『今日の出来心』

シンガーソングライター&作詞家“久保田洋司”の365日書き下ろし公開日記です
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2010年3月9日(火)

2010年03月09日 00時00分01秒 | Weblog
先の尾道で、伯母からもらった本、
「孔子」井上靖著を読んでいるのである。

孔子の弟子みたいな感じの人が、
若い時に接した孔子のことを、
だいぶ年取ってから、
こちらに話して聞かせてくれてる感じの小説である。

孔子が、弟子らに、時々、いいことを言うのである。

仁という字は、人が二人いれば、そこには、
思いやりが必要ということだ、みたいな。

弟子らは、皆、そういう言葉を聞くと、
感動して、少々、お腹が減ってても、元気になるのであった。

で、たまに、ここで、なにか一言ほしい、という場面で、
孔子は、何も言わないことがあるのである。

すると、弟子らは、集まって、
先生は、何もおっしゃらないが、それは、
自分らで考えよ、ということなのであろう、と、
あれこれ、先生が、今、何を伝えようとしているのかを、
一人ずつ、言うのである。

先生は、こういうことをおっしゃりたいに違いない、
と、誰かが言えば、
おぉ、そうだ、そうに違いない、素晴しい、となり、
また、別の意見がでれば、
おぉ、そうとも言える、さすが先生、となり、
実際、先生は、何も言っていないのに、
やっぱり先生は立派だ、ということになるのである。

面白い。

ただ、孔子がこう言った、みたいな読み物を読んでも、
僕など、通り過ぎてしまうものであるが、
こうして、小説になっていると、
どういう場面で、その言葉が言われ、
どういう効果があったのかが、よくわかり、
生きた言葉として、こちらに入ってくる。

やさしくやわらかい言葉遣いで語りかけてくれるので、
僕などにも、読みやすくて、
楽しんでいるのであった。