみれば同じ研究チームの教授たちの研究経験や文章能力がなければ不可能な出来事だっただろうし、この一連の研究の一部を担わせてもらったことは、感謝すべきことだと考えている。
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息子と私の試験

2006-06-03 23:17:47 | 博士課程で学んで
 不思議なことに私の人生のおそらく最後となる試験と、息子の人生の最初の試験が同じ週に始まった。息子の試験は州ごとに行われる標準試験で小学校3年生から1年に1回の割合で行われる。読み書きを中心としたコミュニケーションと算数の分野から出題され、7日間に渡って行われるものである。試験のスコアはいかにそれぞれの学校が教育責任を果たし、教育成果を上げているかを証明する手段として用いられている。スコアの高い学校には、教育熱心な親たちが集まり(必然的に教育経済レベルの高い親になってしまう場合が多い)、それが地価を上げたり優秀な先生が集まったりと教育の不均等の悪循環を生み出していることも指摘されている標準試験である。以前住んでいた米国南部の州では、こういった標準試験が行われる度に、子どもたちがプレッシャーで保健室に走ったりとか、嘔吐したりなどいう話も聞いていた。先生も校長先生も自分の実力が評価されるということで、試験のための練習にかなりの時間を割いていることも知られた話である。
 息子は自閉症と診断されていることから、IEP(個別指導計画)の中でも「別室で試験を受けることができる」「試験時間の制限がない」「書いた字の読みにくいところは、先生があとから上書きして補助する」などいろいろと考慮してもらった。しかし、それでもかなりのプレッシャーになったらしく、食欲ががたんと落ちてしまった。特に試験2日目の朝は、早起きしすぎたのがショックだったらしい。私が何を言っても、「もうだめ」と涙目の息子の姿を見て、早速担任の先生にEメールで事情を話した。このような大変な思いをした試験であったが、あっけなく終わってしまい、夏には結果が家庭に郵送される予定である。
 同じ週に私が受けた試験はComprehensive Examの第2段階の筆記試験。博士論文を書く前に博士候補生として課せられる試験で、大学学部によって差はあるが1年かかることも珍しくない。去年の9月にまず第1段階であるIntegrated Literature Reviewに取りかかった。通常の文献研究よりもさらに自分の専門分野についての知識の豊かさを表明することを意図したもので、まずアウトラインを論文審査委員会で討議し、承諾を得てから書き始めることになっている。与えられる期限は3ヶ月。それを書き終えパスしたのが今年の2月。その後、8時間の資料持ち込みなしの筆記試験、口頭試験と続く。
 かなり順調に進んだと思っていた自分の考えが甘かったのが、口頭試験。うちの学部の場合は、筆記試験でミスったところを口頭試験で補うように取りはからってもらえるらしいと聞いていたが、まずそもそも私の筆記試験の解答がかなり不十分だったらしい。5人の教授からの6つの分野からの出題内容に私はかなり時間をかけて、授業で使ったノートやテキストを使って勉強したがそれだけでは足りなかったらしい。「深さ」がなかったのである。また研究者の名前をしっかり使って答えなければならなかったらしい。「ある研究者によると、、、」ではだめだったようである。さらには、テキストにいくら書いてある答えであっても、論文審査委員の意見や主張と食い違っていれば、理路整然と述べない限り、間違いにされていることにも後から気付く。
 こういった事情で、3週間の猶予が与えられて答え(responses)を書き直す。ペーパーで言えば80ページ程にもなり、気がおかしくなりそうで、プレッシャーで夜も眠れず、家業も子育ても無視して過ごしたクレージーな時間であった。でもそういう中で、院生の友達がアドバイスをしてくれたり、ペーパーを添削してくれたり、チャーチの友達が夕ご飯を作って順番に持ってきてくれたりと、サポートのありがたさを実感したひとときだった。
 スクールバスから帰ってくる息子と娘が、「合格したの?」と聞いてくる毎日であったが、ようやくアドバイザーより合格のEメールをもらいほっとする。誰よりも肩の荷を下ろしたのは、自分の時間を犠牲にして、助けてくれた夫に違いない。
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