『今日の出来心』

シンガーソングライター&作詞家“久保田洋司”の365日書き下ろし公開日記です
since 2000.3.7

うつせみの常の言葉と思へども~。今日の出来心2014年9月12日(金)

2014年09月12日 08時31分26秒 | Weblog

楽しみにかよっている万葉集の講座、

昨日は巻十二、2957~2972まで、

一首一首丁寧な解説と、それらに関する資料として、

ほかの巻の良い歌をいくつも教わったり、

あるいは、「大君の塩」と言えば、何のことなのか、

「武烈紀 即位前紀」の文からの説明があったり、

ただ歌を読むだけじゃなくて、

その背景も、知ることができるという、本当に素晴らしい先生のお話。

そのお話を聞いて帰って、資料に走り書きしたものを見ながら、

ここに、なにか書こうとしても、なかなかまとまりません。

聞きかじりの言葉をうっかり使って思わぬ恥をかく、

というようなことになりかねない歌も、昨日、習ったばかり。

先生も時々、おっしゃるんですが、

大学で教える学生さんたちの中には、

先生から教わった、として、

教えたこととまったく違う、間違ったことを、堂々と発表したりする人もいるそうで、

困る、と。

これは、本当に、気をつけなくては、と思うところです。

僕なども、よく、人の話とか、本の内容とか、映画のストーリーなど、勝手に解釈して、

一般的な理解とは、まったく逆に受け取っていることが、あるようなんです。

これから書くことも、間違った思い込みもあるかもしれません。 

巻十二、思ったことをストレートに歌う歌、正述心緒から、

物に寄せて思いを陳べる歌、寄物陳思へ。

ストレートなものより、物に例えて歌う歌の方が、広がりがあって面白いんですが、

ここでは、ストレートなのを。

うつせみの 常の言葉と 思へども 継ぎてし聞けば 心迷(まど)ひぬ 【巻十二 2961】

訳)世間並みの 普通の言葉と 思っても 続けて聞けば つい心が揺らいでしまいます

通り一遍の、ありふれた言葉でも、いつもいつも、言われてたら、心が動く、という、

恋する女性の心理を素直に歌った歌、ということになっています。

僕が昔、KinKi Kidsに書いた「to Heart」の詞に、

ありふれた言葉でいい、君の声をもう少し聞いていたい、というようなフレーズがありました。

はやり、みたいなのもあると思うんですが、

難しい言い回しとか、誰も使わないような聞いたことのないような言葉とか、

飾りたてた言葉とか、そういうのが奇をてらった、嘘っぽい言葉に感じることがあって、

そうではなく、素直な、ストレートな言葉が、いいと感じる瞬間。

だからといって、いつも、ストレートすぎても、だんだん、もう少し考えよう、と思ったりもするんですけど。

本当に、瞬間、のようなものなんです。

で、ここに出てくる「心迷ひぬ」について、湯原王の歌の紹介がありました。

ただ一夜 隔てしからに あらたまの月か経ぬると 心まとひぬ 【巻四 638】

訳)たった一晩 離れただけで 一月もたってしまったのかと 心が乱れてしまいました

湯原王は、あの志貴皇子の子、歌が上手いことで有名。

2961だけで見るのと、638とあわせて見るのでは、「心迷ひぬ」の、感じ方も違いますね。

巻一では、歴史的やら、政治的やら、背景が大きく、また、研究も深く、

果てしないものに触れてるような気持ちになりますが、

巻十二になると、ふっと今思ったことが、言葉足らずに詠まれる、

そこに、当時の暮らしが少し見えたり、

その身近で、不完全なところに、思わず、愛着を感じたりもします。

そして、巻四の湯原王と比べると、うわ、上手いとは、こういうことか、とあらためて恐れ入ったり、

面白いこといっぱいです。←これでまとめるのか。

長くなりました。

今日も素敵な一日になりますように。

美しい明日へ心をこめて歌っています。

洋司